20代の娘は、しばしば親の金を利用して出かけようとする。
「ねえ、お母さん。映画を見に行かない? エルヴィスってヤツ、面白いみたいだよ」
「エルヴィス? ああ、プレスリーの。別にいいけど」
「エルヴィスのこと知ってるの? どんな人?」
「どんなって……」
そこで口ごもった。はて、私はプレスリーの何を知っているのだろう。せいぜい、顔と曲ぐらいではないのか。聞かれたところで何も説明できないと気づいた。
「もちろんチケット代は出してくれるんでしょ。土曜の11:20からでいいかな」
「いいよ」
「じゃあ予約しとくね。d払いでよろしく」
映画を見るのは久しぶりだ。007のノー・タイム・トゥ・ダイ以来かもしれない。
私は音楽に疎い。ピアノは好きだけれども、クラシックだと眠くなるし、大きな音の出る曲は苦手だ。でも、フレディ・マーキュリーの「ボヘミアン・ラプソディー」は大丈夫だった。「エルヴィス」もきっとイケるだろう。
「ごめーん、チケットの日にちを1日間違えちゃった! もう一回買わないと」
「へ? キャンセルとかできないの?」
「できるわけないじゃん。じゃ、悪いけど、またd払いでよろしくね」
「……」
かくして、やたらと高い料金を払う破目になった。これは楽しまないと!
昭和15年前後に生まれた私の両親は、エルヴィスよりちょっと年下だったので、世代だったのだろう。彼の歌に夢中だったらしい。母は料理をしながら「好きにならずにいられない」をハミングしていたし、父もレコードを持っていた。
父はさらに、吉幾三のこんなレコードまで買ってきて、上機嫌で笑っていたっけ。
「絶対プレスリーだってよ、あっはっは」
まあ、これはたしかに面白かったけど。
さて、肝心の映画の方だが、ちゃんと「プレスリーってどんな人?」の説明ができる仕組みになっていた。「世界史上最も売れたソロアーティストの第1位」であり、「白人のカントリー音楽と、黒人のリズム・アンド・ブルースのスタイルを融合させた人」なのだそうだ。
そりゃ、偉大だわ。
映画になるだけのことはあると感心し、晩年の不健康な生活がなければ、もっと活躍されたのではと残念に思った。娘も満足したようだ。
「歌は全部聴いたことなかったけど、いい映画だったね」
ノリノリの曲もいいけれど、私が一番好きなのは「ラブ・ミー・テンダー」。
結局、静かな曲に惹かれるのであった。
↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
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「エルヴィス? ああ、プレスリーの。別にいいけど」
「エルヴィスのこと知ってるの? どんな人?」
「どんなって……」
そこで口ごもった。はて、私はプレスリーの何を知っているのだろう。せいぜい、顔と曲ぐらいではないのか。聞かれたところで何も説明できないと気づいた。
「もちろんチケット代は出してくれるんでしょ。土曜の11:20からでいいかな」
「いいよ」
「じゃあ予約しとくね。d払いでよろしく」
映画を見るのは久しぶりだ。007のノー・タイム・トゥ・ダイ以来かもしれない。
私は音楽に疎い。ピアノは好きだけれども、クラシックだと眠くなるし、大きな音の出る曲は苦手だ。でも、フレディ・マーキュリーの「ボヘミアン・ラプソディー」は大丈夫だった。「エルヴィス」もきっとイケるだろう。
「ごめーん、チケットの日にちを1日間違えちゃった! もう一回買わないと」
「へ? キャンセルとかできないの?」
「できるわけないじゃん。じゃ、悪いけど、またd払いでよろしくね」
「……」
かくして、やたらと高い料金を払う破目になった。これは楽しまないと!
