行きつけの寿司屋の大将に僕は言った。
「陶芸始めたよ。うまくなったら湯呑み作ってあげるよ」
寿司屋の大将はこう言った。
「どうせ飽きてすぐに辞めるよ」
なかなかの摂理である。
AB型である。12月生まれである。
熱しやすく冷めやすいのである。
すごーく急激に熱せられて、居ても立っても居られなくなり、すごーく急激に冷却されて、信じられないくらい何事もなかったかのように日々に戻るのである。いつだって。何度だって。嘘のように。嘘のように。
・・・間違いない。
それは摂理である。でも・・・よし、ならば・・・勝負ってものは、こんなところにある。
冷却装置が働き始める前に、どれだけ先へと進めるか。
大切なのはこういうことである。
己を知り、己を理解し、決して強者ではない己の道を探るのである。出来るだけ柔軟に。出来るだけ優しく。出来るだけ楽しく。出来れば、甘く芳しく。
陶芸倶楽部にて。
「さて、何を造るっかなぁ」と考える。
バターケースを造ってみよう!
丸いやつで、丸い蓋を載せるやつにしよう!
手回しろくろに粘土を載せて、グイグイ、クルクル、グイグイ、クルクルと僕は造る。
あっという間にバターケースの下の容器が出来上がった。
陶芸倶楽部がざわめき始める。
陶芸倶楽部の一同が、僕の周りに集まってくる。
「なんなの?めちゃめちゃうまいじゃん?」
「なんなの?始めたばかりって嘘でしょ?」
「ねぇ、電動ろくろで造ったみたいじゃない?」
「ねぇ、手回しろくろってそうやって使うもの?」
たまたまツルリンと綺麗に一発で出来たのだ。
がしかし、僕は家でもキッチンという名のアトリエで毎夜毎夜手回しろくろを回しているのである。
陶芸倶楽部の一同は、みなさん上手だ。ベテラン揃いだ。
電動ろくろが4台もある。自由に使える。だから、手回しろくろを電動ろくろのように使う必要は、ない。
僕は、まだ入門仕立てのルーキーだから、電動ろくろの使い方を教わってない。
だから、オークションで1300円で買った手回しろくろを、クルクルと回しているのである。
続けて、丸い蓋を造った。
本当にたまたま上手に出来た。
その日から、僕の呼び名は、「ゴールデンルーキー」に変わっとか変わっていないとか。
まぁなんにせよ、「ライオンとハチミツ」のバターケースは、すごく可愛い出来である。