ライオンの詩 ~sing's word & diary 2

~永遠に生きるつもりで僕は生きる~by sing 1.26.2012

マコ先生へ。2

2016-04-24 04:54:28 | Weblog
「そこへ座れ」
又兵衛が言った。
「さっそくながらこれを」
佐助は慶長小判五枚を差し出した。
「ああ、そこへ置いておけ」
礼も言わない。
「ゆくさき、いよいよ御入城ときまれば、ご入用金はいかようでも整えまする」

「茶でも馳走するかな」
又兵衛は、酒は一滴も飲めない。ところご茶をひどく好み、このかまぼこ小屋の中に、異様なほど豪華な茶道具が一式そろえられている。
「たいそうなお道具でござりまするな。先月参上しました時は拝見いたしませなんだが、あれからお買いあそばしたか」
「乞食の分際に不相応かな」
「めっそうもない」

後藤又兵衛基次といえば、かつては筑前五十二万五石の黒田家で一万六千石の知行をうけ、国中の小城をあずかっていたほどの男である。前身は大名といってもよく、武名は天下にかくれもない。主家を退散して牢人になり、ついに乞食にまで身を落としたとはいえ、これほどの茶道具を持っていても不思議ではなかろう。しかし、この茶道具をあがなうだけで、ざっと小判三十枚は要る。

「立ち入ったことをうかがうようでござりまするが、この道具、いずれでお求めになりました」
「これか。室町の道具屋平野甚兵衛の店よ」
「お金は?」
「先般そちが持ってきてくれた小判十枚を手付けにして求めた。しかし、あと二十枚は不足じゃ。毎月そちが持ってきてくれる金を渡すつもりでいる」
けろりといった。
「それはそれは」
驚かざるをえない。

毎月の金というのは、将来開戦の場合、又兵衛が大阪に入城するという約束で、その契約金を分割払いしているのだ。
今の又兵衛は、具足から刀槍まで売り払った乞食なのである。その証拠に、垢で光った小袖に縄の帯をし、朝夕の米塩にも困っている。
金五枚もあれば、家を借り、夏冬の衣料を整え、小女の二人も置いて、しかも五ヶ月は贅沢に食えるだけのことはできるのだ。

「佐助のごとき下賤の者には、御胸中計り兼ねまするが、これはどういうわけでごさりましょう」
「茶が飲みたいからよ」
「それだけのことでござりまするか」
「あたりまえのことではないか。茶を飲む以外のことで、茶道具を求めるバカはいない」
「しかし佐助などの小智恵では、この金ではよう乞食をおやめあそばした方が、よろしかろうと存じます」
「茶も好きじゃが、乞食も好きでな。男というものは、一国一城のあるじになるか、さもなければ、平然と乞食になれるほどの気組の者をいうのじゃ。それ以外の生き方は、わしにはない」
「おそれいりまする」
「恐れなくともよい」
と、茶碗をつかんで、佐助の前に置いた。

「しかし」
と、佐助は首をかしげた。
「まだ、不審かな」
又兵衛は肩をゆすって、
「少し考えればわかる。人間、金などをチリ、アクタに思うている男が大仕事をするものじゃ。金一枚で毎日食えるとこぢんまり考えている男に、天下を動かす才覚が湧くと思うか。・・・おれも、好きこのんで、かような乞食をしたわけではないが」
と、ちょっと寂しそうな微笑を浮かべ、
「お前もここまで落ちてみればわかる。いかにも前身が後藤又兵衛といえども、乞食は、乞食じゃ。ついには橋のタモトで一椀の飯を恵まれれば、今日はこれで飢えをまぬがれたと思い、町屋の軒先で一文でも多くもらえれば、心を揺さぶられるほどにありがたしと思う。そこへ大金が入った。気も動転する思いであったが、しかし、ここで心を動かせば、又兵衛といえ男は乞食になりきって、ふたたび再起できまい」

司馬遼太郎「風神の門」より抜粋。

「えっ?いいんですか?ありがとうございまーす!いただきまーす」
と、僕はいただいたご飯を平らげた。

しんぐ「旅日記」より抜粋。


腰が、抜けそうで抜けない、抜けなそうでいつでも抜けそうなしんぐくんです。
少し、立てるようになりました。でも、腰椎の辺りがグラグラと不安定に動きます。
まだ、不安いっぱいです。

今日はお世話になっているタノキューの誕生日ということで、この場を借りて、おめでとー^o^

タノキュー主催のライブが今晩小平辺りであるそうで、サプライズで馳せ参じ、あわよくば一曲くらい歌わせてもらえないか、なんて思っていたのだけれど、ろくに歩けもしない僕が行けるわけもない。ごめんね。がんばって。

あっ、おれ、歌いたくなってきた。
あっ、おれも、ライブがあるんだった。

あぁ、早くライブがやりたいなぁ。

あぁ、早く、腰、治らないかなぁ。