10月4日初診で6日に入院した感染性腸炎の45歳女性は、症状軽快して9日に退院した。便培養(スワブの直採)は陰性だった。治まったはずの下痢が退院後にまた続いて、今日内科外来を受診した。食事をすると嘔吐することもあるというが、入院した時のようではない。入院した時のCTでは小腸に腸液貯留があったが、腸管壁肥厚は目立たなかった。画像では小腸型になり、長引かないはずだが。
先週丸善で臨床画像10月号「さまざまな腸疾患の画像診断」に感染性腸炎の画像診断が載っていたので購入した。感染性腸炎でCT(特に造影CT)を行うのは、1.ほかの急性腹症の除外、2.感染性腸炎の合併症の診断、3.感染性腸炎の質的診断(原因菌の推定)。
1.ほかの急性腹症の除外
重症虫垂炎や胆嚢炎・消化管穿孔などの二次的炎症波及による腸管壁の肥厚、不完全な腸閉塞や憩室出血による腸管内液体貯留物は感染性腸炎と紛らわしい。
2.感染性腸炎の合併症の診断。
合併症は穿孔、腸閉塞、腸重積、出血、中毒性巨大結腸症。
3.感染性腸炎の質的診断(原因菌の推定)
1)小腸型(主に近位小腸)
ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス感染、黄色ブドウ球菌やコレラなどの生体外毒素産生型の細菌感染。小腸粘膜上皮表層の障害。下痢、嘔気・嘔吐が主症状。血便や粘血便は生じない、または軽度。小腸は腸液で軽度拡張して腸管壁肥厚は目立たない。
2)大腸型(主に遠位小腸~大腸)
カンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸菌、クロストリジウム、赤痢アメーバなどの組織侵入型、生体内毒素産生菌型の細菌感染。腸粘膜上皮細胞より深層が障害。血便や粘血便を生じることが多い。腸管壁肥厚が目立つ。
3)穿通型(主に遠位小腸~回盲部)
エルシニア、腸チフス、パラチフス、結核など。腸粘膜のより深部に侵入してリンパ装置を介して(リンパ節腫脹)全身へ広がる(菌血症)。