木曜日の昼前に、地域の基幹病院救急科の先生から連絡が入った。当院内科に通院している64歳女性が、意識レベル低下で救急搬入されたという。
検査の結果、血清アンモニアが211(30-80)と高値で、肝硬変による肝性脳症と考えられるということだった。
外来は糖尿病と高血圧症で通院している。糖尿病はDPP4阻害薬だけ、高血圧症はARBだけの処方で、血糖も血圧も良好だった。
変形性股関節症で左股関節は拘縮していた。左下肢はほとんどまっすぐなまま固まっていて、夫が介護していた。年齢の割に認知力も少し低下しているような印象がある。
それにしても、これまで肝機能は正常域で、HBVもHCVも陰性だった。肝硬変というのは本当だろうか、と思った。
先方の病院からは介護タクシーでやってきた。診療情報提供書によると、点滴500ml2本とBCAA含有アミノ酸製剤の点滴をしていた。ぼんやりとした感じはあるが、会話は可能だった。
胸腹部CTの画像がCDで送られてきた。脾腫はあるが、肝の画像は肝硬変といえるだろうか。
肝硬変を来す肝疾患とすれば、自己免疫性肝炎か原発性胆汁性肝硬変だが、あるのか。肝機能検査は正常域だが、血清蛋白7.3g/dl・血清アルブミン2.6と高γグロブリン血症がるかもしれない比率だった。抗核抗体と抗ミトコンドリア抗体を外注に提出した。あとは珍しい門脈・肝静脈の血流異常をきたす疾患だが、診断は難しい。
アミノ酸製剤の点滴静注が効いているようなので、入院翌日以降も継続することにした。血清アンモニアのフォローする。尿路感染症もあるので合わせて治療する。
救急科としては、意識障害の原因検索でルーチンの血清アンモニア測定だろうが、検査してもらってよかった。急性期の1週間くらいを入院で診てもらってから当院に戻してくれると、もっとよかったが(肝臓精査として消化器内科には頼みにくい?)。