昨年、話題になったスマートフォンのホルダー。当方もこれまで何度か、自分でデザインし、革を調達して手作りした。2018年に制作した試作品では、いちばん楽なデザイン、仕様を採った。
幅10cm、長さ90cmほどの帯状の一枚革を用意し、スマホを包むような形状にして左右の縁をワックス糸で縫い合わせるもの。3枚折りにした革の左右の端を互い違いに重ねることでポケットを作り、そこにスマホを収納する。ポケット側の革の端を折り返した上部から2cmほど離すことで、折り返しの空洞に革紐を通して首から吊り下げるようにした。
また、反対側には切り込みを入れて、両端を直径2ミリのサークルポンチで穴を開け、名刺やカードを収められるようにした。交通系カードを入れておくと、地下鉄の改札でそのままタッチ決済もできる。
ただ、ホルダーからスマホを取り出す時に誤って落としてしまうこともある。だから、肝心なのはスマホを落下、破損させない工夫だ。そこでスマホにはアルミの「バンパー」を取り付け、フレームには1.5ミリほどの穴を2つ開けて「ストラップホール」を設けた。これにホームセンターで購入した2重リング付きのコード(芯はてぐす)を通した。
2重リングには「丸カン」を取り付け、丸カンには「スナップフック」を繋いで、フック側を革紐にかけることでホルダーからスマホを引き出しても、落下させる心配がないようにした。フックはそのまま革紐に沿って動くので、スマホを耳に当てても窮屈には感じない。ここまでの仕様は市販のスマホホルダーは取っていない。完全にオリジナルである。この手法は2作目でも踏襲した。
そして、今年は第3作目の制作に取り掛かった。毎月末の金曜日を勝手にプレミアフライデーと設定して、作業時間に当てた。また、試作品、2作目からデザイン、仕様を進化させ、2つ折りのウォレット型にした。外観だけ見ると、2つ折りの長財布に見える。開くと、左側にカード、右側にスマホのホルダー。2作目と同様にスマホには前回より少し上質なバンパー(ストラップホール付き)をつけ、コードストラップとスナップフックをつけて、革紐につけるプランにした。また、ベルトをつけて開きを固定する方法も準備しておくことにした。
これまでもそうだが、まずは頭の中で出来上がりと使いやすさをイメージし、それをもとに各サイズを割り出してillustratorで図面にする。その図面通りに厚手の工作用紙を切って、最初に紙模型を作る。それをもとに合いそうな革や小物を調達すれば、制作の準備は完了だ。あとは型紙に沿って革を切り、パーツを作る。それぞれのコバは「へり落とし」を使って角を落とし、仕上げ剤を塗って下処理する。乾いたら、各パーツをワックス糸で縫い上げていくという流れだ。
仕様が複雑になるほど、工夫したくなる
ここまではスムーズにいくのだが、使用する革によって、伸び率やサイズ感が微妙に変わってくる。今回は2つ折りにしたので、「まち」の幅や革の伸びに差が生じた。カードを収めるための折り返しや長さも紙の型紙と実際の革とでは異なってくる。今回の革は2作目よりもさらに硬かったため、型紙ではジャストサイズでも、実際の革だとカードやスマホを出し入れしやすいようにするにはサイズを小さくする必要もある。そのため、クリップで固定して仮の形状にしておき、それを微調整していくしかない。
また、首から吊り下げるためのストラップをどう取り付けるか。試作品、2作目は革を包むような形状だったから、空洞にストラップを通せばよかった。今回はウォレット型なので、どこにストラップを固定するか。デザインの段階では上部に革辺を取り付け、そこにストラップを通すことを考えた。ただ、ホルダーを閉じた状態では空間がなくなるので、スマートフォンを取り出しにくいことも考えられた。結局、下部まで真っ直ぐ伸ばし、細い革紐に結んだ伸縮コイルとつなぐ仕様にするプランに修正した。
ホルダーを閉じた状態では伸縮コイルの存在はわからない。ストラップと繋いでいるのでホルダーを引っ張ればコイルが伸びる。地下鉄の改札では楽にタッチ決済ができるのではないかと行き着いたアイデアだ。まあ、ウォレット型は初めて作るので、これが完成形ということではない。使いながら少しずつ改良し、次の制作に繋げていくしかないと思う。この辺が販売用ではないホビーのいいところだ。