昭和15年前後に生まれた私の両親は、エルヴィスよりちょっと年下だったので、世代だったのだろう。彼の歌に夢中だったらしい。母は料理をしながら「好きにならずにいられない」をハミングしていたし、父もレコードを持っていた。
父はさらに、吉幾三のこんなレコードまで買ってきて、上機嫌で笑っていたっけ。
「絶対プレスリーだってよ、あっはっは」
まあ、これはたしかに面白かったけど。
さて、肝心の映画の方だが、ちゃんと「プレスリーってどんな人?」の説明ができる仕組みになっていた。「世界史上最も売れたソロアーティストの第1位」であり、「白人のカントリー音楽と、黒人のリズム・アンド・ブルースのスタイルを融合させた人」なのだそうだ。
そりゃ、偉大だわ。
映画になるだけのことはあると感心し、晩年の不健康な生活がなければ、もっと活躍されたのではと残念に思った。娘も満足したようだ。
「歌は全部聴いたことなかったけど、いい映画だったね」
ノリノリの曲もいいけれど、私が一番好きなのは「ラブ・ミー・テンダー」。
結局、静かな曲に惹かれるのであった。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
曲を聴けばプレスリーだったのねって思い出す程度です。
映画好きでほぼ毎回パンフまで買う知人が、
60歳になるのを心待ちにしていて、納得。
娘ちゃん、ちゃっかりうっかりで、
お高い鑑賞料になりましたね。
でも懐かしの名曲にひたれて、よかった。
先日自身のブログでも書きましたが、ロックンロールの誕生は彼を無くしてあり得ませんでした。そして、黒人音楽を無くして彼の音楽性の確率もあり得ませんでした
彼を破滅(短い人生)に追い込んだのは、パーカー大佐でもいわゆるトリマキ連中のメンフィスマフィアでもありません。そしてドラッグでもなく、かの有名なバナナサンドの食べ過ぎだけでもありません
プリシラとの別離、これに尽きます。歌う歌も変われば歌い方も変わり、別れて以降の歌を聴いていると胸が張り裂けそうになります
私がこの映画を観た時は上映終了後に聞えてくる話から判断すると、多くの観客は「50年代のエルヴィス」、「映画の中のエルヴィス」、「太ったエルヴィス〉しかしらない方がほとんどでしたね
これもプレスリーだったのか、という曲が多かったです。
世代じゃないから正確にはわからないですよね。
アメリカが銃社会でなければ、薬に手を出さずにすんだかも……。
日にちを間違えて予約するなんて、うっかりミスもいいところですよ。
慎重さが足りないのと、思い込みが激しいのとで、無駄な出費につながりました。
ううう。
エルヴィスのノリノリ曲はどれもタイトルがわかりません。
邦題に惑わされてはいかんのです。
純さんは音楽がすごく好きというイメージではないです。
私もですが。
世代じゃないと、王道を行く人のよさはわからないのではと思いました。
吉幾三でいいや、なんてね(笑)
なるほど、妻を失ったことが致命傷でしたか。
スクリーンでの2人もお似合いでした。
心の支えがなくなると、生きる張りが感じられませんからね。
実は、映画のあとは「どのシーンにしぼって書こうかしら」と悩みました。
まとまらなかったので、吉幾三でお茶を濁す展開にしちゃいました。
ZUYAさんはどんな感想になるのか楽しみです。
マイケル・ジャクソンも我がままの最たるシンガーでした。
処方しない医者を代えて、その薬で死んだと噂されています。
訴えられたマイケルに雇われた医者はどうなっだしょう(・・?
売れない吉幾三が「俺はぜったいプレスリー」と、歌いたい気持ちも分かります♪ いまや、せったい演歌歌手。
コメントありがとうございます。
人気稼業に就くと、心のバランスを保つことが難しくなるみたいですね。
もし、エルヴィスやマイケルが一般人であれば、無難な人生を送ったような気がします。
太く短い生でも、彼らの本望だったのでは……。
吉幾三もメジャーになりましたね。
当時の姿からは、想像できませんでした。