日本でもっとも値打ちのない「断食道場」体験記

2017年06月17日 | コラム
 今日は「断食道場」なる場所を体験してきた友の話をしたい。
 
 友人サクラ君は悩んでいた。仕事プライベートも、いまひとつ調子が上がらず冴えない日々が続いていたせいだ。
 
 このままではイカン! 一念発起して、彼は「デトックス」をすることにした。
 
 一度体を空っぽにして不純物を取りのぞき、すみきった心身で新しくやり直そうと。
 
 そんな彼が「護摩業」「に打たれる」など数あるデトックス候補から選んだのが断食道場
 
 日帰りから、がっつり一月コースまである中から、サクラ君は10日間の日程を組んだ。
 
 最初聞いたときは遊び半分かと思ってものだが、どうやら結構マジにやるつもりらしい。
 
 友を送り出してから約2週間後、無事おつとめを終えたサクラ君と再会することに。
 
 さて、断食の成果やいかに。
 
 久しぶりに我が家に遊びに来たサクラ君は、まず単純にやせていた。
 
 そらまあ、そうだろう。本当に10日間も、しか飲まずにすごしたのだから、やせなきゃおかしい。
 
 5キロ以上はやせたというか、やつれたようだ。
 
 でも、意外と見た感じは健康そうではある。下山して、簡単な検査を受けたら特に異常もない。
 
 こちらが心配していた
 
 
 「無理な断食で体調を壊す」
 
 
 といったことはない模様。そこは、道場側もしっかりとケアしてくれていたようで、とりあえずは、安心した。
 
 で、やせた以外に何かもっと御利益があったのか。
 
 断食をすると、が鋭敏になったり、五感が研ぎすまされたりするというが、そういうことはあったのか。もしかしたら、チャクラでも開いて、空中浮遊でも出来るんとちがうか、と。
 
 そんな期待にたいしてサクラ君の回答というのが、
 
 
 「うん、最大の発見はアレやな日本のテレビはおかしいっちゅうこっちゃな」
 
 
 へ? それ、なんですのん。
 
 
 「日本のテレビは食べもんの番組が多すぎる。あれは変やで」
 
 
 サクラ君によると、断食中は頭がボーッとして、とにかく何もやる気が出ないのが困りものだそう。
 
 なもんで、ひたすらテレビでも見るしかすることがないらしく、寝ているとき以外はずーっと釘付けになっていたそうだけど、そこで皆が見るのが「グルメ番組」。
 
 お腹がすいたから、食べ物の番組。
 
 というのは、自然な欲求としてわかるような気もするがが、それだとよけいに空腹がこたえるのでは。
 
 素朴な疑問だが、サクラ君が言うには、
 
 
 「いや、一回やってみたらわかる。あれだけ腹が減ると、とにかく食べ物が見たくなるんや」
 
 
 友は続けて、
 
 
 「参加した人、皆見てたもん。ほんで、うらめしそうに《食べたいなあ》ってつぶやくねん」
 
 
 断食道場には、皆それぞれに目的があってやってくる。
 
 デトックスしたいもの、自分を高める「修行」だとやってきた人、それなりに崇高だったりするらしい。
 
 そんな人たちが日がな一日やることが、テレビの食べ物の映像に一喜一憂。
 
 朝起きると、ニュースで「地元のおいしい店」「田舎の新鮮な食材」みたいな特集をやる。
 
 午前中の「街ロケ」番組では、芸人やタレントが食べ歩き、昼の情報バラエティーでもまた「おすすめスイーツ」「デパ地下特集」。
 
 番組のコーナーでもシェフが出てきて、「今晩のおかず」みたいな料理コーナーが。
 
 もちろん、夕方以降もグルメ食べ歩き芸能人がすすめるお店と、山のように食べ物の話が。
 
 番組が終わると、次までのつなぎに、「3分クッキング」。
 
 そこから深夜まで、とにかく食べ物、食べ物、食べ物
 
 
 「もうな、とにかくチャンネルまわすと、24時間休みなく、どっかで食べ物のことやってるねん。どんだけ食うの好きなんや日本人。おかしいんちゃうか」
 
 
 まあ、おかしいといえばおかしいが、
 
 
 「断食道場で参加者全員が24時間グルメ番組ばかり見ている」
 
 
 というのも、相当にシュールな光景だ。 
 
 
 「断食の一番の成果は、日本のテレビは偏りすぎてるとわかったことや!」
 
 
 そう息巻くサクラ君。こちらからすれば、
 
 
 「いや、鋭敏な舌は? 研ぎすまされた五感は? おチャクラ全開悟りでGO! は、どないなったんや?」
 
 
 そういった話を待っていたのだが、
 
 
 「あー、そういうの、たしかにあるで。断食すると、コンビニ弁当に入ってるケミカルなもんの味とか、ジュースの砂糖とかがキツすぎて、しみるねん」
 
 
 そうそう、そういうのが聞きたいのよ。
 
 
 「五感も鋭くなるなあ。音楽とか音の一粒一粒が鮮明に聞こえるし、目も良くなった気がする。光が強すぎて、ネオン街とか歩かれへん」
 
 
 やっぱりそうなんや。
 
 イスラムの人が、
 
 
 「断食すると心身が研ぎすまされる」
 
 
 ていうのは、ホンマやったんや(ムスリムには「ラマダーン」という断食のイベントがある)。
 
 
 「でもなあ、たしかにそうなるけど。だいたい3日で終わるな」
 
 
 へ? あ、そうなの?
 
 
 「スーパーマリオのスターと一緒。一瞬チカチカして無敵になるけど、1分したら元のチビなマリオに戻るやろ。イメージはあれですわ」
 
 
 あれ? そうなん? なんか……それは甲斐ないなあ。
 
 サクラ君曰く、断食道場10日間でわかったことは。
 
 
 1.とりあえず、やせることは間違いがない

 2.断食すると、ものすごくテンションが下がる。
   その分、五感は鋭くなる。
   その「無敵効果」は継続時間3日。

 3.断食参加者は皆、24時間グルメ番組ジャンキー。

  4.日本のテレビ局は、食いもんばっかりに頼るな!
 
 
 最後に友はまとめて曰く、
 
 
 「まあ、あれやな、ちょっとメシ食わんかったくらいでは、人間、煩悩は断ち切られへん、いうこっちゃな」
 
 
 それをいっちゃあお終いよ、な結論であった。
 
 以上、友人サクラ君の「日本でもっとも値打ちのない10日間断食体験」でした。また来週。
 
 
 
 
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