白雲去来

蜷川正大の日々是口実

野火赤く 人渾身の悩みあり。

2024-09-26 18:30:36 | 日記

9月24日(火)曇り。

夜中に、あんまり寒くて目が覚めた。一瞬、クーラーの温度設定を間違えたのかと思ったら、消してある。いきなり真夏から晩秋になった。慌てて、タンスからトレーナーを出して着て寝たが、まだ寒い。掛け布団は納戸だし、参ったなぁ―。体がついて行かない。

食欲がなく、朝食は抜いて愚妻を誘って「ココ壱」にてご飯少なめのクリームコロッケカレー。食後は事務所へ。先日、三島由紀夫のファンだという弁護士先生と飲んだので、三島先生の「憂国」の書(洛風書房作のコピー)があるので贈呈しようかと思って探したが、何処にしまったのか失念し、次回にした。

たまに野村先生の千葉時代の『獄中日記』(弊社刊)を読むときがある。以前先生に聞いた話だが、河野一郎邸焼失事件にて12年を千葉刑務所にて過ごした。その時に、人間関係などに悩み、幾度か「死」を考えたことがあったそうだ。座禅を修行の一つとしていた先生は、そんなときに受けた天啓の一つに「死ぬべき時に死ねない奴はだめだが、死ぬべきでない時に死ぬ奴はもっと駄目だ」と言うことであったそうだ。その時に作った句が「この雪の打擲 耐へて耐へてゆく」。私は、その句を読むたびに若かりし頃の先生の耐えた苦悩の重さと深さに思いを馳せ、身が引き締まる思いがする。

生活苦、人間関係、大病に直面している人たちがいる。浪人の身ゆえ何も力になれないことを恥ずかしくも思うが、皆、「渾身の悩み」に耐えて生きている。そして先生の「死ぬべき時に死ねない奴は駄目だが、死ぬべきでない時に死ぬ奴はもっと駄目だ」という言葉が脳裏に浮かぶ。

昨日、先生の墓前にて手を合わせた。祈ったのは、渾身の悩みに直面している、友人、後輩に力を与えて下さいと言うこと。※写真は、平成5年8月、先生の自決2カ月前、最後の旅となったカサブランカにて。


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