前回(→こちら)に続いて、カルチョ・スタジアム見学記第5弾。
「サン・シーロは一度見ておいた方がいい」
そう建築のプロからアドバイスを受けて、セリエAはインテルの試合を見に、スタディオ・ジュゼッペ・メアッツァをおとずれた私。
イタリアはスリは多いし、お釣りはごまかすし、街はきたないし、メシはまずいし、意外と物価は高いし、ぼったくりバーには連れていかされそうになるしと、ロクな印象がなかったが、サン・シーロはそのすばらしさに感動した。
これとくらべたら、マジでトレビの泉とかスペイン階段とか、どうでもいいです。イタリアって、ハッキリ言って過大評価されすぎだと思わされたけど、ここにきて一気の挽回を見せてくれた。
なんて書いていると、おいおいスタジアムのことはわかったけど、肝心の試合の方はどうだったのだと言われそうだが、こちらの方は全然おぼえてないのだった。
たしか、インテルと、あとフィレンツェでバティストゥータのいるフィオレンティーナの試合も見た記憶はあるんだけど、まったく頭に残ってない。当時は
「守備的なイタリアサッカーは退屈」
って言われてたから、そのせいかも。
唯一思い出せるのは、スタジアムじゅうを飛びかっていたオレンジ。
フランスでもイタリアでも、フーリガン対策で厳重なボディーチェックを受けたもので、発煙筒とかペットボトルとかは、没収されたもの。
中には、ペットボトル持ちこみはOKだけど、フタだけはずさせるところもあった。危険な薬物や爆発する液体などを入れることを警戒してのようだ。
それでも、なんのかのと手管を使って持ちこんだり、あとは事前にスタジアムに忍びこんで置いておくという豪の者もいるらしいけど、そういった濃い連中以外のインテリスタたちが持ちこんでいたのが果物のオレンジ。
最初は、さすがイタリア人、オレンジが好きなんやなあと呑気に考えていたが、試合が始まって、そんなまったりした様子でないことにすぐ気づかされることになる。
なんといっても、試合中そこいらじゅうに黄色い点がビュンビュン飛びかうのだ。そう、彼らは興奮すると、日本の野球場のような紙コップやメガホンの代わりに、オレンジをフィールド上にバンバン投げ入れるのだ。
いや、それ危ないよ! と、こっちは思うわけだけど、ボディーチェックでそれを取り上げるわけにはいかない。みなニッコリ笑って、
「食後のデザートさ」
そう言われたら、どないしょうもないわけですな。
でもって、首尾よく持ちこんだその食べられる凶器を、まるで、ドッヂボールみたいにブンブン投げまくる。蛮族か。だから、危ないっちゅうねん!
こんな話をすると、そんなことして、当たってケガでもしたらどうするのかと、心配になる読者諸兄もおられるかもしれないが、まさにビンゴ。
本当に当たってケガした人が出たのです。それも観客じゃない。試合をしている選手に!
試合中、なぜか反則でもないのにプレーが中断され、会場が騒然となったことがあった。
だれかケガでもしたのかとながめまわすと、ボールの近くで競り合っていた選手はみな元気そうだ。タックルやチャージのせいではないらしい。
どうやら、選手たち自体もよく状況がわかっていないようだったが、目線を手前に落としてみて、ようやっとわかった。
中断の原因となったのは、ゴールキーパーだったのである。
敵側のキーパーが、ゴール前でうつぶせになって微動だにしない。どうやら、インテルファンが「死ね、このクソキーパー!」みたいに投げつけたオレンジが、その後頭部に見事命中。
運の悪いことに、これが的確に急所をとらえたクリティカルヒットとなり、あわれアウェーで戦う孤独なキーパーはその場で昏倒。そのまま担架で運ばれる事態になってしまったのである。
試合内容はおぼえてないが、このときの光景だけは鮮明に思い出せる。
なんたって、手前側にいたゴールキーパーが実に美しいうつぶせの「大の字」になって気絶していたのだ。彼には申し訳ないが、それが「人文字」のパフォーマンスみたいで笑ってしまったのだ。
ヒジ打ちや危険なタックルで痛めて退場というシーンは、サッカーではよく見かけるけど、
「オレンジをぶつけられて退場」
というのはなかなか見ない光景である。みのもんたに、ぜひ実況してもらいたかった。
なんともマヌケな理由で試合から去る敵のキーパーを見ながら、さすがの荒々しいイタリア人も笑っていいのか反省していいのかわからず、なんとも妙な空気になっていたものであった。本場のサッカーはすごいなあ。
