木曜日の救急当番の時に70歳男性が救急搬入された。自宅で白目をむいて意識低下していたそうだ。救急隊到着時は意識レベルJCS20と評価されていた。血圧が80台と低下している。大学病院の脳神経内科に通院しているそうだが、詳細はわからなかった。
搬入時には血圧が100ちょっとに上がっていて、薄目を開けていた。心電図は洞調律で、酸素飽和度も正常域だった。呼びかけると小声で返事をした。顔色は不良だが、症状は軽快しつつあると判断された。点滴を開始して、血液検査・胸部X線・心電図・頭部CTのオーダーを入れた。
昨年肺炎で内科に入院していて、現在育児休暇中の内科の若い先生が担当していた。既往歴に進行性核上性麻痺の記載があった。奥さんに話を聞くと、その病名だったが、最近病名が(診断が)変わったそうだ。正確に覚えていなかったが、何とか質変性症と言われたというので、たぶん線条体黒質変性症(MSA-P)?。
デイサービスに週3回行っているが、一過性意識低下が何度もあるそうだ。先月はその症状で地域の基幹病院に救急搬入された。検査では異常なしと言われたという。今日もそちらに救急隊が搬入要請をしたが、まずは近くの病院で診てもらうようにと指示されていた。また一過性の症状と判断されたのだろう。
普段は何とか室内は歩行できるようだ。その日の朝は座位でデイサービスのお迎えを待っていた。奥さんは孫の通園に行っていて不在だった。施設職員が来て、座位のまま白目をむいて意識消失しているのに気付いた。その姿勢のまま5~10分くらい背中をたたきながら名前を呼び続けていた。奥さんが自宅に戻ってから横臥させて救急要請した。
状況からは起立性低血圧症からの脳循環不全による意識消失(失神)と判断された。座位のままにせず、すぐに横臥させるのが好ましいが、そうするまで時間がかかったことになる。
検査では異常を認めなかった。頭部CTで脳萎縮と脳室拡大があるが、新規の脳血管病変はない。点滴をしているうちに、顔色も良くなり、血圧120になった。喋り方も小声ではあるがよくなった。ちょっとした冗談も言った。
奥さんに入院して経過をみるかどうか訊くと、帰宅と希望された。デイサービスに行ってもいいかと訊かれたが、座位や立位が長いと、一過性に血圧低下して脳循環不全になることを認識してもらって、おかしい時はすぐに横臥させる様にすれば大丈夫と伝えた。
大学病院からのレボドバ製剤が処方されていた。ドロキシドパ(ドプス)の処方については、大学の先生に症状を伝えて、決めてもらうことにした。大学で診ている先生が近々地元の県に戻る予定と言われていたそうだ。当院に大学脳神経内科から週1回外来に来ているので、当院に回してもらってもいいのかもしれない。ADLが次第に落ちてきていて、食事摂取量も少なく痩せてきていた。
さらに病状が進行すれば、当院に誤嚥性肺炎で入院したり、胃瘻造設(消化器科医と当方の胃瘻コンビが担当)の依頼がくるという経過になるのだろう。