Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

ザ・フォール 警視ステラ・ギブソン 2

2016-06-11 22:11:00 | コリン・モーガン
コリンの出ている0204~06からスタートに戻って全部見た感想を書いておきます。

心に引っかかったことは二つあったのですが、フェミニズム的な内容だったのが自分でも面白いと思います。

まず字幕の日本語について。このドラマに限ったことではないのですが、ステラの台詞の言葉遣いが難しいな~といちいち思いました。というのは彼女は連続殺人事件捜査という大きなプロジェクトの指揮をとる警察でも階級の高い人物でありながら、冷静だけれど口調はソフトなんですね。そのためか字幕は女言葉。「~~~よ。」「~~~なの。」が「~~~した」などの断定に混じってどうしても入ってしまう。指令の時は「~~~して。」これが男性警官ならば「~~~しろ。」のはず。ジェンダー的にニュートラルな語尾なら「~~~してください。」などの丁寧語があるけど、階級の高い人が低い人に個人的に話す時には違和感があります。見るからに男性的な女性キャラならば男性口調の字幕をつけたらあうでしょうが、ステラは知的で冷静で、だけどフェミニンというキャラだから、フェミニズム的後進国の日本から彼女に近いサンプルを見つけられないのかもしれません。

と、日本語教師をしたことがあるので日本語と英語の違いがつい気になる私的な感想でしたが、もう一つ、このドラマをコリンファンとして見たからにはネタバレを避けて通れない、と決意しました。ステラ、スペクター、トムの関係について。

行きますよ!

ステラは独身の美人ですのでそれなりにモテます。ロンドンから派遣されたステラのベルファスト警察での引き受け責任者ジムとは過去に付き合っていたようです(多分不倫だった)し、別の地元警官のひとりとも一夜の関係を持ちました。事件がらみでそのことがジムにバレた時、ジムは彼とステラの関係を詮索します。ジムはまだステラに未練があるので個人的な感情です。しかしステラは別にその警官と付き合ってるわけではなくて、たまたま部屋に転がってきた美味しいものをいただいただけだと説明します。それに対してもジムはまだ倫理的にステラを非難するので、ステラは「ベルファストには短期滞在だし、男は同じことをしてよくて女はだめなのか」ときっぱり言ったのです。

なるほどねーと私は思いました。フェミニズム先進国のイギリスでも、女性にだけ貞操を求めることはまだ残ってるのですね。男性なら一夜の遊びが「たまには仕方ない」くらいなのに同じことを女性がしたら人格を疑われるのか。

ステラは美人女性もホテルの部屋に誘っていたのでバイのようで、確か「こう言う仕事をしていると人の温もりが余計に必要になる」と言っていました。結婚とか、仕事一筋のキャリアウーマンとかから自由な、新しい人生やセックスへのスタンスですね。


(さてフェミニズムの話はここで終わり、関係の話に雪崩れ込みます!)


そこに現れたのがコリン演じるトム・アンダーソン。ステラが主任警部(ステラより階級は下)のイーストウッドにトムのことを聞いたら「若くカリスマ的でハンサム」と意味ありげに描写したのでステラは「マスクをしてたから顔は見てない」と嘘をついた上で「トムをチームに加えたら役に立つ」と自分の部下として求めました。

とステラがトムを第一印象で気に入ってたのはそのシーンでわかりましたが、犯人を逮捕して取り調べ中に、いきなりステラのホテルの部屋のベッドで眠りこけてるコリン(トム)にはかなり衝撃を受けました。マンガだったら私1mは後ろにぶっ飛びました!

旅先のアバンチュールだった別の警官との時は、本当にただのアクシデントを楽しんじゃった的な関係だったので、それとトムとの関係が重なって「うーん」「私がステラでもコリンなら気持ちはわかるけど一体どうしてそうなったの???」とモヤモヤが~~~

そしたら、その謎はBBCのThe Fallページに出ている削除シーンで溶けたんですよぉ~~~!コリンの寝顔の前のシーンとして、深夜の暑でばったり会った二人の会話があったのに削除されていたのです。壁の捜査資料を見ながら、自分の父のことをトムに話して、「飲みにどこか行くのはいいのか悪いのか?」と聞いたのです。この誘い方も、性犯罪を捜査する警官としてステラが「合意がないのに性的行為を強いるのは犯罪」と定義していることを思い出させます。もう、なんでBBCこれを削除したのかなっ!

