末っ子が春に入学する中学校の制服を誂えに行った。
市内何か所かの店が指定されている。上の子どものお下がりが彼が中学生になるのを待っていたが、いかんせんこの息子がこの年頃で一番体格が良かった。制服は新調しないとならないと分かり、合わせに行った。Sから3Lまである既製サイズの中で、彼は2Lでは大きすぎLでは心もとなくBLではかわいそうという塩梅だった。
親の感傷・・・この息子、実は月足らずで生まれた。その上、未熟児だったので保育器に入った。試着室でだぼだぼの制服を着ている息子を見て、保育器に入るこの子を旦那と並んで見つめたあの日を思い出した。旦那は若いころヘビースモーカーだった。子どもが生まれるたびに禁煙を誓い、守られることがなかった。末っ子の入る保育器の前でポツリと「煙草やめる」と言った。それほど小さくて、痛々しかった。大人の小指ほどしかないような太さの足にさされた点滴の針をなで「早く大きくなれ」と言った。それが届いたのか、息子は大きくなった。制服はLサイズ、ポロシャツはLLサイズ、上靴は26センチだった。
夏のズボンを予約して45000円がかかった。本来はこれに体育用のジャージがいるが、幸いに上の子どもが使ったものがLサイズだったので、とりあえず間に合わせることができる。おまけに「子ども手当」で払うことができた。「子ども手当」にもろ手をあげて賛成はできないが、こうやって恩恵にあずかれると、ありがたいものと思う。学校にお金がかからないというのはありがたい。親に渡らなくてもいいから、親から集金しない制度になればいいと思う。
旦那様の禁煙は保育器の前での誓いが守られることはなかった。家族の目を盗んでは隠れて吸って、非難を浴びていた。それから2年ほどして、末っ子が足の異常を訴え入院したことがある。原因は分からずじまいだったが、症状はなくなり元気になった頃、今、高校生の娘が何を思ったのか、家中の壁に「父、禁煙」という張り紙をした。玄関、トイレ、居間・・・父親が約束を守らなかったから、大事な弟がこんな目にあったと思ったのかもしれない。さすがにこれには父親としてこたえたのだろう、禁煙することができた。それから吸っていない。娘と息子のおかげだ。
制服が届くのは来月半ば、いよいよ末っ子も中学生だ。