サン・シーロ・スタジアムは、一見の価値ある建造物である。
かつて欧州で、いくつかサッカーを観戦したことがあり、前回まではベルギーリーグ(→こちら)とフランスリーグ(→こちら)を制覇したことまでを語ってきたが、それが意外と楽しかったので、イタリアでも参戦してみることにした。
なんといっても、私が欧州をまわった時期というのが、ちょうど中田英寿選手がイタリア進出を果たしたころ。
そんな彼の活躍を見に、多くの日本人旅行者がペルージャやローマに飛んだのだ。そんなご時世の中、私も旅行中によったイタリアの地で、ヒデの活躍を、どーんと、特に見てはこなかったのである。
などと告白すると、おいおい見てないんかいとつっこまれそうだが、まあ私は特に中田ファンというわけではないし、ヒデの試合は金持ち日本人からだましたりボッたくったりする悪のイタリア人が群がっていて、少々うっとうしいのである。
そこで思い出したのが、以前ドイツを旅行中に会った、ある旅行者だった。
彼は建築関係の仕事をしていたのだが、その内容に幅を広げるため、思い切って退職し、世界のいろんな建物を見て回る旅に出たのだという。
その途上、イタリアではドゥオーモのような歴史的建造物から、ローマ時代の遺跡や下水道まで様々なものを見たが、
「一番すごいと思ったのが、サン・シーロ・スタジアムなんですよ」
素人の私にはわからないが、あれはプロから見ても、すばらしい出来なのだという。
なので青年は、サッカーにはなんの興味もないのに、スタジアムだけを見に、わざわざチケットを取って試合に行ってきたとか。
ふーむ、おもしろい視点だ。私もサッカーを見るにあたっては、選手のことを調べたり、現地の新聞で順位表をチェックしたりはしたが、
「スタジアムが立派かどうか」
には無頓着であった。
たしかに、生観戦の魅力は、その競技場の存在も大きい。
スポーツ観戦の話をすると、テレビ派と生派で議論することはあり、私個人は解説もついて家でダラダラできるテレビ派だけど、もちろん直に見るのも好きで、その場合は「どこでやるか」によって充実度も左右される。
野球なら甲子園球場は、なんのかのいって歴史があって、施設が古いのも味になっている。
単純にでかいし、屋根がない解放感と天然芝の美しさもあって、
「やっぱ、野球はアウトドアやなあ」
しみじみそう思わされる。その逆に、申し訳ないけど大阪ドームは、福本豊さんが、
「野球盤やな」
とおっしゃった通り、いかにも安っぽくて物足りなかった。
サッカーだと、施設はよくても陸上のトラックがあったりすると、ちょっと邪魔だなとか、海外でテニスを見たときは、フレンチ・オープンの開催されるローラン・ギャロスが、微妙に会場内など狭苦しいとかでイマイチだったり、やはり競技場の充実ぶりは試合の内容と同じくらいか、下手するとそれ以上に大事なものだ。
そんな経験もあって興味を示すと、青年も熱心に「ぜひ、一度見てみてください」とすすめるのであった。
これで心が決まった。よし、行先はミラノだ。
お目当てはロナウドでもダービッツでもない。スタディオ・ジュゼッペ・メアッツァ(これが正式名称で、サン・シーロはその愛称)。
ローマやペルージャでは中田英寿目当てにミーハー旅行者が集う中、そこをあえてはずして日本人選手のいない(当時)ミラノというのがシブい。
しかも、これまた、あえてサッカーが二の次で、
「試合のことはおぼえてないなあ。ボクの目当てはスタジアムの建築様式で、すっかりそっちに目をうばわれていたからね」
などと語ってみた日には、いかにも玄人の旅行者のようで、周囲から一目置かれるに違いない。
日程を見ると、ちょうど週末にインテルが試合を行うことになっていた。これを見ることにしようと、私はミラノ行きの列車に飛び乗ったのである。
