我が畑の貸し主の柿本家の田んぼである。
もち米を刈るから「集合!」とかけ声がかかった。
柿本家というのは、うちの親方の嫁の実家。
つまり、親方が呼ばれたので、必然的に僕も呼ばれるという構図である。
朝の9時に田んぼへ行くと、もう稲刈りが始まっていた。
親方が小さな稲刈り機をブインブインいわせている。
稲刈りなんて初めてなので、勝手がわからない。
稲刈り機でバババーっと刈って、稲刈り機が縛ってくれた藁の束を、丸太を組んで作ったウマというものに乗せて干す。
ふーん、、、そういうことね、、、と少しの間見ている。
どうも稲刈り機の動きがおかしい。
水抜きに失敗したのか、雨が多い天気のせいか、田んぼは泥でグチャグチャである。
稲刈り機が泥にはまって動かなくなる。
ただでさえ泥んこ祭り状態で稲刈り機は進まない。なのに、実のところ、稲刈り機のタイヤがパンクしている。しかも両輪。
言うまでもなく、タイヤが付いているということは、そのタイヤには意味がある。タイヤは稲刈り機を前に進ませるために付いているのであって、そのタイヤがパンクしていれば、タイヤは意味を成さず、稲刈り機は前には進まない。
親方の英断である。
泥んこ祭りになっていない所は親方が刈る。親方が稲刈り機を「牛」のように押して稲を刈る。泥んこ祭りの箇所は手刈りである。鎌を使って、昔ながらの稲刈りである。
僕らは泥に長靴を取られながら稲を刈る。
親方は泥の中を牛ばりに稲刈り機を押す。
なんか、これって、普通の稲刈りじゃねぇなぁ。と思ったりする。
向こうの方の畑では、コンバインを使ってすごーい勢いで稲刈りをしている人々がいる。
コンバインに乗って、田んぼの中を行き来する。コンバインが稲刈りと脱穀を自動で済まし、籾を軽トラックの荷台にドドドーっと排出する。
軽トラックは乾燥機まで走っていき、乾燥機に入れれば籾摺りと乾燥が終了。玄米の出来上がり。
これが、まぁ、現代の稲刈りの「普通」。
僕ら。
泥んこになって、稲を鎌で刈る。刈った稲を藁でしばる。藁でしばった稲をウマに掛けて干す。天日で干す。
ちっちゃな田んぼを一つ。丸一日。
やはり、天日で干したほうが、お米は美味しいそうだ。
機械の力はすごいが、人の力もすごい。
機械は人がやる仕事を瞬時に終わらせてしまってすごいが、人は、機械がやる仕事を時間をかければ終わらせられるからすごい。
どっちがすごいという話ではなく、どっちもすごい。
まぁ、とにかく、稲刈りは楽しい。
稲刈りの手伝いに呼ばれたとして。
軽トラックで、田んぼとカントリーエレベーターの往復を頼まれるよりは、鎌を持たされて稲を刈らされる方が良い。
「稲刈り」って感じがするもんね。