大切な人が突然いなくなってしまったら・・・
大切な人を突然失ってしまった人が数えきれないくらいいる。
息子の行方を日夜捜し回っているという母親に、記者が尋ねた。「息子さんの名前を教えてください」。母親は首を振って答えなかった。記者がもう一度尋ねる。母親は首を横に振りながら言った。「名前を言ったら、もう逢えない気がするから言わない」。記者は消息を掴む手がかりになると思い、質問を変える。ではお母さんの名前を教えてください。母親は両手で顔を覆いながら首を振りながら言った。「言わない。言ったら、もう逢えない気がするから」。記者はもう、何も聞けない。そして母親はまた、泣きながら瓦礫の町を歩き始めた。
家族三人で津波から逃げていた。その手には妻と子供の手があったはずなのに、想像を遥かに超える津波の力は、無情にも彼の手から妻と子をさらってしまった。一瞬の出来事だった。彼は一人生き残ってしまったことを悔いるように、その右手を見つめながら涙を拭った。しっかりと握っていたのに・・・。一瞬の出来事だった。ほんの一瞬の出来事が、家族の未来を変えてしまった。
父親の行方がわからない中学三年生の男の子。避難所で配膳の手伝いをしている。自分の父親の行方がわからないのに、しっかりと良く働く。記者が聞く。今お父さんに何を伝えたいですか?「十五年間育ててくれてありがとうと言いたいです」。独りぼっちになってしまうかもしれないのに・・・。「お父さんもどこかで、しっかり頑張ってると思います。そういう人だったから」。何もかも失ってしまったのかもしれないのに・・・強い子だ。
近い知り合いの奥さんの両親の行方が分からない。震災直後、夫婦で宮城に帰った。家は跡形も無かったらしい。奇跡的に自衛隊に救出された愛犬と出逢う。でも、両親の行方は不明のまま。美しかった街の風景は地獄に変わっていたという。行けるだけの避難所、遺体安置所を回ったが見つけられず、一度帰京。ガソリンの入手に苦労し、散々な目に遭いながらの帰路だったらしい。そして今週末、愛犬を連れて再び宮城へと向かった。せめて遺体だけでも・・・メールにはそんな文字が打ってあった。
僕にも悲しいことはある。山ほどもある。でも僕は今、人の悲しみの中を生きてるのかもしれない。
僕に出来ることはなんだろう?と考える。僕が誰かの悲しみを背負っても、それで誰かの悲しみが消えるわけじゃない。・・・僕は誰の悲しみも背負えはしない。
僕に出来ることはなんだろう?と考える。きっと山ほどもある。僕にも出来ることが、山ほどもある。
大切な人を突然失ってしまった人が数えきれないくらいいる。
息子の行方を日夜捜し回っているという母親に、記者が尋ねた。「息子さんの名前を教えてください」。母親は首を振って答えなかった。記者がもう一度尋ねる。母親は首を横に振りながら言った。「名前を言ったら、もう逢えない気がするから言わない」。記者は消息を掴む手がかりになると思い、質問を変える。ではお母さんの名前を教えてください。母親は両手で顔を覆いながら首を振りながら言った。「言わない。言ったら、もう逢えない気がするから」。記者はもう、何も聞けない。そして母親はまた、泣きながら瓦礫の町を歩き始めた。
家族三人で津波から逃げていた。その手には妻と子供の手があったはずなのに、想像を遥かに超える津波の力は、無情にも彼の手から妻と子をさらってしまった。一瞬の出来事だった。彼は一人生き残ってしまったことを悔いるように、その右手を見つめながら涙を拭った。しっかりと握っていたのに・・・。一瞬の出来事だった。ほんの一瞬の出来事が、家族の未来を変えてしまった。
父親の行方がわからない中学三年生の男の子。避難所で配膳の手伝いをしている。自分の父親の行方がわからないのに、しっかりと良く働く。記者が聞く。今お父さんに何を伝えたいですか?「十五年間育ててくれてありがとうと言いたいです」。独りぼっちになってしまうかもしれないのに・・・。「お父さんもどこかで、しっかり頑張ってると思います。そういう人だったから」。何もかも失ってしまったのかもしれないのに・・・強い子だ。
近い知り合いの奥さんの両親の行方が分からない。震災直後、夫婦で宮城に帰った。家は跡形も無かったらしい。奇跡的に自衛隊に救出された愛犬と出逢う。でも、両親の行方は不明のまま。美しかった街の風景は地獄に変わっていたという。行けるだけの避難所、遺体安置所を回ったが見つけられず、一度帰京。ガソリンの入手に苦労し、散々な目に遭いながらの帰路だったらしい。そして今週末、愛犬を連れて再び宮城へと向かった。せめて遺体だけでも・・・メールにはそんな文字が打ってあった。
僕にも悲しいことはある。山ほどもある。でも僕は今、人の悲しみの中を生きてるのかもしれない。
僕に出来ることはなんだろう?と考える。僕が誰かの悲しみを背負っても、それで誰かの悲しみが消えるわけじゃない。・・・僕は誰の悲しみも背負えはしない。
僕に出来ることはなんだろう?と考える。きっと山ほどもある。僕にも出来ることが、山ほどもある。