Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

家族の肖像

2021-07-18 11:01:00 | その他の映画・ドラマ・舞台


コリン・モーガンの出演映画「Cosarge」予習のつもりで見た「ルードウィヒ」が記憶以上に良かった(もっとも昔見た時のことは洞窟の白鳥ボートしか覚えてなかった)ので、同ヴィスコンティ監督作「家族の肖像」を見ました。

実はこちらも劇場で、と言っても古えの名画座で2~3本立てで見ています。でもいくらお財布にやさしくても、これと何を合わせて見たのか、もし「地獄に堕ちた勇者ども」だったりしたら私の目の解像度が荒くなおかつ字幕の脳内処理がついていけなかったとしても不思議ではないでしょう?!

今は「?」と思ったらリピして見れるおかげで理解もできるし、映画館ではこの物語の侵入者の娘くらいの年齢だったのが、主人公の方に近くなったおかげでいとも簡単に共感できてしまいました。

ヴィスコンティがこんなにサクサク見れるとは私の知能指数が上がったのではと錯覚しましたが、これは彼の作品の中でもテンポもよく時間も短いのだそうです。


思春期から長いインターバルを経て第2オタク期(?)の私にこうも親和性があるとはいったい・・・と思ってみたら、これは天下のヴィスコンティ卿自身がオタク伯爵だったからですね。

ポイントNo.1は、主役の教授が絵の収集家でコレクションに埋もれ人を避け幸せに暮らしていたことです。キングならぬ貴族 OF オタク・・・

お気に入りに囲まれながらモーツアルトのレコードをNYから取り寄せてコンサートの予習をしているのです、私は教授ほどの財力もないのでローマに広いアパートは持てないけれどネット上のブログなら自分の好きなものだけの世界がつくれてそこでは幸せと思っているのと何か違いましょうか。

ポイントNo.2は、そんな理想郷を破られてもいいリアルというのは美青年。ヘルムート・バーガーはアラン・ドロンに比べたらそんなに美しいと私は思わないですが、1970年代のあらゆるファッションで彼の姿を世界に見せつけています。カジュアルなハンチング、白Tに色落ちさせたジーンズ、その上に毛皮のコート、ジェケットにネクタイ、装いに合わせてヘアスタイルも前髪ハラりから櫛で撫でつけ、そして襲われてケガした時の血まみれ姿まで美のカタログを見せられたように明白な意図が感じられました。こんなリアルが目の前に現れたら、信条を曲げてでも生活への介入を許してしまうでしょ?と。はいはい異議なし。

共感ではないですがヴィスコンティの内面がひしひしと伝わるポイントは、この教授は結婚に失敗していて、ルードウィヒと同じで良家の血筋にとっての使命、「家を存続させる」ことができないことにとても罪悪感を持っていること。セリフにも聖書の引用だったかが出てきました。

家に侵入してきた若者たちの価値観(=フリーセックスの時代でしたし、過激派左翼も活動していて若者の勢いがあった)は受け付けないし、その母の実業家=ブルジョワも嫌いだけど、かといって自分の出所から認められる人生も送れなかったという、ゲイ=罪の存在である悲しみが豪華なインテリアや美術品の陰に張り付いていた。


ところで実業家の娘リエッタが「ベニスに死す」のタジオに似ていて可愛く、そして彼女のファッションがめちゃ可愛かった!彼女の彼氏のステファノのファッションも。教授にはヒッピーという新世代の脅威なんですが、リエッタはブルジョワの娘なので「いわゆるアメリカ的なヒッピーファッション」ではなくヨーロッパのお嬢さんぽいパンタロンにロングコートとか、フリルのついたハイネックとパフスリーブのブラウスとか、シャーリングに肩紐を肩の上で結ぶドレスとか。ママ世代は毛皮に代表されるゴージャスなモードで、ビスコンティにしてみたら流行なんて資本家階級の卑しいものかもしれないけれど、ローマにいながらパリだロンドンだサンモリッツだと電話をかけまくっている(しかも人の家の電話)階級の人は「サンローラン・リヴゴーシュ」などプレタポルテを日常にお買い物して着ていたのだろうなあと憧れます。嫌いな資本家階級を登場されてくれたおかげで、リアルでは見れなかった70年代のブルジョワの生態が見れました。

セクハラ・パワハラで嫌いになってたヴィスコンティですが、政治的スタンスは資本家を嫌う左だったそうで特権階級に引き困っていたわけではなく、ハラスメントは許せないけど残した文化の価値は減りません。