「お母さん、今日の夕飯はミキが作るから教えてね」
高1の娘が家庭科で、昼食か夕食を作り、感想を書いて提出という宿題を出されたらしい。普段は、娘に家事を手伝わせることがない。何しろ手際が悪いものだからイライライして、自分でやったほうが早いと思ってしまうのだ。前から「これではいけない」と感じていたし、ちょうどいい機会だと思った。
「じゃあ、ミキにもできそうなメニューを考えてみよう」
「よろしく」
冷蔵庫をのぞくと、使いかけのカボチャがある。それから、パンが食べたくなってきた。
よし、今夜は蒸し鮭とエノキの炒め物、カボチャのポタージュ、茹でたオクラで決まりだ!
夕方、娘と台所に立ち、夕食の準備に取りかかる。
「じゃあ、最初にオクラを茹でよう」
「お湯を沸かせばいいの?」
「沸くまでの時間に、オクラを洗ってザルに入れるんだよ」
「ふーん。エノキや玉ねぎも切っておくといいんだね」
「そうそう」
娘は、包丁を材料に押しつけて切るので、かなりモタモタしている。手元に引くように動かせば、スムーズに切れると教えてやった。材料を押さえる左手もぎこちなく、下手すれば、小学生のほうが上手いかもしれないレベルだ。
「はあはあ、やっと切れた」
「お湯が沸いたよ」
「じゃあ、オクラを」
どうも、熱湯めがけて一気にぶち込みそうな勢いなので、1つずつ静かに入れるように指示を出す。
「なんだ、鍋の上でザルを逆さまにすればいいのかと思った」
……やはり。
勢いよく入れたら、熱湯がはねて火傷する可能性があることに気づかぬようだ。料理のテクニックは、高校生とは思えぬ未熟さである。
「ミキは無神経すぎ。もっと丁寧にやらなきゃダメでしょ」
「あのさ、お母さんはすぐ文句言うけど、知らないんだからしょうがないじゃん。だから、やる気なくなるんだよ!」
ちょっと厳しいことを口にすれば、即座に反撃してくる。この辺りは年相応の、高校生らしい反応だ。
「次は、鍋にスープと玉ねぎ、カボチャを入れて、ポタージュを作ろう」
「ポタージュに、玉ねぎが入っているなんて知らなかった」
「軟らかくなる間に、オーロラソースを作ってね」
「へいへい」
ポタージュができたら、鮭を蒸し器に入れ、火が通るまでにエノキを炒める。
時間を間違えなければ、作る人を選ばない、失敗なしのレシピである。
「できた!!」
湯気を立てて蒸し上がった鮭に、オーロラソースをかけて食卓に運ぶ。

「美味しい!」
自分で作った料理は、格別の味がするようだ。「ポタージュに胡椒を入れすぎた」などと反省しながら、一つひとつの味を吟味していた。ぜひ、今後も続けていきたいものである。
食後、レポート用紙を持った娘が尋ねてきた。
「献立名は何て書けばいい?」
「『蒸し鮭のオーロラソースがけ』かなぁ」
「えー、不味そうじゃん。『アトランティックサーモン ボイル仕立て~オーロラソースとともに~』っていうのはどう?」
「…………」
今度は私がダメ出しをくらった。
しかし、それを言うならボイルではなく、スチームかと……。
「あとは、『エノキダケのソテー ソイソース風味』とか」
「…………」
これまた、高校生離れしたネーミングである。もちろん、レストランメニューのコピーなのだが、「普通の家庭料理にこの名前ですか?」というギャップが面白い。きっと、家庭科の先生もビックリするに違いない。
次回は、「知床鶏のグリエ 2色のパプリカ添え 粒マスタードをのせて」に決めた!

↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
高1の娘が家庭科で、昼食か夕食を作り、感想を書いて提出という宿題を出されたらしい。普段は、娘に家事を手伝わせることがない。何しろ手際が悪いものだからイライライして、自分でやったほうが早いと思ってしまうのだ。前から「これではいけない」と感じていたし、ちょうどいい機会だと思った。
「じゃあ、ミキにもできそうなメニューを考えてみよう」
「よろしく」
冷蔵庫をのぞくと、使いかけのカボチャがある。それから、パンが食べたくなってきた。
よし、今夜は蒸し鮭とエノキの炒め物、カボチャのポタージュ、茹でたオクラで決まりだ!
夕方、娘と台所に立ち、夕食の準備に取りかかる。
「じゃあ、最初にオクラを茹でよう」
「お湯を沸かせばいいの?」
「沸くまでの時間に、オクラを洗ってザルに入れるんだよ」
「ふーん。エノキや玉ねぎも切っておくといいんだね」
「そうそう」
娘は、包丁を材料に押しつけて切るので、かなりモタモタしている。手元に引くように動かせば、スムーズに切れると教えてやった。材料を押さえる左手もぎこちなく、下手すれば、小学生のほうが上手いかもしれないレベルだ。
「はあはあ、やっと切れた」
「お湯が沸いたよ」
「じゃあ、オクラを」
どうも、熱湯めがけて一気にぶち込みそうな勢いなので、1つずつ静かに入れるように指示を出す。
「なんだ、鍋の上でザルを逆さまにすればいいのかと思った」
……やはり。
勢いよく入れたら、熱湯がはねて火傷する可能性があることに気づかぬようだ。料理のテクニックは、高校生とは思えぬ未熟さである。
「ミキは無神経すぎ。もっと丁寧にやらなきゃダメでしょ」
「あのさ、お母さんはすぐ文句言うけど、知らないんだからしょうがないじゃん。だから、やる気なくなるんだよ!」
ちょっと厳しいことを口にすれば、即座に反撃してくる。この辺りは年相応の、高校生らしい反応だ。
「次は、鍋にスープと玉ねぎ、カボチャを入れて、ポタージュを作ろう」
「ポタージュに、玉ねぎが入っているなんて知らなかった」
「軟らかくなる間に、オーロラソースを作ってね」
「へいへい」
ポタージュができたら、鮭を蒸し器に入れ、火が通るまでにエノキを炒める。
時間を間違えなければ、作る人を選ばない、失敗なしのレシピである。
「できた!!」
湯気を立てて蒸し上がった鮭に、オーロラソースをかけて食卓に運ぶ。

「美味しい!」
自分で作った料理は、格別の味がするようだ。「ポタージュに胡椒を入れすぎた」などと反省しながら、一つひとつの味を吟味していた。ぜひ、今後も続けていきたいものである。
食後、レポート用紙を持った娘が尋ねてきた。
「献立名は何て書けばいい?」
「『蒸し鮭のオーロラソースがけ』かなぁ」
「えー、不味そうじゃん。『アトランティックサーモン ボイル仕立て~オーロラソースとともに~』っていうのはどう?」
「…………」
今度は私がダメ出しをくらった。
しかし、それを言うならボイルではなく、スチームかと……。
「あとは、『エノキダケのソテー ソイソース風味』とか」
「…………」
これまた、高校生離れしたネーミングである。もちろん、レストランメニューのコピーなのだが、「普通の家庭料理にこの名前ですか?」というギャップが面白い。きっと、家庭科の先生もビックリするに違いない。
次回は、「知床鶏のグリエ 2色のパプリカ添え 粒マスタードをのせて」に決めた!

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「うつろひ~笹木砂希~」(日記)