前回(→こちら)の続き。
将棋は「3級」になると、これまでより、また何倍もおもしろくなる。
また「初段」ほどハードルが高くなく、私や友人コウノイケ君のような、
「めんどい方法は捨てて、好きな勉強法だけやる」
という、呑気なやり方でも到達できるし、さらにはその後の「ブレイクスルー」の下地にもなるため、この、
「一点突破で、とりあえす3級」
は、かなりオススメである。
というと、そんな「棋譜並べだけ」とか、「詰将棋だけ」で、ホンマに上達でけるんかいなと、疑問に感じられる方もおられよう。
しかしこれは、私たちのヘボい経験だけでなく、先崎学九段も、似たようなことを、おっしゃっているのだ。
先チャンの場合は「囲碁」のはなしだが、『NHK囲碁講座』テキストのコラムで、自身の囲碁上達プロセスを書いておられた。
それはもう、
「このゲームは形が大事」
というところから、手筋集や、石の形に明るくなる本を読んで、それで有段者(ここで六段になるのがボンクラと天才の差だ)になったそうな。
本人曰く、石の生き死になど、理解しないままやってたから、
「筋はいいが、とんでもなく非力な六段」
とのことで、まあ、謙遜もあるのだろうが、やはり棋譜だけで学んだ私も、似たようなところがあるから、言いたいことはわかる。
要するに、将棋で言えば、
「接近戦が苦手」
「詰みの部分が、あいまい」
みたいなもんで、かたよってはいるが、やはり、
「ゴロゴロ寝ながら」
「ひとつを極める」
というメソッドで、ある程度強くなれることの証明でもあるし、実際、
「アマチュアの方でも、詰将棋や詰碁をやらなくたって、三段くらいはなれる」
など、われわれのようなスカタンが、よろこびにむせび泣くようなことも、書かれていた。
詰将棋(詰碁)をやらなくていい。
なにかこう、「われわれの勝利だ!」と気炎をあげたくなる話ではないか。
私個人としては、楽してニ、三段になれれば、それ以上のぜいたくは言わないわけで、この「先崎宣言」で大いに満足。
それどころか、将棋を本格的に楽しむことは「観る将」でも「指す将」でも、3級でいいと思っているわけだから、ますます希望のある話ではないか。
ただ、中には、せっかく3級や初段になれたなら、
「もっと強くなりたい」
という人も出てくるかもしれない。
その心意気や良しだが、三段以上の四段、五段クラスになるには、私の見たところ、正直これでは限界がある。
四段以上になると、たとえば私のスタイルだと付け焼刃の「アヤシイ手」など通じないし、終盤のスプリント勝負は、てんで話にならない。
なにより序盤の駒組で決定的な差をつけられ、仕掛けて数手で中押しとか、まったく将棋にならなかったりする。
これは「詰め将」コウノイケ君も、大学で実感したそうで、
「得意の、トン死ねらえる局面に行く前に、コールド負け食らうねん。てゆうか、その終盤戦も、みんな全然ボクよりレベルが高い!」
自己流の哀しさである。
『ヒカルの碁』で、葉瀬中の三谷くんの力戦が、海王中の岸本くんに、まったく通じなかったときのようなものだ。
「自己流」の実戦的戦い方で挑む三谷くんですが……。
地力の差はいかんともしがたく、この余裕っちな態度
これは、まさに先チャンの本にも書いてあって、六段で頭打ちになったのを、囲碁のプロ(奥様の穂坂繭三段)に相談すると、
「詰碁」
一言だけ帰ってきたそうな。
詰将棋好きで、すぐれた詰将棋作家を大リスペクトし、その本の中で、
「詰将棋だけをひたすら解いていれば、それだけで県代表クラスになれる」
とまで豪語する先チャン(ちなみに羽生善治九段も、これと同じことを昔言っている)だが、なぜか詰碁はお嫌いなようで、
「詰碁は苦手でねえ。他にないかな?」
「詰碁」
「いや、それは頭が痛くなるし」
「詰碁」
「それだけは勘弁してください、お代官様」
「だから、詰碁だってば!」
まさに、取りつく島がないとは、このことである。
たしかに自己流だと「三段限界説」というのは、自分自身を照らし合わせても、説得力があるところではある。
私は定跡がおぼえられないし、詰将棋を「鑑賞」するのは好きだが解くのはめんどくさい。
コウノイケ君は詰将棋が得意とはいえ、「詰み」だけに特化しすぎて、終盤戦での「腕力勝負」や心理的な「駆け引き」のようなものに疎い。
なので戦い方に「厚み」がなく、三段どまりなのだ。
まあ、そこはまた、そこまで行ってから悩めばいいわけで、私的にはまず「3級」を目指すべし。
「一点突破」で3級。
プラス「実戦」で初段。
その後もコツコツやってれば、「ブレイクスルー」が起こって(2、3ヶ月から半年くらい)、もしかしたら二段、三段も視野に入るかもしれないが、自分の感覚では将棋って、
「2、3級で、初段を目指しているときが、一番楽しい」
とも思うので、その意味でも、
「まず3級」
になれる「一点突破」勉強法はオススメなのです。
(実戦の逆転術編に続く→こちら)