「旅に出たい病」は不治の病である。
ということで、前回は金やヒマがないとき、この発作をまぎらわす「旅のどんぐりコーヒー」として、
を紹介したが、他にもこんなのがあって、たとえば「海外の炭酸水」。
ヨーロッパを旅行していたとき、ちょっと困ったことに水があった。
私はガサツな体をしているのか、海外で「水が合わない」みたいなことはあまりない方だが、体調は平気でも味は微妙なときがある。
中でもヨーロッパで「ミネラルウォーター」というと、基本的には「ガス入り」であり、これがあまり口に合わなかったのだ。
いや、炭酸自体は私も大好きなのだが、ヨーロッパのそれはだいたいが微炭酸。
それも、かなり「抜けている」感じで、またヨーロッパ人は日本のように冷やしたドリンクを好まないため、たいてい生ぬるい。
それだけでなく、コーラもぬるい。ファンタもぬるい。ビールもぬるい。
夏真っ盛りで、暑さにへばっていても、奴らはぬるぬるドリンクを飲みやがるのだ。爽快感ゼロや!
これはウマくないです。
なんで、うっかりガス入りを買ってしまったときは、飲み切るのに苦労したものだが、その記憶があるせいか、逆に日本で飲むと旅の記憶がよみがえる。
思い出すのはトルコのこと。
トルコはイスラムの国でヨーロッパとは文化が違うはずだが、ドリンクはこれがまた生ぬるい。
イスタンブールでもカッパドキアでもイズミルでもそうで、それこそ観光を終えてスカッとしたいのに、なに飲んでも、やはり人肌。
で、「またかあ!」とガッカリしていたら、売店のオジサンが、
「もしかして、冷たいのがほしいんか?」
つたない英語でこう言ってきたのだ。
うんざりしながら「そうである」と答えると、オジサンは店の奥から別の壜やペットボトルを持ってきてくれた。
で、これが飲んでみると、冬の北海道くらいキンキンに冷えていた。
え? なんで? といぶかしんでいるとオジサンは、
「ヨーロピアンはぬるい飲み物が好きやからね。それに合わせとるんやわ」
おーい! 待てい! お前らのせいか!
ヨーロッパといえば、昔は世界各地を侵略しまくっていた歴史がある。
かくいうこのトルコも「瀕死の病人」と呼ばれるほど、メチャクチャに荒らされたけど、温度まで取りこんでいたと。
まさに帝国主義もここに極まれりである。
コラ! この植民地野郎どもが! オレのセブンアップをぬるくすな!
そんなこともあったりとか、ともかく発作が起きるといつも、ふだんは飲みつけないゲロルシュタイナーやサンペレグリノを買ってくるのだ。
もちろん、ぬるいまま口をつけ、
「たいして、おいしくない! 爽快感もなし! けど、外国を思い出して、いい気分!」
という、なんともおかしな快哉を上げることとなるのだ。頭イカれてるな。