マンション暮らしになってほっとした一つに「水抜き栓」がある。
水道が凍らない土地に住む方にはなんのことやらと思われるだろう。
家の造りや暖房器が優秀になってきた今では、北海道でも必要のない家庭が増えただろうが、重要なものだ。以前住んでいた家は古い家で、断熱材というものも入っておらずとにかく寒かった。かろうじて二重窓にはなっていたがそれだけで、冬の寒さをしのげるものはひたすらストーブだった。なので、水抜きは、水道を確保するために必ずしなければならないことで、しばれる2月には暖かいはずの日中でも水を抜いた。
宮城県白石市ホームページから
水道管は地中に入っている部分では土に守られて凍ることがないが、土からでたところは寒さで凍る。凍ってしまうと、とにかく溶かすしか手がない。これがまた結構大変な作業なのだ。そのため、使わない時には、土に出ている部分から水を抜くことをする。要は土の中に蛇口をもう一つ作っておいて、そこを閉めるのだ。そうしておいて、本来の蛇口を全開にして中の水を出してしまう。こうしておいて暖房が利いていれば、使う時に水抜き栓を開ければ不便なく水道が使えるのだが・・・。
我が家はそれどころではなかった。寒い家だったので、寒さが水抜き栓に伝わってギリギリのところを凍らせてしまうのだ。あさ、水が出るかどうかは不安材料の一つだった。電気ストーブで一晩中水抜き栓のあたりを温めていても、北国の冬は容赦がなかった。トイレは吹きっさらしの場所だったので、一回一回水を抜いたが、それでも凍った。洗濯機もきれいに凍って水を通さない。真冬は仕方がないので、給湯機からお湯を引っ張って使った。我が家の冷蔵庫は冷やすためのものではなく、凍らさないためのものだった。凍ってしまった水道管をどうするかというと、温めるのだ。ボロタオルを巻き、熱湯をかけた。急激に温めると水道管が破裂することがあるので、様子を見てはお湯をかけ続けた。すぐ出る時もあれば1時間もかかる時もある。あるとき、水抜き栓自体が凍ってしまったことがあった。その冬はとても寒くて、玄関も凍った。玄関を開けようとするたびに凍てついた扉を温めなくてはならなかった。そんな毎日が続いて心が折れそうだった。
マンションに移れた時、ほっとした。これで、扉もあくし、水道もいつも出る。
でも、ここで冬を快適に過ごしていていつも考えるのは、雪かきや水道栓への始末は北の国に住む人間にとっては必要な生活習慣。便利になったけれど、これでいいのかな…と。