英国ロイヤルのオペラとバレエを映画館で見られるシリーズ、すごいのが来ました!
創立70周年を記念して今年の6月にイギリス全国の映画館にライブ放送された、英国ロイヤルバレエ団の創設メンバーの振付師フレデリック・アシュトン作品3本です。
映画館といえども生放送でしたらどんなにか興奮するイベントでしょうね、日本も一度やってほしいけど、英国時間の夜7:30からということは、こちらは夜中の3:30・・・夜更かししたらいいのか早起きしたらいいのかもわかりませんね?!
もちろん生の舞台が1番なんですが、今回は録画でもかなり楽しめました。
演目が
1「真夏の夜の夢」シェイクスピア原作、音楽メンデルスゾーン
2「シンフォニック・バリエーションズ」
3「マルグリットとアルマン」(椿姫より)音楽フランツ・リスト
の3本だからです。
1と2がストーリーのある時代物、2はストーリーはありません。
解説にはダーシー・バッセルともう一人男性のプレゼンテイターがいて、今回かなり詳しく監督やダンサーのインタビューも見せてくれました。こういうとき、日本語字幕は情報を漏らさないのでいいですね。
アシュトン作品の特徴の一つとして、「全身を使った動き」を紹介していました。ステップがかなり細かい技術を要求されるのですが、同時に手や肩の動きもありダンサーにはきついのですが、この振りが物語や感情を表現してストーリーがダンスだけで無理なく語られるのです。
これが、日本人ダンサー高田茜にとても合っていたので、「真夏の夜の夢」を見て私は初めて涙が出るという体験をしました。
シェイクスピア原作はセリフで成り立ってますし、バレエ版として人間界の出来事は随分カットはしていますが、それがかえってストーリーを簡潔にしオベロンとタイターニアのロマンスがとても美しいものに仕上がっていました。
スティーブン・マクリーの艶やかな王様っぷりは、初代のロイヤルの誇る王子キャラ、アンソニー・ダウエルの影響らしく、ダウエル本人もアシュトンから教わったことを若いダンサーに伝えたそうです。
人から人へと受けづがれる・・・匠の世界を見たような。
これまで見たタイターニアも美女だけれど妖女とも老女王ともとれるキャラクターだったのですが、高田茜は日本人特有の華奢な上半身でなんとも繊細な女王様だったのです。
それを見た後の「マルグリットとアルマン」では、これが引退公演だったというゼナイダ・ヤノウスキーの大柄な外見が、椿姫という可憐な高級娼婦の繊細さにいまひとつ欠けるなあ・・・と思わざるをえませんでした。
そもそもこの演目は、アシュトンがマーゴ・フォンティーンとヌレエフのために振り付けたそうで、物語も、高級娼婦がお客様の息子と恋に落ちてしまうー
フォンティーントヌレエフは、二人の間に子供もいたのでは?という話があったくらい、個人的な関係も強かったようですが、実生活ではフォンティーンはずっと年上で既婚者ですから、見る人はダンサーふたりを役のキャラクターに重ねてしまうという効果があると思うんですね。
それでついつい私も可憐なマーゴ、またはシルヴィ・ギエムもこの演目は得意で私も見たことがあったものですから、華奢なふたりに比べてヤノウスキーは気品こそあれちょっと大味な気がするなあ・・・と思ったのでした。
しかし、驚きは、幕が下りてからそのあとでした。
通常のカーテンコールのあと、彼女の23年間の踊りをたたえて、花束が続々と持ち込まれるのですが、なんと、
彼女とパートナーとして踊った歴代のプリンシパルたちが花を抱えて次々とステージに現れたではないですか?!私にわかったのは、カルロス・アコスタ、ジュリアン・コープ、それからダウエルや総監督の偉い女性と、と、とにかく、ビリー・エリオットの歴代ビリー全員集合のような豪華絢爛な引退を飾るステージでした。
またヤノウスキーのこれまでの代表的な役の映像も解説の時間に流れ、至れり尽くせりのシネマでした。