今回も革は、博多の「いづみ恒商店」で調達した。少しでも切れ端が出ないように型紙を持っていって革の用尺(dsi)をできる限りセーブした。あとは長さ120cmほどの革紐とGCのハンズマンで業務用の「バックル」を購入しただけ。他の材料は前回の残り物を活用した。毎度、こしのある革を使っているので、折り返しなど形状を整えるためにカードやスマホケースを型にしてクリップで仮止めし、革の形を整えることから始めた。
最初は硬さが心配だった革も、長期間にわたってクリップで固定していると、いつの間にか革が伸びて模型に近い形状に馴染んでいく。ただ、革の伸び率は各部や処理の仕方によっても違ってくる。カードホルダーの部分は折り返して下に革を挟むだけだが、スマホホルダーの厚みだけ「まち」を作らないといけない。さらにホルダー部分を下の革に固定するにはまちの裾をフラットに広げ糸で縫うことになる。
革の伸びによって微妙にサイズ感が異なってくるので、カードやスマホをセットした状態で革のパーツを馴染ませてから糸で縫わないと、サイズのズレが生じてしまう。理屈上は、レーザースキャナーやAIを駆使して革の伸び率を計算すれば、量産はできるのだろうが、仕様を複雑にすればするほど、微妙な調整は職人技が必要になるのだ。これはエルメスのバッグなど、革小物全体に言えることではないかと思う。
たかが、レザークラフト、されどレザークラフト。頭の中でデザインを膨らませ、それを形にする段階では、仕様がより複雑になっていく。当然、手作業のハードルも上がっていくのだが、それはそれで工夫を凝らすことで、技術力も上がるし、イメージ通りの物を創作できる。また、余った革は予備のホルダー制作に再利用した。だいぶ前にビーガンレザーが話題になったが、いづみ恒商店によるとまだまだ流通量は限られ、専門家の間でも賛否が分かれているという。
それらも含めて、いろいろ作ってみたいものは山ほどある。ゴールが見えないものだからこそ、クリエイティビティが発揮できる面もある。実に奥深くて、興味は尽きない。
幅10cm、長さ90cmほどの帯状の一枚革を用意し、スマホを包むような形状にして左右の縁をワックス糸で縫い合わせるもの。3枚折りにした革の左右の端を互い違いに重ねることでポケットを作り、そこにスマホを収納する。ポケット側の革の端を折り返した上部から2cmほど離すことで、折り返しの空洞に革紐を通して首から吊り下げるようにした。
また、反対側には切り込みを入れて、両端を直径2ミリのサークルポンチで穴を開け、名刺やカードを収められるようにした。交通系カードを入れておくと、地下鉄の改札でそのままタッチ決済もできる。
ただ、ホルダーからスマホを取り出す時に誤って落としてしまうこともある。だから、肝心なのはスマホを落下、破損させない工夫だ。そこでスマホにはアルミの「バンパー」を取り付け、フレームには1.5ミリほどの穴を2つ開けて「ストラップホール」を設けた。これにホームセンターで購入した2重リング付きのコード(芯はてぐす)を通した。
2重リングには「丸カン」を取り付け、丸カンには「スナップフック」を繋いで、フック側を革紐にかけることでホルダーからスマホを引き出しても、落下させる心配がないようにした。フックはそのまま革紐に沿って動くので、スマホを耳に当てても窮屈には感じない。ここまでの仕様は市販のスマホホルダーは取っていない。完全にオリジナルである。この手法は2作目でも踏襲した。
そして、今年は第3作目の制作に取り掛かった。毎月末の金曜日を勝手にプレミアフライデーと設定して、作業時間に当てた。また、試作品、2作目からデザイン、仕様を進化させ、2つ折りのウォレット型にした。外観だけ見ると、2つ折りの長財布に見える。開くと、左側にカード、右側にスマホのホルダー。2作目と同様にスマホには前回より少し上質なバンパー(ストラップホール付き)をつけ、コードストラップとスナップフックをつけて、革紐につけるプランにした。また、ベルトをつけて開きを固定する方法も準備しておくことにした。