「サン・シーロは一度見ておいた方がいい」
そう建築のプロからアドバイスを受けて、セリエAはインテルの試合を見に、スタディオ・ジュゼッペ・メアッツァをおとずれた私。
イタリアはスリは多いし、お釣りはごまかすし、街はきたないし、メシはまずいし、意外と物価は高いし、ぼったくりバーには連れていかされそうになるしと、ロクな印象がなかったが、サン・シーロはそのすばらしさに感動した。
これとくらべたら、マジでトレビの泉とかスペイン階段とか、どうでもいいです。イタリアって、ハッキリ言って過大評価されすぎだと思わされたけど、ここにきて一気の挽回を見せてくれた。
なんて書いていると、おいおいスタジアムのことはわかったけど、肝心の試合の方はどうだったのだと言われそうだが、こちらの方は全然おぼえてないのだった。
たしか、インテルと、あとフィレンツェでバティストゥータのいるフィオレンティーナの試合も見た記憶はあるんだけど、まったく頭に残ってない。当時は
「守備的なイタリアサッカーは退屈」
って言われてたから、そのせいかも。
唯一思い出せるのは、スタジアムじゅうを飛びかっていたオレンジ。
フランスでもイタリアでも、フーリガン対策で厳重なボディーチェックを受けたもので、発煙筒とかペットボトルとかは、没収されたもの。
中には、ペットボトル持ちこみはOKだけど、フタだけはずさせるところもあった。危険な薬物や爆発する液体などを入れることを警戒してのようだ。
それでも、なんのかのと手管を使って持ちこんだり、あとは事前にスタジアムに忍びこんで置いておくという豪の者もいるらしいけど、そういった濃い連中以外のインテリスタたちが持ちこんでいたのが果物のオレンジ。
最初は、さすがイタリア人、オレンジが好きなんやなあと呑気に考えていたが、試合が始まって、そんなまったりした様子でないことにすぐ気づかされることになる。
なんといっても、試合中そこいらじゅうに黄色い点がビュンビュン飛びかうのだ。そう、彼らは興奮すると、日本の野球場のような紙コップやメガホンの代わりに、オレンジをフィールド上にバンバン投げ入れるのだ。
いや、それ危ないよ! と、こっちは思うわけだけど、ボディーチェックでそれを取り上げるわけにはいかない。みなニッコリ笑って、
「食後のデザートさ」
そう言われたら、どないしょうもないわけですな。
でもって、首尾よく持ちこんだその食べられる凶器を、まるで、ドッヂボールみたいにブンブン投げまくる。蛮族か。だから、危ないっちゅうねん!
こんな話をすると、そんなことして、当たってケガでもしたらどうするのかと、心配になる読者諸兄もおられるかもしれないが、まさにビンゴ。
本当に当たってケガした人が出たのです。それも観客じゃない。試合をしている選手に!
試合中、なぜか反則でもないのにプレーが中断され、会場が騒然となったことがあった。
だれかケガでもしたのかとながめまわすと、ボールの近くで競り合っていた選手はみな元気そうだ。タックルやチャージのせいではないらしい。
どうやら、選手たち自体もよく状況がわかっていないようだったが、目線を手前に落としてみて、ようやっとわかった。
中断の原因となったのは、ゴールキーパーだったのである。
敵側のキーパーが、ゴール前でうつぶせになって微動だにしない。どうやら、インテルファンが「死ね、このクソキーパー!」みたいに投げつけたオレンジが、その後頭部に見事命中。
運の悪いことに、これが的確に急所をとらえたクリティカルヒットとなり、あわれアウェーで戦う孤独なキーパーはその場で昏倒。そのまま担架で運ばれる事態になってしまったのである。
試合内容はおぼえてないが、このときの光景だけは鮮明に思い出せる。
なんたって、手前側にいたゴールキーパーが実に美しいうつぶせの「大の字」になって気絶していたのだ。彼には申し訳ないが、それが「人文字」のパフォーマンスみたいで笑ってしまったのだ。
ヒジ打ちや危険なタックルで痛めて退場というシーンは、サッカーではよく見かけるけど、
「オレンジをぶつけられて退場」
というのはなかなか見ない光景である。みのもんたに、ぜひ実況してもらいたかった。
なんともマヌケな理由で試合から去る敵のキーパーを見ながら、さすがの荒々しいイタリア人も笑っていいのか反省していいのかわからず、なんとも妙な空気になっていたものであった。本場のサッカーはすごいなあ。