あと20分もしたら、船は動き出す。
船に乗った瞬間に、僕の足は北の大地から離れた。
お別れだ。
ひと月なんて、あっという間だ。
当たり前だ。ひと月なんて、あっという間だ。
瞬きをする間に通り過ぎるのが、ひと月というものだ。
嘘みたいなひと月だった。
実際、嘘だったのかもしれない。
夢のようなひと月だった。
実際、夢だったのかもしれない。
僕は、全部の瞬間、幸せだったんだよ。
信じられるかい?
僕は、少し、信じられない。
たくさんの人に出会えた。
すべての人に、ありがとうを伝えたい。
僕は幸運な旅人だ。
たくさんの人が、僕の旅を見守ってくれた。
僕の旅を見守ってくれたすべての人に、ありがとうを伝えたい。
僕が幸運な旅人でいられたのは、きっと、みんなの祈りのおかげだ。
今回は会えなかった人に、「またいつかね」と伝えたい。
きっといつか・・・会える。
もう会えなくなってしまった大切な人に、「ありがとう」と、伝えたい。
心の中で何百回も、ありがとうを唱える。
僕の大切な場所。
僕の大切な空と風。
僕の大切な道。
僕の大切なアイスクリーム。
「またね」と、僕は手を振る。
北の大地は答えない。
北の大地の向こう側に、たくさんの笑顔と優しさが見える。
どうもありがとう。
こんな僕を、優しく包み込んでくれてありがとう。
感謝します。
さらば、北の大地。
さらば、北の大地の人。
ははは。大袈裟かな?
ははは。大袈裟だね。
でも、僕は、本当に、毎日、そんな風に思いながら、過ごしていたんだよ。
もしかしたら、それが僕の「成長」なのかもしれない。
さぁ、船が動き出した。
出航だ。
みんな、どうもありがとう。