ここに紹介する『ケインズ説得論集』は昨年(2010年)4月20日に改めて翻訳出版された、英国の経済学者ケインズの著書(論文集)です。
インフレについての書物は多々ありますが、このケインズの論文はインフレに止まらず、デフレについても記述した、希少なものです。
わが国の政治家や官僚、財界人に是非読んでもらいたい一冊だと思います。
書名:ケインズ説得論集
著者:J.M.ケインズ
訳者:山岡洋一
発行所:日本経済新聞出版社
わが国経済は、1990年前後の「不動産バブル」崩壊に端を発した「失われた10年」から脱却することなく、その後迎えた米国のサブプライムローンのデフォルト、リーマン・ショックそしてギリシャの財政破綻等の影響により、失われた20年を形成、「30年不況」へと向かっているかのように思われます。
この景況をわが国政府はなかなかデフレーションであると素直に認めたがらない体質のようです。
ケインズの国内の景況改善への提言はとてもシンプルで本質をついています。
現在のわが国の状況を見通しているかの如き提言だと思います。
提言の一つに、1931年1月のラジオでの講演でなされたものがとても印象的です。
「(貯蓄の増加は)失業を増やすだけになります。労働者が失業すれば、その人は購買力が低下します。それまでに買っていた商品が買えなくなり、その商品の生産にあたっていた労働者の間で、さらに失業が増えることになります。(中略)ものを買えば雇用が増えます。もっとも、イギリス製の商品を買わなければなりません。国内の雇用を増やすには、国内で生産された商品を買わなければなりません。」
これを現在のわが国に置き換えると次のようになるのではないでしょうか。
○資本財を多く有する人や組織による無闇な貯蓄、内部留保は失業を増やす。
○国内で生産された製品を購入すれば、雇用とGDPが増加する。
○GDPが増加すれば、税率Upをしなくても財政再建が可能。
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