(続く→こちら)
かつて欧州で、いくつかサッカーを観戦したことがあり、前回まではベルギーリーグ(→こちら)とフランスリーグ(→こちら)を制覇したことまでを語ってきたが、それが意外と楽しかったので、イタリアでも参戦してみることにした。
なんといっても、私が欧州をまわった時期というのが、ちょうど中田英寿選手がイタリア進出を果たしたころ。
そんな彼の活躍を見に、多くの日本人旅行者がペルージャやローマに飛んだのだ。そんなご時世の中、私も旅行中によったイタリアの地で、ヒデの活躍を、どーんと、特に見てはこなかったのである。
などと告白すると、おいおい見てないんかいとつっこまれそうだが、まあ私は特に中田ファンというわけではないし、ヒデの試合は金持ち日本人からだましたりボッたくったりする悪のイタリア人が群がっていて、少々うっとうしいのである。
そこで思い出したのが、以前ドイツを旅行中に会った、ある旅行者だった。
彼は建築関係の仕事をしていたのだが、その内容に幅を広げるため、思い切って退職し、世界のいろんな建物を見て回る旅に出たのだという。
その途上、イタリアではドゥオーモのような歴史的建造物から、ローマ時代の遺跡や下水道まで様々なものを見たが、
「一番すごいと思ったのが、サン・シーロ・スタジアムなんですよ」
素人の私にはわからないが、あれはプロから見ても、すばらしい出来なのだという。
なので青年は、サッカーにはなんの興味もないのに、スタジアムだけを見に、わざわざチケットを取って試合に行ってきたとか。
ふーむ、おもしろい視点だ。私もサッカーを見るにあたっては、選手のことを調べたり、現地の新聞で順位表をチェックしたりはしたが、
「スタジアムが立派かどうか」
には無頓着であった。
たしかに、生観戦の魅力は、その競技場の存在も大きい。
スポーツ観戦の話をすると、テレビ派と生派で議論することはあり、私個人は解説もついて家でダラダラできるテレビ派だけど、もちろん直に見るのも好きで、その場合は「どこでやるか」によって充実度も左右される。
野球なら甲子園球場は、なんのかのいって歴史があって、施設が古いのも味になっている。
単純にでかいし、屋根がない解放感と天然芝の美しさもあって、
「やっぱ、野球はアウトドアやなあ」
しみじみそう思わされる。その逆に、申し訳ないけど大阪ドームは、福本豊さんが、
「野球盤やな」
とおっしゃった通り、いかにも安っぽくて物足りなかった。
サッカーだと、施設はよくても陸上のトラックがあったりすると、ちょっと邪魔だなとか、海外でテニスを見たときは、フレンチ・オープンの開催されるローラン・ギャロスが、微妙に会場内など狭苦しいとかでイマイチだったり、やはり競技場の充実ぶりは試合の内容と同じくらいか、下手するとそれ以上に大事なものだ。
そんな経験もあって興味を示すと、青年も熱心に「ぜひ、一度見てみてください」とすすめるのであった。
これで心が決まった。よし、行先はミラノだ。
お目当てはロナウドでもダービッツでもない。スタディオ・ジュゼッペ・メアッツァ(これが正式名称で、サン・シーロはその愛称)。
ローマやペルージャでは中田英寿目当てにミーハー旅行者が集う中、そこをあえてはずして日本人選手のいない(当時)ミラノというのがシブい。
しかも、これまた、あえてサッカーが二の次で、
「試合のことはおぼえてないなあ。ボクの目当てはスタジアムの建築様式で、すっかりそっちに目をうばわれていたからね」
などと語ってみた日には、いかにも玄人の旅行者のようで、周囲から一目置かれるに違いない。
日程を見ると、ちょうど週末にインテルが試合を行うことになっていた。これを見ることにしようと、私はミラノ行きの列車に飛び乗ったのである。
(続く→こちら)