残り1ヶ月を切ったアイーダの、バックステージツアーに参加してきました。
劇場に入り、客席を見ていると、バックステージツアーの案内を手にした方が目につきました。
終演後のロビーは参加者で溢れ、相当の人数がいる事が解りました。
およそ1時間の予定のイベントは15分ほど遅れて、17時頃にスタートしました。
客席を見回すと、さすがに2階席にはいないものの、ほぼ1階席を埋める440人ほどの参加者がいたそうです。
結局、人数が多すぎて15班になってしまったために、急遽班割りを11班に変更してのバックステージツアーとなりました。
班分けの説明が終わると、舞台監督の東さんの登場で、イベント開始です。
まずは、アイーダの舞台転換、照明、音響等の説明が行われました。
まずは、開演前の緞帳の説明から。
ホルスの目が描かれた緞帳は、1枚の幕ではなく、紗幕と黒い緞帳、の3枚で構成されています。
紗幕に描かれたシルバーで描かれたホルスの目に、プロジェクターで同じ絵柄を投影しているそうです。
さらに、紗幕の後ろにはボケ足が描かれた黒い緞帳が奇麗に重なっているため、立体感が出ているそうです。
その後ろには、3番目の緞帳として両袖から開閉する様に設置され、1枚目・2枚目と同じ速度で開いているそうです。
次に、照明チーフの宇都さんからムービングライトの説明がありました。
53灯のムービングライトで、様々な効果を演出しているそうです。
2幕ラストでアイーダとラダメスが墓に入るシーンで、2人を追いながら1つに集まる様子は、ムービングライトの見せ場所だそうです。
もう一つ、ホリゾント(背景の白い幕)の裏には、215台の照明機材を配置して、高い表現をしているそうです。
アイーダで印象的な美しいグラデーションは、これらの機材を駆使したものだそうです。
照明スタッフの4名は、全て女性だそうです。
次に、舞台装置の転換シーン説明に移ります。
まずは、博物館のシーン。
一番客席寄りのショーケースと、舞台奥に何やら煙突のような装置が出現しました。
次に墓を始めとしたショーケースが、現れます。
ショーケースは基本的にコンピュータ制御で、ワイヤーによって移動するそうです。
ただし、一つのラインには1基しかワイヤーに固定できないため、複数ある場合は人間が移動します。
袖に戻す時にはスタッフが舞台上に出られないため、あるもので袖に引き寄せていました。
どのショーケースで、どのように引き戻すかは、実際の舞台で確かめてください。(笑)
この後、博物館の白い壁が天井から降りてきます。
博物館のイメージは、NYのメトロポリタン博物館をイメージしているそうです。
展示物は、全てアイーダの登場シーンをイメージしていて、見学者達は前世で展示物と重なっているという思い出演じているそうです。
ここで、ホルスの目が開いた時に出現する、炎についての説明がありました。
炎は、布を風で揺らし、照明で炎に見せているそうです。
さらに煙突のような装置で煙を出して、リアルさを表現しているそうです。
次は、博物館からラダメスの船への場面転換を、音楽を入れて紹介してくれました。
俳優が不在のため、ほのかさんの歌声が、録音が流されていました。
監督がアムネリスの立ち位置で、ムービングライトの効果を説明してくれました。
ラダメスの船のセットが降りてきて、音響について市川さんから説明がありました。
大阪初演に際して、都内のスタジオで日本人ミュージシャンによって録音されたものだそうです。
その音源を、音響オペレータが、11トラックの音源をコントロールしているそうです。
実際に、勝利ほほえむの後半パートで、ピアノを始めとして一つ一つのトラックを順次重ねながら、説明をしてくれました。
ラダメスの奴隷船から、ラダメスの船室への転換のシーンの説明です。
コンピュータでコントロールされているものと、スタッフが人力で操作しているものの紹介です。
このときアイーダに捕らえられた兵士1の役を参加者に演じてもらい、「川へ投げ込め!」の台詞を参加者、「俺に良い考えがある!」を監督が。
これをキューに、場面が転換しました。
船の帆が上がると共に、舞台奥に椰子の木のシルエットが降り、シルエットの上下で美しいグラデーションが表現されており、これも先に紹介された照明の効果だそうです。
ちなみに、上手から出てくるタラップはスタッフが手動で移動していました。
情報が多く、メモを取るのに必至でした。(汗)
以上で監督による解説が終わり、班毎に別れての見学となりました。
見学者のアテンドは、今日の舞台に出演された役者さん達が担当されました。
司会役は、田井 啓さん。
吉賀陶馬ワイスさん、駅田郁美さん、河野駿介さん、大村奈緒さん、深堀拓也さん、上條奈々さん、中村 巌さん、小笠真紀さん、田中廣臣さんが登場されました。
田井さんと田中さん以外の9名の方が、実際に参加者をアテンドされました。
自分たちの番が回ってくるまでの時間は、各班を担当した役者さんが色々声をかけてくれていました。
私の班は、大村奈緒さんでした。
実際に舞台に上がると、以前「夏」劇場の内覧会での舞台を思い出しました。
床に刻まれたセット移動用の溝やワイヤー、スモークが出てくる小さな穴、床に仕込んだ照明等の奥に、ベニヤで出来た舞台のベースが見えていました。
それを見ていると、実際のアイーダの床も厚さ15cm程のパーツとして組まれている様子がよく解りました。
