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解ってたまるか!

2007年06月03日 20時50分48秒 | 観劇

自由劇場での『解ってたまるか!』を、観てきました。
この芝居、昭和43年に起きた事件をモデルに、福田恆存氏が書き下ろした作品だそうです。
ライフル魔が人を殺し、人質を取りホテルに立て籠もった状態で、ストーリーが展開してきます。
自身の犯行を、被害者の状況を逆手に取り自身の正当性を主張し始め、マスコミもそれに反応し始める。
ライフル魔に気に入られ、そこしでも独自の特ダネが欲しいマスコミは、差し入れをしながら機嫌をとったり、人質もいつしか被害者と言うよりは同士のような感情をも持ち始める。
そんな様子が、笑いを起こしながら演じられていきます。
文化人と呼ばれる人達が、それぞれの立場でライフル魔に対して話しかけるものの、ことごとく反駁され沈黙してしまう。
そんななか人質の一人がダイナマイトを手に取りライフル魔と対峙するが、原爆を持っているというライフル魔に屈してしまうことに。
ライフル魔は、これをきっかけに人質を解放し、1人きりに。
捜査本部には残された警官達と、解放された人質と文化人が。
そこに、ゆっくりとした足音と共に、原爆を首から提げたライフル魔が現れる。
右足に仕掛けたスイッチを踏むと、原爆のスイッチが入るというもの。
文化人たちが再びライフル的の対話をし、ライフル魔に対して『解る!』という言葉を発する。
しかし、さも自分の心情を察したかのような発言を繰り返す文化人に対して、『俺の気持ちが解ってたまるか!』と言い放ち、30分以内に全員が逃げるように言い放つ。
1人残ったライフル魔は朝焼けの屋上で、人のいない静けさを感じ、陽の光を受け、自分が求めていたものは・・・。
自らを撃ち、息絶える。
笑える場面は多かったものの、先日の名古屋での事件のイメージが残っていたためか、何かスッキリしないものが残った気がします。
怒りや悲しみのとき、周囲の人間が自分の気持ちに共感をして『解る』という表現をしてくれるものの、果たしてその人達は私の何を解っているのかのいう疑問を感じることが。
人が何かの出来事を受け入れるとき、少ない情報から得たイメージに大きく左右されている様子と、状況を受け入れられず慌てふためく人間が勝手に理解した振りをしている様を描いた芝居は皮肉がたっぷりと込められていると感じます。
芝居中はしばしば笑い声が聞こえたにもかかわらず、劇場を後にする観客たちが異常なほどに無口で静かに退場していく様子が不思議でした。
カーテンコールでは、何度も登場してくれた笑顔の加藤さんが印象的でした。
私は加藤さんを観るのは、コンタクトのマイケル・ワイリー役に次いで2度目です。
コンタクトのダンスのイメージとは違い、役者としての姿もなかなかのものです。