これまでもそうだが、まずは頭の中で出来上がりと使いやすさをイメージし、それをもとに各サイズを割り出してillustratorで図面にする。その図面通りに厚手の工作用紙を切って、最初に紙模型を作る。それをもとに合いそうな革や小物を調達すれば、制作の準備は完了だ。あとは型紙に沿って革を切り、パーツを作る。それぞれのコバは「へり落とし」を使って角を落とし、仕上げ剤を塗って下処理する。乾いたら、各パーツをワックス糸で縫い上げていくという流れだ。
仕様が複雑になるほど、工夫したくなる
ここまではスムーズにいくのだが、使用する革によって、伸び率やサイズ感が微妙に変わってくる。今回は2つ折りにしたので、「まち」の幅や革の伸びに差が生じた。カードを収めるための折り返しや長さも紙の型紙と実際の革とでは異なってくる。今回の革は2作目よりもさらに硬かったため、型紙ではジャストサイズでも、実際の革だとカードやスマホを出し入れしやすいようにするにはサイズを小さくする必要もある。そのため、クリップで固定して仮の形状にしておき、それを微調整していくしかない。
また、首から吊り下げるためのストラップをどう取り付けるか。試作品、2作目は革を包むような形状だったから、空洞にストラップを通せばよかった。今回はウォレット型なので、どこにストラップを固定するか。デザインの段階では上部に革辺を取り付け、そこにストラップを通すことを考えた。ただ、ホルダーを閉じた状態では空間がなくなるので、スマートフォンを取り出しにくいことも考えられた。結局、下部まで真っ直ぐ伸ばし、細い革紐に結んだ伸縮コイルとつなぐ仕様にするプランに修正した。
ホルダーを閉じた状態では伸縮コイルの存在はわからない。ストラップと繋いでいるのでホルダーを引っ張ればコイルが伸びる。地下鉄の改札では楽にタッチ決済ができるのではないかと行き着いたアイデアだ。まあ、ウォレット型は初めて作るので、これが完成形ということではない。使いながら少しずつ改良し、次の制作に繋げていくしかないと思う。この辺が販売用ではないホビーのいいところだ。
今回も革は、博多の「いづみ恒商店」で調達した。少しでも切れ端が出ないように型紙を持っていって革の用尺(dsi)をできる限りセーブした。あとは長さ120cmほどの革紐とGCのハンズマンで業務用の「バックル」を購入しただけ。他の材料は前回の残り物を活用した。毎度、こしのある革を使っているので、折り返しなど形状を整えるためにカードやスマホケースを型にしてクリップで仮止めし、革の形を整えることから始めた。
最初は硬さが心配だった革も、長期間にわたってクリップで固定していると、いつの間にか革が伸びて模型に近い形状に馴染んでいく。ただ、革の伸び率は各部や処理の仕方によっても違ってくる。カードホルダーの部分は折り返して下に革を挟むだけだが、スマホホルダーの厚みだけ「まち」を作らないといけない。さらにホルダー部分を下の革に固定するにはまちの裾をフラットに広げ糸で縫うことになる。
革の伸びによって微妙にサイズ感が異なってくるので、カードやスマホをセットした状態で革のパーツを馴染ませてから糸で縫わないと、サイズのズレが生じてしまう。理屈上は、レーザースキャナーやAIを駆使して革の伸び率を計算すれば、量産はできるのだろうが、仕様を複雑にすればするほど、微妙な調整は職人技が必要になるのだ。これはエルメスのバッグなど、革小物全体に言えることではないかと思う。
たかが、レザークラフト、されどレザークラフト。頭の中でデザインを膨らませ、それを形にする段階では、仕様がより複雑になっていく。当然、手作業のハードルも上がっていくのだが、それはそれで工夫を凝らすことで、技術力も上がるし、イメージ通りの物を創作できる。また、余った革は予備のホルダー制作に再利用した。だいぶ前にビーガンレザーが話題になったが、いづみ恒商店によるとまだまだ流通量は限られ、専門家の間でも賛否が分かれているという。
それらも含めて、いろいろ作ってみたいものは山ほどある。ゴールが見えないものだからこそ、クリエイティビティが発揮できる面もある。実に奥深くて、興味は尽きない。