さて削除シーンから本編に戻ります。トムが「自分とスペクターを重ねているか?彼はなんだか魅力がある。」とステラに聞いた時、ステラの答えは「スペクターを嫌悪している」とのことでした。

ところで私はコリンが出てる以外に何も知らずにこのドラマを見始めて、ドーナン演じる犯人のポール・スペクターを見ていて「コリンに似ている?」と思ったんです。それもそのはず、そういう設定だったんですね・・・カルバンクラインのモデルもしていたというドーナンですが、コリンに似ている?と思いながらもどうしても好きになれませんが。

そしてシリーズ2のラストシーン。過激組織のジミーがスペクターを撃ち、2発がスペクターに、1発がトムに。その時ステラが駆け寄って傷に手を当て抱き起こしたのはスペクターの方・・・ううう、それはないよトムもお腹のあたりに当たってるのに・・・そしてトムの心配をしたいのにカメラはスペクターの顔へ。

その時、スペクターの顔を私は始めて美しいと思いました。俳優ってすごい!ずっと暗く重い過去を顔に背負ってたスペクターの顔が、安心しきって母親に抱かれているような表情だったのです。その時彼に意識があったかどうかはわかりませんが。

そしてステラの方も、せっかく事件解決が近いというところで犯人の命を失う以上の動揺を見せてシリーズは完結してしまいました。私はこの時トムの心境はいかに、シリーズ3で彼はどうなるのか、って気が気ではありません!

では必死で撮ったスクショを記念に貼っておしまい。












ザ・フォール 警視ステラ・ギブソン

2016-06-08 22:01:00 | コリン・モーガン


コリン・モーガンが、テレビドラマのシリーズ2のエピ4-6に出ているとは知っていても、どうせまた英語版のDVDを見なくちゃならないんだろうなあと、しかもコリンが出てないシーズン1から見ないと意味わからないんだろうなあ、とウダウダしていたTHE FALLが、なんと日本版DVDもでていてネトフリにも入っていたと最近になって知りました!

有名な人気シリーズ「Xファイル」の女優さんが主役だからでしょうか、暗そうなイギリスのミニシリーズが、よもや身近に提供されていたとは!だってウィキのコリンのフィルモグラフィーにも邦題表記なくて原題のThe Fallとしか書かれていないんですよ。なんだも~

とにかく配信で見られると知ったので迷わず0204から見てしまいました。コリンはなかなか出てこなかったのですが、珍しい妖精ちゃん的なキャラではなく、若手刑事として、人間らしい姿で登場してくれました。じゃん!



そしてそして、主役のステラ・ギブソンキャラもよく知らない間に途中から見たので、コリン目当ての私には意外な展開が待っていたのでした!ちなみにThe Fall Colin Morganで画像を探してみたらネタバレを突きつけられますので未見の方はご注意ですよ!

この話の舞台は北アイルランドのベルファーストです。ステラ役のジリアン・アンダーソンもコリンもアイリッシュ系俳優です。

ステラはロンドンから事件解決のために送られて来た警視。中年モースの肩書は主任警部で、警視はその上ですので偉いのです。彼女の話し方は小声で口数も少ないのですが、要点を淡々とはっきりというところがとても好きです。怒鳴ったり、説得するためにドラマチックに語ったりしないんです。そして感情を完全にコントロールしているところも、外見の小柄な金髪美人のイメージを裏切っていて良いです。

日本と比べれば異次元のように女性の地位は高いイギリスでさえも、やはり警察組織は男社会。そこでの彼女の静かな仕事ぶりと、体裁やプライド、感情のため右往左往する男性警官たち。いつの間にかステラ目線。コリンの役のトムに対してもステラ目線。あれ?やっぱりここでもコリンは立場の強い人の下で健気に頑張る役か。

そしてびっくりしたのは、シリーズ2の途中から見たというのに、話は0101からずっと続いていたということです。こう言う犯罪サスペンスドラマシリーズというのは、1話完結かせいぜい続いても2~3エピ、と勝手に思っていたのです。

どうも犯人のポール・スペクター(ジェイミー・ドーナン)は主役を張るクラスのイケメンのようで、警視vs犯人の一騎打ちがドラマの核のようなんです。え!そしたらコリンはどうなのよ!?って思いますが、本当に本当にどうなのよ!とシリーズ2のラストのクリフハンガーでは思うんですよ!!

