1991年(平成3年)3月に始まり、1993年(平成5年)10月までの景気後退期がバブル経済崩壊期間とされています。
それに続き、不況期(政府・与党は『低成長期』と言いたいようですが・・・)が始まり、1997年(平成9年)9月24日に不正が発覚した山一證券が11月24日に自主廃業、それに先立つこと10日前、11月15日土曜日に、山一證券に最後まで資金供給していた北海道拓殖銀行が経営破綻しました。正に「金融ビッグバン(東京ビッグバン)」、金融恐慌の到来であり、その後のデフレの深化が始まったと言えるでしょう。
書名:どうなる金融ビッグバン〔単行本〕
編者:日本経済新聞社
発行所:日本経済新聞社
初版発行日:1997年(平成9年)3月14日
(BOOKデータベース)
優勝劣敗の大競争が始まる!
------ 外為法改正、業務の垣根撤廃、証券・保険の自由化、時価会計導入、銀・大蔵改革 ------
2001年に向けた金融大改革がいま動き出す。生き残りをかけたホットな動きをいち早く紹介。
こういった経済情勢下、この「デフレ不況」から生じた所謂『失われた20年』(私は『失われた30年』説をとているのですが)、日本は何を失ったのでしょうか。
2003年に経済アナリストで獨協大学経済学部教授の森永卓郎氏が『年収300万円時代を生き抜く経済学』を出版。その際、「そんな世界はあり得ない」と言ったような批判の声も多くあったようです。
書名:年収300万円時代を生き抜く経済学〔単行本〕
~給料半減が現実化する社会で「豊かな」ライフスタイルを確立する!~
著者: 森永 卓郎
発行所:株式会社光文社
初版発行日:2003年(平成15年)2月25日
(BOOKデータベース)
小泉構造改革の本質とは何か、新たな階級社会を作るための仕掛けはどのようなものか、なぜその仕掛けの本質が国民には理解できないのか、新たな階級社会とは一体どのようなものなのか。そして、会社のあり方、サラリーマンの仕事の仕方も変わっていかざるをえない社会のなかで、一般国民はどのように生き抜いていけばよいのか。本書では「新たな階級社会」をキーワードに、日本の経済社会が向かっていく将来と、その社会で求められる働き方や生活のヒントを描いていく。
この『失われた30年』の間が就活時期となった若者の多くは、正社員としての就業が困難であり、これを諦め、パートタイマーという非正規社員としての就業を余儀なくされています。それでも就業先があればいい方で、ともすれば否応なしにフリーターとしての生活を送らざるを得ない人が多く存在しています。就業者を採用する会社は、正社員は大学新卒者に限る傾向が強く、一旦非正規社員として就業すると、正社員としての中途採用は難しくなっているようです。政府や社会はこういった現象に対して何らの策も施さずに、これらの人を置き去りにしています。そして、失業率算定に落とし穴があることを承知のうえで、否応なしにパートタイマーとして非正規社員であることに甘んじるしかない人を含めて「失業率は改善している。」との手前勝手な理屈を捏ねて安堵しているようです。「失業率は改善している。」との考えが、民間給与に与えるマイナス効果となっていることは否めません。
直近の国税庁の民間給与実態統計調査を見ても分かるように、日本の所得階層で一番多いのは、年収「300万円超400万円以下」なのです。次に多いのがほぼ同数で「200万円超300万円以下」となっています。
年収の中心は氏の予言通り、まさに300万円台になっているのです。
上のグラフは2000年度から2015年度の労働分配率と企業の内部留保額の推移を表したものです。
労働分配率を少し追ってみると、2001年度は74.2%、そこから減少を始め、その後復活して2009年度は74.1%となったものの、再度減少して2015年度は66.1%となってしまいました。
そして、今年度、2017年4月~6月において43%台となり、1960年度よりも低い水準となってしまいました。
一方、日本企業の動きとしては、労働分配率で分かるように、正社員の採用と給与の増加を極力抑え、内部留保に努めた結果、これが大量に溜め込まれ、資産価値が高まっています。当然の結果として株価が上がっています。
この状況の何が問題なのか。それは、第2次・第3次安倍政権〔2012年(平成24年)12月26日~2014年(平成26年)12月24日・2014年(平成26年)12月24日~2017年(平成29年)11月1日〕の約5年間で実質賃金は3%下がっているということです。
これは、新規正社員の採用減も含め、働く人の給料を抑えて、利益の内部留保を膨らませているに過ぎない結果です。というのも、役員報酬は今、ほとんどの企業で、利益連動報酬とストックオプション(株式購入権)が中心となっています。役員報酬を維持し、或いは増やすには企業の利益を増やし、株価を上げることが大事なのです。
経営陣は従業員の給料を引き上げようとは考えないのです。
足元は株高基調です。都心部は明らかに不動産バブル状態です。不動産投資家が痛手を被ると、彼らは手持ちの株を売り、損失の穴埋めに走ります。すると、株価にも売り圧力がかかり、下落することになります。
一方、2017年11月20日現在、政府は、安倍首相が掲げる「生産性革命」を進めるため、賃上げや設備投資を行う企業の税負担を軽くする優遇措置を検討しているとのことです。
法人実効税率は現在29.97%ですが、3%以上の賃上げや、設備投資を実現した企業の税負担を25%程度に引き下げ、より積極的に設備投資などを行った企業には、税負担を25%程度よりも低く引き下げる「2段階の優遇措置」が検討されているようです。
更に、消極的な企業に対しては、税制の優遇措置縮小も検討されているとのことです。
政府は、2018年度税制改正に向けて、今後、与党と調整に入るようです。
多分、この措置による税収減少分については、消費税率の引き上げによって賄おうという魂胆だと思います。何せ一般個人には強く、経団連や経済同友会に弱い政府・与党なのだから…。
≪参考;1995年~2003年度までに破綻した銀行等≫
1995年 兵庫銀行
1996年 住宅金融専門会社 太平洋銀行 阪和銀行
1997年 京都共栄銀行 三洋証券 北海道拓殖銀行 山一證券 徳陽シティ銀行
1998年 みどり銀行 福徳銀行 なにわ銀行 日本長期信用銀行 日本債券信用銀行
1999年 国民銀行 幸福銀行 東京相和銀行 なみはや銀行 新潟中央銀行
2000年 石川銀行
2002年 中部銀行
2003年 足利銀行
≪参考;現在の求人倍率と失業率…時事通信ヘッドラインより≫
求人倍率、1.55倍に上昇=失業率は2.8%―10月 12/1(金) 8:42配信
厚生労働省が1日発表した10月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.03ポイント上昇の1.55倍となり、4カ月ぶりに上昇した。1974年1月以来、43年9カ月ぶりの高水準。景気のゆるやかな回復を背景に、製造業を中心に幅広い産業で求人が増えたことが寄与した。
↑ここに問題アリ!(求人の内容は?=実行において、賃金の低い外国人で“良し”としていないか?)
総務省が同日発表した労働力調査によると、10月の完全失業率(同)は2.8%で、5カ月連続で同水準だった
↑ここに問題アリ!(完全失業率の算定基準は“世の中の状態”を反映しているか?)
↑(『仕方なくパートタイマー』も就業者に含んでしまっているよね!)
【関係サイト】
○ 国税庁 民間給与実態統計調査-長期時系列データ
○ 国税庁 民間給与実態統計調査-給与階級別給与所得者数・構成比