それは、彼が小学5年生くらいの時だっただろうか。
松飾も取れた後の、棟梁を頭にした協力会(職人の結束の為)の新年会の時であった。
其れまでは、子供が2歳で難病を患ったことも有り、子供が小さいからと夜間の宴席は長い間遠慮させてもらってきていた。
子供もそろそろ大きくなったからと、自分の判断で行なった再参加の第一回目の宴席であった。
「今年も仕事が沢山有るから、無理しても協力して繰れ」という云わばグループ内の棟梁の、お願いを兼ねた決起集会である。
天童のある有名ホテルで、仲間は殆ど一泊の宴会であった。 私の事は当然、皆了解事項であったので、午後8:30分頃帰る予定で、子供には「午後9時には帰ってくるよ!」と言い残して参加していた。
私には当時、母が居たが先に逝った父の後を追って、痴呆が始まり寝たきりの状態であった。 私の心労が重なった様子を見たある市会議員の進めで、母を施設に預けていて、自宅には子供と二人だけで暮していた。 それから、母は亡くなったが、当然今も自宅には子供と二人暮らしではある・・。
宴もたけなわの最中で、元来、酒の雰囲気の好きな私に抜け出す事は至難のことではあったが、どうやらこうやら、9時前にはホテルを出ることができた。
自宅に着いたときには、9時半を少し過ぎていた。 玄関と茶の間は、出かけた時のままこうこうと灯かりがついていた。 そして、茶の間の真ん中に敷いた掛け布団の真ん中には、膝まづいて涙で顔をぐしゃぐしゃにして子供が泣いて待っていた。
心が張り裂けそうであった。
だが子供は、私よりもっと心が張り裂けそうで有ったのだろう。
言葉は、何もかける事ができなかった。 ただ、申し訳ない申し訳ないの思いだけであった。
二人は、ただ布団の上で涙が止まらなかった。
今でも、年端の行かない子供が何も言わずに泣いているのに出くわしたりすると、涙が止まらなくなるのは其のせいである。
その子も、今年誕生日が来れば、二十歳になる。
難病特定疾患の研究事業とされた、治療費の免除も二十歳までで、その後は自費となる。
今では、夜間の酒の席でも「12時まで帰ってくればいいよ、余り飲みすぎるな ナ!」といってくれる所まで、成長した。
20歳以降の、月々10万を超える治療費はどうにかなるだろうとは思うが、ならない時は子供共々「死ぬしかないなー」と常々覚悟は決めさせている。
明日の事を、もっと希望を持って語りたいのはやまやまであるが、現実は思うに任せない。

松飾も取れた後の、棟梁を頭にした協力会(職人の結束の為)の新年会の時であった。
其れまでは、子供が2歳で難病を患ったことも有り、子供が小さいからと夜間の宴席は長い間遠慮させてもらってきていた。
子供もそろそろ大きくなったからと、自分の判断で行なった再参加の第一回目の宴席であった。
「今年も仕事が沢山有るから、無理しても協力して繰れ」という云わばグループ内の棟梁の、お願いを兼ねた決起集会である。
天童のある有名ホテルで、仲間は殆ど一泊の宴会であった。 私の事は当然、皆了解事項であったので、午後8:30分頃帰る予定で、子供には「午後9時には帰ってくるよ!」と言い残して参加していた。
私には当時、母が居たが先に逝った父の後を追って、痴呆が始まり寝たきりの状態であった。 私の心労が重なった様子を見たある市会議員の進めで、母を施設に預けていて、自宅には子供と二人だけで暮していた。 それから、母は亡くなったが、当然今も自宅には子供と二人暮らしではある・・。
宴もたけなわの最中で、元来、酒の雰囲気の好きな私に抜け出す事は至難のことではあったが、どうやらこうやら、9時前にはホテルを出ることができた。
自宅に着いたときには、9時半を少し過ぎていた。 玄関と茶の間は、出かけた時のままこうこうと灯かりがついていた。 そして、茶の間の真ん中に敷いた掛け布団の真ん中には、膝まづいて涙で顔をぐしゃぐしゃにして子供が泣いて待っていた。
心が張り裂けそうであった。
だが子供は、私よりもっと心が張り裂けそうで有ったのだろう。
言葉は、何もかける事ができなかった。 ただ、申し訳ない申し訳ないの思いだけであった。
二人は、ただ布団の上で涙が止まらなかった。
今でも、年端の行かない子供が何も言わずに泣いているのに出くわしたりすると、涙が止まらなくなるのは其のせいである。
その子も、今年誕生日が来れば、二十歳になる。
難病特定疾患の研究事業とされた、治療費の免除も二十歳までで、その後は自費となる。
今では、夜間の酒の席でも「12時まで帰ってくればいいよ、余り飲みすぎるな ナ!」といってくれる所まで、成長した。
20歳以降の、月々10万を超える治療費はどうにかなるだろうとは思うが、ならない時は子供共々「死ぬしかないなー」と常々覚悟は決めさせている。
明日の事を、もっと希望を持って語りたいのはやまやまであるが、現実は思うに任せない。
