「『アオイホノオ』に、庵野ヒデアキが『ウルトラマン80』を語るシーンが出てけえへんやないか!」
前回(→こちら)はテレビの前でそう吼えて、『ウルトラマン80』がいかにダメな特撮番組かを語った。
では庵野秀明さんはいったいそんなヒーローのなにを熱く語ったのかと問うならば、その答えは岡田斗司夫さんのコラムにあった。
「ウルトラマン80って、どう思います?」
まだ若かりしころ、庵野さんが岡田さんにそう尋ねた。
80ってどう思います。といわれても、まっとうな社会人なら、
「いや、どうとも思わんけど……」
一蹴するのが模範解答だろうが、濃いオタク同士の会話でそのような無粋なことをしてはいけない。
「あの庵野秀明が、あえて80について語りかけてくる」
という時点で、なにかあると身構えなければならないのだ。
岡田さんはとりあえず無難に、
「80いいよね。特撮はレベル高いよ」
そう返すと庵野監督はニッコリと
「80の特撮はムダに良いんですよ」
そこで終わればなんということのない会話だが、続けて庵野さんは、
「ところで岡田さんはバルタン星人が出る回を見ましたか? え? 見てない? じゃあ、ここにたまたま80のビデオがあるから見ましょう」
80のビデオが「たまたまある」というのがどういうシチュエーションかよくわからないが、そういえばドラマの中でも庵野ヒデアキが女の子を部屋にあげたときに、有無言わさず『機動戦士ガンダム』の全話をマラソン鑑賞させていたっけ。
ビデオをセットすると映しだされたのは第45話。その名も
「バルタン星人の限りなきチャレンジ魂」
もうタイトル聞いた時点でトホホな空気が伝わってくるが、どんなストーリーかといえば、まずバルタン星人が地球を侵略に来る。
その作戦というのが、バルタン星人が皿を投げ、その写真を「UFOの写真」ということで世に広める。
そんな『月刊ムー』みたいなことをして、どうなるのかと問うならば、その写真を見た人々が、
「これはホンモノだ!」
「違う、ニセモノだ!」
ケンカをはじめる。
最初はささいな争いだったが、やがてそれがエスカレートし、懐疑派とビリーバーの世論はまっぷたつ。
ついには戦争が起こり、地球人は全滅するというもの。
そんなことで戦争が起こるか!
つっこみたくなるし、そもそも普通にウルトラマンがいる世界でUFOが「ホンモノかニセモノか」もないと思うが、そんな根本的に底が抜けていることを気にもせずバルタン星人は
「ふはははは、争え! ケンカしろ! 子供と子供がケンカする。親と親がケンカする。国と国とがケンカする。ミサイル発射! 戦争賛成! これがこのバルタン星人様の陰謀とはお釈迦様でもご存じあるめえ」
ここで庵野監督が目を輝かせて、
「ここですよ! このセリフ!」
どうやら、大のお気に入りらしい。
バルタン星人も地球来てから10年以上。「お釈迦様でもご存じあるめえ」とは、日本語もうまくなったものだ。
『新世紀エヴァンゲリオン』の大ブレイクでいまや歴史に残る大監督の庵野秀明が、ダメ特撮のダメシナリオの回を見て、ほほを赤らめ
「これがいいんですよ」
この逸話が私は大好きで、『アオイホノオ』にも、きっと出てくるんだろうなあと期待していたら、出てこなくてガッカリであった。
庵野さんと岡田さんいえば、
「岡田さんは、仮面ライダーだめでしょ! 腹ではバカにしてるんですよ!」
「当たり前や! あんなバッタのお面かぶって跳び蹴りしてるような、やっすい番組のどこを見たらええねん!」
「そうでしょうとも。岡田さんはそういう人です。でもボクは違いますよ。ボクはウルトラマンもライダーもどっちもOKですよ!」
という会話もすこぶるステキである。
これも、出てくるかとワクワクしていたが、なかった。
もし「2」が作られるなら、ぜひ登場させてほしい。ちなみに、ライダーに関しては私は岡田さん派です。
■おまけ画像
これいいなあ→『アオイホノオ』のOPをアニメ化してみた
□おまけ画像 その2
バルタン星人の名セリフは→こちらから