嘉義の街。朝。
早起きをしてトコトコと歩く。
目当てがある。
大きなロータリーにたどり着く。
キョロキョロとあたりを見回す。
目当てがある。
「あっ、いた!」
大きなロータリーの向こう側の道端に、イスらしきものが並んでいる、ような気がする。
今朝の僕の目当ては、朝の6時からロータリーの道端にプラスチックの椅子を並べて営業しているという杏仁茶屋。
まぁ、道端というよりは、ここは道だな。
道に勝手に椅子を置いてるな。
そこに勝手に座るんだな。
椅子に座ると、目の前にいるおじさんが、寸胴に入った杏仁茶を銀色のコップに半分注ぐ。
杏仁茶を半分注いだところで、生卵をカッと割ってパッと入れて、シャシャシャと素早くかき混ぜる。
そこに、再び寸胴から杏仁茶を銀色のコップの口ギリギリまで注ぎ入れる。
そして、はい、と渡される。
僕の左手には、おじさんの後ろに立っているおばちゃんから手渡された油條という揚げパンがある。
おじさんからもらった杏仁茶に、揚げパンを浸しながら食べる。揚げパンを浸して食べながら、杏仁茶をすすりながら。
たぶん、きっと、ここが道端だからいいのだと想う。
朝の忙しい時間。行き交う人がいる。ロータリーは町の中心のようなものだ。交通量が多い。
ロータリーの杏仁茶屋にはひっきりなしに人が訪れる。
僕が読んだ本では、このお店はおばちゃんのお店のはずだ。おばちゃんは2代目であり、初代と合わせると、もうこの場所にはずーっと長い間おばちゃんズの杏仁茶屋がある。
僕に杏仁茶を淹れてくれたのはおじいだった。
おばちゃんはおじいの後ろでおじいの仕事を見守っているような・・・。
後継ぎと呼ぶには、おじいは歳を取りすぎだと思う。
なんなんだろう?
なんでおじいなんだろう?
なんでなんだろう?
おじい、君は誰なんや?
そんなことを思いながら、杏仁茶をすする朝。
これがパーフェクトな嘉義の朝食。