でも少し我慢していればシリーズ3は撮影も終わっていて、コリンのクレジットもしっかり入っているのでBBC2に向かって「どうなのよ!」と言える日も近いのではないかと期待しています。

しかしBBCといえば、コリン主演のヴィクトリアン・ホラーなドラマシリーズThe Living And The Deadも控えていて、そちらのプレビュー&Q&Aが6月14日に予定されているので放送はその少し後になりそうです。6月末か7月頭くらいでしょうか、楽しみ楽しみ楽しみです。


「ハムレット」を音読する

2016-06-02 23:00:00 | その他の映画・ドラマ・舞台

日比谷図書館のある公園から帝国ホテル(右のビル)を見るのが好き

先日「アガサ・クリスティ」の講座に参加した「日比谷カレッジ」で、今度は河合祥一郎先生の「『ハムレット』を音読する ー名作を正しく理解するために」を聴いてまいりました。おもしろかったです!



原文の、1行中にある音節の強弱のリズムを教えてもらいました。
このリズムのある台詞が、言葉の意味だけでなく音楽のように聞こえる演劇芸術だったんだなあ!とやっとわかりました。それがあるからこそ演劇らしい台詞回しというものに聞こえるのですね。

ちなみにハムレットはそのリズムのある韻文と、ない散文とが混じっています。

韻文の行数は決まってませんが、とにかく1行目の音節の強弱の位置が、2行目以降もずっと基本的に続くのです。続くのもシェイクスピアすごいですけど、例外的な崩しもところどころ出てきて、そこさえも俳句の「字あまり」のように余っちゃったというわけではありません。俳優がセリフをためる間として開けてあるとか、1行の途中でバルナードの台詞が終わったら間髪入れずに途中からホレイショーが続きを言って1行としては強弱リズムは崩さないとか。

ですからこのリズムがあるおかげで、ト書きがなくても俳優の出入りの流れはわかるのですって。そんな仕組みだったのですね~

行が弱で終わるか強で終わるかで、それを言う役の心情も決まっているのですって。弱だと不安・懐疑、強だと意思も強い・・・(だったかな?ちょっと記憶が怪しい^^;6/6追記:参加されたhedgehogさんのコメントにより、合っていたことが確認されました。先生の例としてTo be, or not to be, that is the questionだと最後の音節は弱で迷いを表しているが、もしこれがquestと言う単語だったとすると強となり断定となる、というように)

台詞は意味だけでなく、こうした型に沿って作られているため「最近のカンバーバッチのなんて切った張ったは滅茶苦茶な事してました。ケネス・ブラナーは舞台も映画もやりましたが、映画は原作通りに台詞を入れると芝居がかりすぎてしまうので変えてありせっかくの韻文が崩れてしまっています。」

なるほど~と思ったのが、オフィーリアの台詞で、ハムレットとの会話は散文で台詞も短いのですが、ハムレットが去り長い独白になると韻文になります。それは当時舞台では女性の役を少年が演じていたため、下手でも韻文は型なのでその通りに台詞を言えばなんとかなったからだそうです。女王様などえらい人の前で大変なことにならないための手段だったのか~~~!

などという知識とともに河合先生がハムレットの台詞を英語と日本語で読んでくださいました。強弱で読むと、ホントにシェイクスピアでした。多分先生は暗記しておられるでしょうけれども。

強弱リズムの入門編としてマザーグースのお歌もみんなで歌ったし、時間がオーバーしてるのに質疑応答もありましたし、講座後には出口で著書販売と先生のサインの机も用意されていて楽しかったです。NHKでやったハムレットのテキストも家から持っていけばよかったな~





*6/3追記

To be, or not to be, that is the question:
私にとって目から鱗だったのは、この文の解釈でした。
「この簡単な単語beの意味はいろいろに解釈される」と何かで読んだことがあって、確かに広くいろいろな意味にとられるよな~と私も鵜呑みにしてしまっていたんですね。しかし、その意味はその次の4行にちゃんと詳しく具体的に書いてあったのです。それは、2と3行目にbeの内容として「生きる」が、そしてOrで始まる4と5行目に「死ぬ」という内容のことが。
よく考えたら、「初めに言った謎めいた内容を後で簡単にわかるよう解説という手法はシェイクスピアはよく使います」と河合先生がおっしゃった通り、原文では意味ははっきりしているので、私が昔読んだ「いろいろに解釈される」というのは日本語訳ではということだったのかなあ。あ~もう、人生ってこうして思い込みの知識をどれだけ引きずっているんだろう。