椰子の木のシルエットも、実際にはホリゾントのかなり手前にあることも意外でした。
上手側袖には、小道具類が整然と並べられています。
小道具には、きちんと「○の○○」と明記されています。
裏切り者を暗殺する短剣や、アイーダがアムネリスの髪を梳かすブラシなどが目につきます。
アモナスロが脱出する船も、内部がよく解りました。
川での洗濯のシーンで使う籠は、大きさや重さが異なり、結構重いそうです。
アムネリスの鬘や衣装を変える小部屋があり、床山さんからの説明で鬘は7種類あるそうです。
三つ編みが取り外せたりして、手間は以外とかからないそうです。
ファラオの玉座やアムネリスが座るセットは、アルミのベースに板を貼って作られているそうです。
市場のシーンで大村さんが運んでいる瓶には、本物のお米が入っていました。
ホリゾント裏には、化粧台が並び短い時間でメイク替えを行っているそうです。
女性陣はラメ入りの口紅を落とす際、ガムテープを使っている方もいるそうです。
ガムテープは荒れたりするので、大変だそうです。
鏡の脇には、メイクのイメージが描かれた写真が貼ってあったりします。
ちなみに、大村さんのメイクセットが置かれていました。
床山さんは4名で、皆さんの鬘をアシストしているそうです。
鬘は、全てピン留めだそうです。
鬘は全て一つずつ編み方や飾りが異なるそうです。
ヌビア人の鬘は囚人のため、整え過ぎず、荒れ過ぎずの状態を作るのが基本だそうです。
アイーダの様に密に編む混まれた三つ編みは、崩れ難いそうです。
本番使用の鬘は、38枚だそうです。
人毛を使っているため、定期的にシャンプーやリンスでメンテしているそうです。
ラダメスがアイーダとの婚約の後、「~苦難乗り越え、勝利めざして!」と歌いながら投げつける盃。
派手に投げつけ、大きな音を立てていますが、この音を出す仕掛けが盃にありました。
下手袖側に回ると、アイーダとラダメスが入れられる墓があり、客席からは解らなかった仕掛けがあるのが解りました。
客席の緞帳の閉じ方と同様の効果を出すための仕掛けですが、どんなものかは実際の舞台で確認をしてみてください。
博物館に展示された墓と、アイーダ達が入る墓は、同じものでした。
下手側の壁面には、吊りものを操作するロープが並んでいました。
アムネリスのファッションショーで使用する壁面は、1.2tくらいの重量があるそうです。
30本の吊りもののうち19本がコンピュータコントロールで、残り11本はスタッフが操作しているそうです。
最後に舞台監督が使用するブースを見ていたら、小型の双眼鏡を見付けました。
以前、テレビ朝日がSong & Dance関連の番組を放送していた時にも紹介をしていたのを思い出しました。
この双眼鏡は、舞台上の異物をチェックするのに使用するそうです。
セットからの落下物などがあると、役者に危険が及んだりするためです。
また、舞台監督は実際の進行に合わせてギャラリーと呼ばれる天井の部分(キャットウォーク?)から、状況確認をされたりするそうです。
ミストの音が耳につくのでスタッフに伺った所、スパのシーンでは実際にミスト(水)が出ているそうです。
これで、私たち4班の見学は終了しました。
もう少し時間があれば、もっと色々質問をしたかったな・・・。
この後は、残りの参加者が席に戻るまでの間、参加者からの質問に答えてくれました。
多くの質問がでましたが、その中で印象に残ったものを。
「汗でメイクが崩れませんか?」
この時期は、大変だそうです。
田井さんによると、動いている時は良いのですが、動きが止まると汗が噴き出して大変だそうです。
「早替えについて」
早替えが多いため、各人それぞれ工夫をしているそうです。
ズボン等は履き易い様な形状にして、置かれていたりするそうです。
「舞台を支えるスタッフは?」
役者よりも多い、総勢26名のスタッフが支えているそうです。
役者は、23名です。
「スパのセットで座っている女性がの後ろ姿が気になります。顔はあるのか?」
誰が演じているのか笑いを取っていましたが、7mの奥行きに30本の吊りものがあるため、耳の辺りまでしかないそうです。
正面からは、ちょっと怖いそうです。(笑)
参考までに、「夏」劇場の吊りもの(バトン)の幅は、150mmだそうです。(内覧会より)
「台詞について」
長い台詞の覚え方についての質問でしたが、田中さんから日本語の発音の難しさの説明と、ワイスさんがアイーダの呼び方の違いが紹介されました。
状況により、「アイーダ様」「王女様」「アイーダ」の使い分けを覚えるのが、大変だったそうです。
「スモークの使い方について」
きれいな出し方や効率的な消し方があるのかと言う質問でした。
監督によれば、場内の温度差が少なくなる様にコントロールをして、美しいスモークが出るようにしているそうです。
舞台上数カ所、客席内の温度をチェックしているそうです。
これは、スモークだけでなく、温度差による対流で吊りものが揺れて事故が起きる事を防止する意味もあるそうです。
「アムネリスのメイク直しは、どうしているのか?」
床山さんの説明に依ると、オープニングの博物館のシーンの後、スパの前までに一度メイクを全部落とし、ファンデーションから始めるそうです。
人に依って、クリームだったりシートだったりするそうです。
最終的に2時間近い時間となりましたが、満足度十分のイベントでした。
イベントで知った情報で舞台を観ると、また違った見方が出来そうです。