4匹目を観てしまった。
前作同様に、風景を重ねあわせそこに住む人たちの日々の生活をみせるという作風です。
登場する役者さんたちが特別目立ったことをするわけはありません。ですが、若い頃よく通った小劇場でのきっちりと芝居をする役者さん達の姿を思い出しました。一つ一つの場面を、それぞれの登場人物が競っていいものにしようと芝居している。小さな芝居をきっちりとすることによって、この製作グループの作る映画はその価値を高めているのだろうなあ…。
「マザーウオーター」とは本来、ウイスキーの仕込み水を言うそうだ。
小林聡美が演じるセツコは、ウイスキーしか出さないバーを営んでいる。劇中何度か丹念に作る水割りのシーンが出てくる。
小泉今日子演じるタカコは同じように珈琲を丁寧に入れる。市川実日子のハツミは豆腐屋を営んでいる。
そのハツミの豆腐屋の前でできたての豆腐を味わうシーンがある。おいしそうだなあ。
いつもの通りフードスタイリストの飯島奈美さんが手掛けた“食事”の風景がいい。清潔感が漂い、むき出しの技術をみせない、でも、思わずよだれがたまってくる。個人的には、もたいまさこ演じるマコトが自分のためだけに用意する食事にじんときた。
自分のためだけに食材を丹念に選び、丁寧に調理する。キッチンの脇で食べるのではなく、手間がかかっても雰囲気のいい場所でゆっくりと食べる。こういう生き方・・・男より女のほうが寿命が遥かに長いから、このごろ一人になった時のことを考える私・・・背筋を伸ばし、自分の住む街を歩くマコト、こういう生き方できるといいなあ。
お風呂屋さんのオトメの子どもが出てくる。歩き始めたばかりの子どもだ。周りの大人が子どもの歩調に合わせるように芝居をするので、映画らしい挑戦だと感じた。だが、これだけの役者さん達でも、素で出てくる子どものペースに合わせる緊張感がいくらか感じられて、作品の穏やかな空気に異質なものを混ぜているように思った。大事なキーパーソンだし、もう少し物のわかった年頃の子役では出ない味なんだろうが、どうなんだろうなあ。
この柳の下にいるドジョウさんはなかなか面白いから、全部観たいと思う。 次は「トイレット」を観よう、楽しみだ。