なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

カテ先だけ出したくなる気持ち

2021年06月23日 | Weblog

 AST会議で、外科で診ている82歳男性が話題に出た。カテーテル関連血流感染症として、培養はカテール先端だけ出しているということだった。(AST=抗菌薬適正使用チーム)

 原則として、カテーテル関連感染症を疑えば、血液培養2セット±カテーテル先端培養を提出する。ASTとしては、「カテーテル関連血流感染症の場合は,、血液培養2セットの提出をお願いします」となる。ただこの患者さんはこれまでの長い経過があった。

 直腸癌術後で癒着性腸閉塞を繰り返している患者さんだった。今年の1月21日にまた癒着性腸閉塞で入院した。そのうちに以前にもあった総胆管結石・急性胆管炎を発症した。

 治療歴のある地域の基幹病院消化器内科へ紹介(転院)となり、内視鏡的に結石除去が行われた。しかし食事摂取が進まず、4月31日に当院に戻ってきた。

 腸閉塞が一進一退で、入院が長期になり、5月27日に右内頚静脈から中心静脈(CV)カテーテル挿入が行われて、高カロリー輸液が開始された。

 5月31日から高熱が続き、血液培養2セットが提出された。しかし培養陰性で、起炎菌は証明されなかった。6月2日にカテーテル関連血流感染症として、CVカテーテルは抜去された。抜去後は解熱して軽快している。

 高いカロリー輸液の継続を要するため、左内頚静脈からまたCVカテーテルが挿入された。(左内頚静脈から入れたことはない)

 6月15日にまた高熱が続き、またカテーテル関連血流感染症が疑われた。今度は血液培養は提出せず、CVカテーテルを抜去してカテーテル先端だけを提出していた。前回培養陰性だったので、出しても証明されないと思ったのだろうか。

 皮肉なことに、今度はカテーテル先端から、いかにもカテーテル関連血流感染症をきたしそうなコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)だった。(Staphylococcus intermedius)当然メチシリン耐性でMRCNSになる。

 もっともこれだけではコンタミの可能性があるので確定はできない。血液培養2セットを提出していれば、同じ菌が出そうではあるが。

 抜去後は解熱して軽快していた。やはり高カロリー輸液が必要なので、大腿静脈からCVカテーテルが挿入された。イレウスチューブが挿入されていて、腸閉塞はまだ解除していない。治療に苦労されているようだ。

 治療としてはいずれもゾシン(PIPC/TAZ)を2日入れてすぐに中止していた。正しくはカテーテル関連血流感染症の場合、起炎菌が証明されればその結果により選択された抗菌薬になるが、証明されなければ、皮膚常在のMRSA・MRCNSを含むグラム陽性球菌を想定してバンコマイシンを2週間以上投与することになる。

 黄色ブドウ球菌では治らない可能性が高いが、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌ではCVカテーテル抜去で案外(大抵?)治ってしまうようだ。

 正しくは、血液培養2セット(カテーテルから1セット+末梢静脈から1セット、または末梢静脈から2セット)±カテーテル先端培養を提出する。培養結果に基づいて抗菌薬を2週間以上点滴静注で投与となる。数日間の抗菌薬投与後に再度血液培養2セットを提出して、陰性確認した日からの計算で抗菌薬投与となる。ちゃんとやると手間がかかるのだった。

 最近AST活動をする症例が少ないので、「カテーテル関連血流感染症では・・・」と、ASTとして控えめにカルテに記載させてもらった。

 

コメント
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