THE WOMAN IN BLACK、黒い服の女って?
昨年秋、青山劇場で笹本玲奈さんのウーマン・イン・ホワイトとというミュージカルがあり、内容的にはミステリーものだったと記憶しています。
この舞台のタイトルを見たとき、この作品も似たような作品かと思っていました。
劇場に着いてみると、ロビーには大量の花。
それでも、出演する役者は、斎藤晴彦さんと上川隆也さんの2人だけ。
正確には、もう1人。
客席に入ると、椅子と籐のキャビネット、上手には大きな扉が印象的な建物。
非常にシンプルなセットです。
舞台上の斎藤さん演じるアーサー・キップスが消え入りそうな声で手にした書を読み上げるシーンから、ストーリーは始まります。
あまりに小声で聞き取りにくい台詞に、私自身がダメ出しをしたくなったとき、上手の客席から声がかかります。
上川さん演じる舞台俳優からの、ダメ出しです。
アーサーは過去に経験した恐ろしい体験を家族に伝えることにより、その時の悪夢から解き放たれることを望み、思案の末に俳優に依頼をして朗読の指導を受けていました。
しかし、いっこうに進歩しないアーサーに、俳優は一つの提案をしました。
俳優自身がアーサーを演じ、アーサーは彼に関わった人々を演じるというものです。
かくしてアーサーの悪夢の体験が、舞台上で始まるのです。
悪夢の体験とは、弁護士事務所の顧客であるドラブロウ夫人の死にともない、遺産整理のため北イングランドの田舎町へ赴きます。
町の誰とも交流を持たなかった夫人が住んでいたのは、潮が引いたときにしか現れない道を進んだ場所。
地元の人々はドラブロウ夫人の名を聞くと、不自然な態度を見せます。
理由のわからないアーサーは、ある時黒い服に身を包んだ女性を目撃します。
職務を進めるため館に滞在し、書類の山を整理しているアーサーに、不思議なことが起こり始めます。
やがて口を閉ざしていた町の人間から、ドラブロウ夫人に関するある話を聞き出します。
それは、ある不幸な出来事が語られました。
恐怖に打ち勝つために借りたスパイダーという犬と共に館に残るアーサーに、さらに不思議な出来事が続きます。
館の中に響き渡る、ロッキングチェアの揺れる音。
流砂に呑み込まれ、死にかけるスパイダー。
まるで少し前まで使われていたかのような、子供部屋。
そして、音もなく現れ、消え去るように姿を消す、黒い服に身を包んだ女性。
アーサーを演じている俳優の演技はともかく、素人のアーサーのぎこちなさは簡単に取れるものではないはず。
しかし、物語が進むにつれて、何かに取り憑かれたかのように迫真の演技となっていきます。
2人だけの芝居ゆえ、シーンごとに次から次へと衣装を替え、多くの人間を演じ分けていきます。
冒頭の自信のない中年男の姿はなく、俳優以上ともいえる演技を見せます。
俳優はアーサーを演じるうちに、アーサーと同じ体験をしているかのようです。
汗をかき熱演を続ける上川さんの汗が、ストーリーが進むにつれ恐怖体験の脂汗のようにも見えてきます。
シンプルなセット。
籐のキャビネットが、テーブル、馬車、書類の保管箱、ベットと、様々なものに変わっていきます。
ステージの奥、白い布で表現された墓標は、いつの間にか子供部屋へと変わります。
さらにその奥には、長い階段が。
きわめてシンプルなセットにもかかわらず、役者の迫真の演技がその場の光景を意識の中に繰り広げてくれます。
ストーリーは進み、アーサーは町の人から聞かされた黒い服に身を包まれた女の秘密を聞かされます。
なぜ、町の人間が頑なに女の話に口を閉ざすのかが。
職務を全うしたアーサーは、後に恋人とを結ばれ、男の子に恵まれます。
街の公園で妻と息子と幸福な時を過ごしているとき、アーサーは再び黒い服の女を目にします。
その時、町の人間が口にした女の秘密が頭を過ぎります。
その時、妻と子に恐ろしいことが・・・。
思わず、鳥肌が立ちます。
ここで、アーサーの悪夢の体験の物語は終わります。
晴れやかな顔で、恐ろしい体験を振り払うことができそうだと語りながら俳優に感謝するアーサーに、俳優もホッとした表情で応えます。
その時、アーサーの口から出た一言。
私たち以外にもう1人いた役者は、いつ参加したのかというもの。
もう1人の役者とは、あの黒い服の女です。
役者の熱演にぐいぐい引き込まれていく舞台で、とても楽しめました。
リーフレットにはゴシックホラーと記されていましたが、イギリスで1987年に初演が行われ。
フォーチューンシアターでは、89年から現在までロングラン公演が続いている人気作品だそうです。
カーテンコールは、斎藤さんと上川さんの笑顔が印象的でした。
あっ、2人きりのカテコのはずでしたが、舞台奥の階段に黒い服の女が見えたのは、私だけではなかったようです。
<style> &lt;!--table {} .font5 {color:windowtext; font-size:6.0pt; font-weight:400; font-style:normal; text-decoration:none; amp;quot;MS Pゴシック&quot;;} .style0 {text-align:general; vertical-align:bottom; white-space:nowrap; color:windowtext; font-size:11.0pt; font-weight:400; font-style:normal; text-decoration:none; amp;quot;MS Pゴシック&quot;; border:none;} td {padding-top:1px; padding-right:1px; padding-left:1px; color:windowtext; font-size:11.0pt; font-weight:400; font-style:normal; text-decoration:none; amp;quot;MS Pゴシック&quot;; text-align:general; vertical-align:bottom; border:none; white-space:nowrap;} .xl24 {color:white; font-size:9.0pt;} .xl25 {color:white; font-size:9.0pt; text-align:left;} ruby {ruby-align:left;} rt {color:windowtext; font-size:6.0pt; font-weight:400; font-style:normal; text-decoration:none; amp;quot;MS Pゴシック&quot;; display:none;} --&gt; </style>
PARCO劇場 | 2008年8月8日 |
俳優 | 上川隆也 |
アーサー・キップス | 斎藤晴彦 |