『HOW TO BUILD GUNDAM』を買う。
『ホビージャパン』の編集部が出したムックで、なつかしのモデラー集団「ストリーム・ベース」のメンバーなどを中心とした、ガンダムのプラモデル作品集。
ということで、前回まで(→こちら)は『プラモ狂四郎』をはじめとする、当時のプラモブームの思い出などを語ってみた。
そこで、もうひとつそれ系のネタで思い出すのが、あるキャラクター。
それは「プラモのモ子ちゃん」。
というと、私と同世代かそれ以上の歳の男子は、「あー」と言ってくれるだろうが、モ子ちゃんとは藤田幸久さんが描くタミヤ(田宮模型)のマスコットキャラクター。
子供のころ、クラスの多くの少年が『ドラえもん』目当てに『コロコロコミック』を購読する中、ひとり『コミックボンボン』を買っていた私が、『プラモ狂四郎』とともに楽しみにしていたのが、モ子ちゃんのページ。
ウサギの「ラビくん」とコンビを組んで、主に戦車などスケールモデルや、それを題材にしたジオラマの解説などをしてくれるのだが、これがインパクト抜群。
さすがに当時の資料は残ってないけど、Brandon Grahamさんという方がアップされてました。
そもそも子供というのは、NHKの学習番組や学研の「ひみつシリーズ」など講座モノの本や番組を好むものだが、これがさらに
「プラモデルの作り方」
とあっては、もうテンションも上がりまくり。
しかも教えてくれるのは、かわいい女の子であって、小学生だった自分にとってはお姉さんだが、ともかくも、
「若い娘さんが、プラモを教えてくれる」
という夢のような妄想で、今ならYouTubeなどで、いくらでもあるだろうけど、いわばそのはしりだったのである(ホンマかいな)。
内容もマニアックで、
「車体前方にエンジンを配置することで防弾性を高め、他の戦車でも一部見られた二重装甲が、このメルカバでは車体前面にほどこされています」
「ガスタービンは小型、軽量で部品が少なく、信頼性、整備性が高いものの、防塵装置、燃費という問題がありました」
などなど、小学校低学年にはチンプンカンプンであり、まったくオタクというのは今も昔も
「力の加減がわからない」
という生き物であるなあ。ガチすぎるだろ。
そういえば、『狂四郎』でも京田君のライバルだった丸山君が、砂漠の戦車戦(ティーガーvsマゼラアタック&クラブガンナー)で、
「こいつをたおすのにアメリカ軍は五台の戦車を必要としたんだ」
「戦車は上面装甲が弱いはず」
といった、小学生とは思えぬ渋い知識を披露していた。早熟のエリート(なんのだ?)といえよう。
スケールモデラー、景山陽君の作ったタイガー1型。
その圧倒的パワーで数的不利をものともせす、主人公チームを撃破。
モ子ちゃんで思い出すのは、高校生のころだったか、友人とオタク話で盛り上がっていたところ彼が、
「そういや、米軍や自衛隊の中には、戦闘機の機体にモ子ちゃんのイラスト描いて飛んでるパイロットがおるらしいで」
軍の兵器にモ子ちゃん!
勇者というか、阿呆というか、オタクの本懐というか、とにかくすごい自信であり、痛車ならぬ「痛機」。
ただ、これはちょっとおもしろすぎということで、
「おまえ、話つくんなやー」
「いやー、ネタとしていいセンスしてるけどさー」
なんてツッコミを入れたものだが、これがどうも本当の話のようで、それが、たぶんこれ。
たぶん、プラモデル好きだった少年が、その愛があふれて、本当にパイロットになってしまったのだろう、ガッツマンであるとしか言いようがない。
(『プラモ狂四郎』クラフトマンの闇編に続く→こちら)