HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

衝動買いの受け皿も用意する。

2015-12-23 21:31:19 | Weblog
 ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイがCtoC(消費者間取引)のフリーマーケット事業「ZOZOフリマ」に参入した。

 ZOZOTOWNやコーディネートアプリ「ウェア」の商品データベースを活用して、簡単に出品できるもので、不用の衣料を出品して新品を購入する流れを促進するファッション販売のプラットホームを目指すという。

 過去10年にZOZOTOWNで販売した商品、画像データを生かすというから、出品者は自分で「壁掛けハンギング」などの撮影をする必要がなく、またスマホで撮ったから「商品の写真にピンが来ていない」なんて失敗をすることもなくなる。

 少なくともZOZOTOWNのプロライクなモデル撮影の写真をそのまま使えるのだから、ヤフオクで指南されるような写真の撮り方ができなくても、気軽に出品できるということである。

 ECもここまで来たかということである。Web利用はできる限り操作を簡単にしないと、出品者は増えないということだろう。

 特にPCではなく、スマートフォン向けがメーンになるのだから、なおさらである。まさに至れり、尽くせりということだ。

 もっとも、データベースの写真は、販売当時の「新品」だから、出品アイテムがユーズドである限り、現在の状態を言葉で説明したり、リアルな写真も併せて掲載しないと、閲覧者を欺ことになりかねない。

 記事ではその辺の詳細が書かれていなかったが、おそらくレギュレーションというか、その辺のルールづくりも不可欠になると思う。

 CtoCのフリマ事業では、メッセンジャーアプリのLINEがサービスを提供する「ラインモール」が先行する。

 価格は出品者が決めたワンプライスで、オークションのような出品や販売の手数料もかからず、購入者にとっても手数料や配送料は発生しないことが受け、アプリのダウンロード数は200万を超えたと言われている。

 ただ、ラインモールは、ワンプライスゆえに出品者、購入者にとってオークションのように高く売れた、安く買えたという偶然性はない。また、ヤフーのようなサイトコンサルティングも希薄で、商品がピックアップされない=それほど目立たないなどのデメリットも露呈していた。

 しかも、ラインはヤフーやZOZOTOWNのようにショッピングサイトをもっているわけではないので、あくまでラインユーザー向けのサービスに止まっていた。

 ところが、ZOZOTOWNでは自社のショッピングサイトで新品を売り、その購入者がZOZOフリマで最長10年間のスパンで不要になったものを処分するということになる。

 しかも、ほとんどが有名ブランドだから、新品は買えないけど中古で十分という賢い消費者のアクセスは増えるはずだ。

 今期のZOZOTOWNとZOZOユーズドの併用者数は全体の5.5%、年間平均購入金額は12万円超で、ZOZOTOWNのみの利用者の2倍以上の購入額となっているという。

 こうした状況から、スタートトゥデイでは、新品購入にも弾みがつくと見ている。

 もはやネットで簡単に買い物ができる。だが、サイトの画像をチラ見し、ブランド名や色柄、デザインが好きだったら即買い。いわゆる「衝動買い」も少なくないはずだ。

 結果として、店舗で現物を試着し、姿見に映しながら、販売スタッフの接客を受けるわけではないから、商品が届いて実際に来て見ると、「何か違う」「しっくり来ない」「今イチ」という印象を受ける購入客はかなりいるのではないか。

 そうこうするうちに返品期間が過ぎ、「しょうがない、売るか」ってことになる。まずはオークションにかけて1円でも高く処分するか、街中のブランドリサイクル店に持ち込むか。

 ただ、買い手が付くまでのタイムラグや買いたたかれるリスクもあるわけで、だったら言い値で処分した方が手元に早くキャッシュが入る。

 また、消費者の大半がかなりのタンス在庫をもっている。トレンドが変われば、着る機会は少なくなるし、次の流行まで待って着ることなど、ほとんどありえないだろう。

 こうした消費者の心理を巧みに捉え、フィットするサービスが、ECの次なる肝なのかもしれない。

 「新車が売れないと、中古車のタマも揃わない」との話は良く聞く。ただ、洋服は車ほど高額ではないし、タンス在庫はかなりに上るだろうから、これが吐き出されれば中古市場は活況を呈する。ただ、そこには「売れるブランド」という条件がつく。

 それらをメーンに狙っている賢い消費者や業者もいる訳で、そこではマーケットが生まれ、ビジネスチャンスがある。それをいかに作り出していくかがカギになると言うことだ。

 ZOZOTOWNに出店している有名ブランドはすでにほとんどがSPA化し、中国などのアジア生産が増えているとは言え、若者にとってはブランドネームの方が優先される。

 だから、それほどダメージがなければ、感覚的にユーズドでも十分の許容範囲になるのである。

 ちまたには全国チェーンから個店まで、ブランド品買い取り店も増えている。こちらが若者を捉えきれているとは言えないことも追い風だ。

 全国チェーンでは、買い取り方法がマニュアル化されてはいるが、アルバイトが査定に携わることや所要時間の長さ、提示された額と期待した金額との開きなど、買い取り相手目線のイメージは拭えない。

 つまり、売り手と買い手の間の限られた市場がそうさせるのである。

 出品者自らが言い値を付けて、それでもOKというお客に買ってもらった方が、お互いにウィンウィンの関係になることができる。こうしたことも売り手と買い手が時空を超えて存在できることがECの魅力である。

 ZOZOフリマは、そうした消費者心理、特に若者の感覚をうまく拾い上げたサービスではないかと思う。ユーズドを購入したお客には、ZOZOポイントがつくわけで、これが新品購入にもつながっていくわけだ。ECは中古市場においても、競争原理をもたらしていくのは間違いない。

 一つ心配材料としては、個人がユーズドで相当額の売上げを上げれば、当然、課税の対象になってくる。

 来年からはマイナンバーが導入されるわけで、もしかしたら税務署がこうしたサービスに番号登録またはサービス事業者に報告の義務を課すかもしれない。

 その辺の制度づくりや法整備が新たな課題になってくるだろう。ビジネスモデルが進化し、消費者にとって便利になることが良いのだが、お上はそこから搾り取ることも忘れていないのだから。
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