昭和の歴史三部作の最後の作品、南十字星が初日を迎えました。
梅雨明けを思わせるような午後の暑さに、信号待ちをしていたら「ジャカルタの暑さってこれくらいかな?」なんて声を何度か聞きました。
この人達、南十字星を観に行かれる方達でしょうか?
劇場内は、招待客もかなり多いようです。
招待者用の受付の様子を見ていると、先日のキャッツ7000回を思い出します。
私の後ろ2列くらいが招待者用の席だったのか、御大が足を運び挨拶を交わしていらっしゃいました。
舞台はインドネシアの農村でしょうか、女性達の静かな振る舞いから始まります。
お香の香りでしょうか、ほのかに甘い香りが広がり、農耕の光景が印象的です。
場面が転換し、京を思い起こさせる背景に保科とリナの姿が。
阿久津さんの演じる保科勲は、黒の詰め襟を着た長身の姿は、とても印象的です。
絣の着物を纏ったリナの姿もまた、印象的です。
戦いを進める上での石油確保のためにインドネシアに進出する日本と、オランダからの解放と独立を望むインドネシア。
双方の思いは結びつき、一時は良い関係が続くものの、やがては日本との力関係のバランスが崩れてくると民族の感情は変わっていきます。
1幕は、それでも日本軍とインドネシアの人々とのバランスが、ギリギリのところで保たれています。
ガムランの演奏や舞を観ていると、自分が劇場内にいることを忘れてしまいそうです。
舞台の演出の中でも、タイトルにもなっている南十字星が表現されている夜空がとても美しく描かれています。
支配する側と、支配される側。
力関係のバランスが変わると、人の感情も大きく変化します。
インドネシアを支配していたオランダ人たちが日本軍に拘束されたとき、彼らが受けた待遇に対して感情を露わにします。
行き場のなくなった感情は、唯一記憶に残ったホシナへの憎しみとなっていくことに恐怖を感じます。
その名忘れまじのシーンは、ジーザスクライスト=スーパースターでの鞭打ちのシーンを思い出させます。
李香蘭と同様に、空襲や原爆投下のシーンが映され、日本敗戦が伝えられます。
戦争という極限状態の中でも、人は自身の大切な人の無事を祈る気持ちは変わらぬもの。
しかし、起きてしまったことを収束させるために、さらなる犠牲となる人間がいるということも悲しい事実です。
戦犯として収監され、刑の執行を待つ島村中将と保科。
島村中将が語る、起きてしまった戦争に対する感情の収束をさせるため、そして日本を守るために刑の執行を待つということ。
耳を傾ける、保科の姿。
思わず、涙が落ちてきます。
愛する保科に会うために監獄に忍び込んだ、リナと保科の会話。
時の流れという川の中、自身がその流れのひとしずくとして身を任せていくことを告げるシーンも涙が止まりません。
リナが歌ったブンガワン・ソロの歌が、ようやく理解できた気がします。
保科が最期に、未来の若者へ語りかけるシーン。
刑が執行された後、保科が1冊の本の片隅に遺書として書き記した内容を姉の春子が読み上げるシーンも切なくてやり切れない思いが残ります。
今もどこかで規模の違いはあれど、同じような思いをしている人間がいるかと思うと辛いです。
カーテンコールは、ガムランの演奏とともに舞踏がはじまり、一瞬まだ舞台が続いているのかとさえ思える中で始まりました。
客席の声援に応えながら、最後は阿久津さんからのご挨拶が。
最初はこの三部作最後の舞台についてかと思ったら、明日14日に迎える劇団55周年の挨拶でした。
南十字星の輝く舞台を樋口さんと阿久津さんがはけていく姿も、印象的でした。
今回、役者の表情を観たくて前方の席を取りましたが、美しい舞台演出を観るために、もう一度2階席最前列あたりで観てみたいです。
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保科 勲 | 阿久津陽一郎 |
リナ・ニングラッド | 樋口麻美 |
島村中将 | 田代隆秀 |
原田大尉 | 鈴木 周 |
塚本少尉 | 池田英治 |
ニングラット博士 | 武見龍麿 |
ルアット・ニングラット | 内田 圭 |
ニルワン | 藤川和彦 |
キキ | 山中由貴 |
オットー・ウインクラー | 吉賀陶馬ワイス |
原田春子 | 都築香弥子 |
岡野教授 | 維田修二 |
【男性アンサンブル】 | 中村 匠 |
井上隆司 | |
朝隈濯朗 | |
片山崇志 | |
川原信弘 | |
染谷 裕 | |
田井 啓 | |
渡邊今人 | |
松本和宣 | |
西村侑剛 | |
山本伸夫 | |
安東 翼 | |
畑野年孝 | |
辻中 武 | |
【女性アンサンブル】 | 小松陽子 |
佐和由梨 | |
藤田晶子 | |
井藤湊香 | |
杏 奈 | |
倉斗絢子 | |
佐伯真由子 | |
有美ミシェール | |
梅崎友里絵 | |
小澤真琴 | |
宝生 慧 | |
チェ ウンヘ | |
ジョン ソンジ | |
ジョン ジヨン | |
金 慈英 | |
牧野友紀 | |
オーケストラ指揮 | 平田英夫 |