Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

「8月の家族たち」感想

2014-04-19 19:24:00 | ベネディクト・カンバーバッチ
「8月の家族たち/August: Osage County」を見ました。
女達がキーキーわめく映画をわざわざ見にいかなくてもいいかなあ・・・
とずっと思っていたのですが、初日の4/18は仕事が休みだったので前夜に上映状況を調べてみたら「金曜初回割引1400円」という文字が目に入ってしまい、それでチケットとっちゃお!と決意しました情けないです。





ちょいネタばれあります。でも最大ネタばれは書きません。


お話は、久しぶりに会った一族が、責め合って、自分の生き方を主張し合って、過去の秘密を告白し合って、またそれぞれの生活に戻るという・・・どこの家でも誰かの葬式後に親戚同士で本音が出て仲が悪くなるというあれです。ただ本作では主人公バイオレット(ストリープ)の夫(サム・シェパード)が失踪して、子供達や妹が集まったところで夫の死が確認されるのでもっと詩的でミステリアスな空気が死を包んでいます。

なんで女達がキーキーわめくのかと言うと、この一家、女系なんです。バイオレットと夫の間には娘ばかり3人、長女にも娘、バイオレットにとっては孫娘がいます。それからバイオレットの妹夫婦。ここの子供だけが男でそれがリトル・チャーリーです。奥さんの実家での夫達は全員マスオさん状態で、「バッカモ~ン!」と怒鳴る役目の波平さんは、詩人で静かで知的な男だし、かつ失踪しちゃってるので、誰も女を止められないわけです。

この映画を見ながら、私は登場人物達を「勝ち組」と「負け犬」に頭の中で分けていました。

勝ち組は、
バイオレットやバーバラのように好き放題で口が立つタイプ、
バーバラの夫ビル(マクレガー)はイケメンでホワイトカラーっぽく若い恋人もいる、
だが誰よりも勝ちなのはバーバラの娘14歳美少女かも。

対する負け犬は、
バイオレットの妹マティ・フェイ(M・マーティンデイル)デブキャラ
次女アイビー(J・ニコルソン)男っ気なし
従弟チャールズ(カンバーバッチ)何やってもダメ

あとの人達は真ん中へんで勝ち組に入ろうと戦闘中

世間の評価で分けたので、おおざっぱです。アメリカもそれに倣えの日本も、幸福=成功=高収入、夢の実現、家庭を作ること、そのためにはセクシーで異性を惹き付ける事、みたいな方程式が戦後ありました。それで達成度を評価され、一番心のよりどころであるはずの家族も「本人の幸せのため」とその方程式に合わせるよう期待する。でも方程式に当てはめても、人の心や行動は数学の答のように正解を出さず、どうも幸福じゃない。

アメリカ人がアメリカン・ドリームが覚めたことを告白したのかと思いました。


実はここ最近、私自身が「世間で負け組と思われている人達」が、優しいとか、誠実であるとか、人間として信頼できる資質を持つ人が多いなと思っていたところだったんです。(その話は改めて書きたいです)

だからね、マティの夫チャールズ(クーパー)&マティの息子リトル・チャールズに泣けました。映画評をチラ読みすると、母と娘の関係と演技が絶賛されていますが、その言動の派手な女達の影のように描かれる、負け組に見える父と息子の姿は救い、一筋の光でした。

でもこのお話が単純でないのは、天使のような心のリトル・チャーリーが、うだつがあがらないアメリカのど真ん中オクラホマ州の田舎から、NYへ出て新規蒔き直しをしようなんて思ってるところだと思います。アメリカン・ドリームが覚めてない人もまだまだいる。そして一族で一番存在感の薄いそのリトル・チャーリーの存在の意味の方がよっぽど新規巻き返しなんですけれどね。

女の方は濃いので、一回見たらもうよ~くわかりました、なんですが、存在感の薄い男達が面白かったので、ベバリー、チャールズ、リトル・チャールズを見るためにまた見たい映画です。