十二曲目。第2部の五曲目。「雨の降る街」(trash box jam, Street Againに収録)
ライブの終わり、アンコールも大詰め。ステージからは見えない入り口の扉が開いて、誰かが入って来たような気がした。あくまでも、ステージからは見えない。
「あっ、横田だ!」
そう思った。
七時スタートのライブの十時過ぎの出来事である。
ダブルアンコールの最後の曲、の半分。
僕は演奏を止めた。
演奏を止めて「横田でしょ?」と言った。
「横田くん、ここに座りなさい」と、僕の目の前の席に座らせた。
ツーコーラス目から、再び僕は歌い始めた。
変なライブ。
横田とは「アニキ」である。僕の兄さんではない。知らないうちに通称「アニキ」。
アニキは、たった半曲のために、仕事先の川越から、車をぶっ飛ばして下北沢まで来てくれたわけだ。・・・信じられないよ、僕は。
関係ないけど、数年前にアニキと再会した時、アニキはリストラされたばかりだった。うける。
リストラされたのに、次の就職先での条件は、前の職場よりも良かったらしい。
そしてつい最近、アニキの会社が廃業した。リストラではないが、状況は数年前と同じである。うける。
このまま引退してしまえばいいのに、と思っていたら、すぐに再就職先が決まった。
なんと、再就職先での条件が、また良くなるというじゃないか。
そんなことがあるのか?
さすがだよ、アニキ。
下北沢lown兄さん戻って。
アニキはたった半曲を聴くために、三千円払った。お店の人が「要らない」と言ったのに、アニキは三千円払った。
その話をお店の人から聞いて、僕は横田にお店の人から預かった三千円をアニキに返そうとしたのだが、強情アニキは頑として受け取らない。仕方がないので、三千円はお店の人に返した。
たった半曲しか聴けなかったのになぁ・・・。申し訳ないなぁ・・・。
ライブが終わって、僕は考えた。
ピーン!ひらめいた!
「なんか作ろう!」
よし、新しい会社の新しい名刺を入れる名刺入れや!レザーの名刺入れや!
そんで作った。
先日、アニキの会社へ「レザーの名刺入れ」を渡しに行った。ついでに無料でオイル交換をしてもらった。
無料でオイル交換をしてもらうついでにレザーの名刺入れを渡しに行ったように思われがちだが、それは違う。
だって、唐揚げもお土産に買って行ったから。
前置きが長くなってしまった。
曲リポは次の項へ譲るのである。
アニキ、名刺入れ、使ってくれてるかなぁ?