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白雲去来

蜷川正大の日々是口実

黒は男用で、赤は女用?

2014-09-21 15:56:45 | インポート

九月十八日(木)曇り。

社会評論家で、各年のすぐれたノンフィクション作品を表彰する文学賞の名前にもなっている大宅壮一氏は酒は全く飲めない、いわゆる下戸であった。昭和三十年代の後半。大宅壮一氏が主宰する「ノンフィクション・クラブ」と言うものがあり、そのメンバーで信州へ旅行した折の話。新宿駅で中央線の下り列車に乗る際に、ある出版社の編集長が桐の箱に入ったウイスキーを差し入れしてくれた。

宿に着いてくつろいでいると、大宅氏が草柳大蔵氏らに「さっき貰った箱入りのウイスキーを開けての飲めよ」と言うので、箱を開けてみると、何と黒と赤のジョニーウォーカーが入っていた。珍しそうに見ていた大宅氏が「おい、何で同じウイスキーなのに黒と赤の瓶が入っているんだ?」。すると草柳大蔵氏は「大宅さん、黒と赤とがどう違うのか知らないのですか」と言って大宅氏にこう説明をする。

「黒は男が飲むウイスキーで、赤は女性用ですよ。俺達は男だから黒を頂きます」といってちゃっかり高い「ジョニ黒」を飲んだそうだ。それでも一本では足りずに「女性用」も空にしてしまった。鷹揚な大宅氏は、「いいよ。女房にはおれが買って帰るから」。後日、草柳氏が奥方とお会いした時に、「大宅から旅館での一件を伺ったは。真面目な顔をして話すからおかしかった。でも無知なお年寄りをあまりからかわないでね」とたしなめられたそうだ。(「『酒』と作家たち」浦西和彦編・中公文庫)より。

若い人には考えられないだろうが。昭和四十年代では、ジョニ黒は一万円近くもしていた。当時の一万円である。友だちの家に行くと、友人の父親が、観音開きのサイドボードから、ジョニ黒を取り出して、うんと値打ちをつけられて、一杯だけご馳走になったものだ。まだウイスキーの水割りは普及していなくて、大体、ロックかストレート、もしくはソーダー割のハイボールかウイスキーサワーというカクテルにして飲むのが一般的だった。

夜は、憂国の実業家、松本洋三氏のお誘いで関内の松本氏の定宿の「舎利膳」という寿司屋に招待される。ここのオーナーは高校の後輩である。かねてから松本氏よりお聞きしており、電話では話をしたことがあったが、お会いするのは初めてである。上品な刺身を肴にワインを二本ほど頂いた。美味い肴と人間味に酔った。その後、一件転戦して帰宅。

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