このコラムでは以前にも触れたが、11月19日「MARK IS 福岡ももち」のプレス内覧会に行って来た。2年連続でプロ野球日本一を達成した福岡ソフトバンクホークスの本拠地、ヤフオクドーム横に三菱地所が開発したショッピングセンター(SC)で、21日のグランドオープン先がけてメディア関係者に公開された。
同地にはもともと「ホークスタウンモール」(2000年の開業)があったが、HKT劇場やフットサルスタジアム、ライブハウスのゼップ福岡など、「コト消費」を重視しすぎて集客では苦戦しテナントが次々と撤退。2010年くらいからは野球がない日やオフシーズンには閑古鳥が鳴く有り様だった。
2015年、三菱地所はそんなホークスタウンモールの再生に名乗りをあげ、土地の所有権をもつシンガポール政府系投資ファンド「GICリアルエステート」から、信託受益権を取得。開発方針についてファンド側と検討を重ねた末、完全に更地して建て替えることを決定した。
三菱地所は再生計画をショッピングセンターとタワーマンション2棟(ザ・パークハウス福岡タワーズ)からなる複合再開発とし、昨年6月から商業施設棟の建設に着工していた。SCは物販115店舗、飲食25店舗、サービス23店舗を集積(うち新業態9店舗、 九州初出店は32店舗)し、福岡の天神以西のSCでは市内最大級。運営管理は天神でイムズを手がける三菱地所リテールマネジメントが行っている。
ポイントはホークスタウンモールの反省、特に集客で苦戦した点をいかに克服できたかである。延床面積はホークスタウンモールの7万6000㎡に対し、MARK IS 福岡ももちは12万5000㎡と1.64倍に拡大。開発規模で勝る分、テナントは物販からサービスまで合計163店舗と充実している。
1階に配置されたのは地場スーパー「ハローデイ」。ホークスタウンモール時代にはスーパーがなかったため、リーシングの決め手になったと思う。SC自体が足下商圏の攻略を旗印に掲げるので、ハローデイもデイリーニーズに即応し、ファミリー向けの惣菜や食品を充実。高齢者ウケしている産直鮮魚の調理加工などを抱き合わせれば、足下商圏の地行や福浜地区の住民を集客できる可能は高い。
ただ、基本路線は売却問題で揺れる西友傘下のサニーにような安売り店ではない。また、隣の百道(ももち)地区にはハローデイ系列の高級スーパー「ボン・ラパス」があり、周辺の住宅密集地には他店も並ぶ。ハローデイは品揃えの充実度や販売企画では他のスーパーより抜きん出ているので、周辺からの車利用客をいかに集客できるか。そして、成否という点ではタワーマンションの完成以降、足下商圏になるマンション住民をどれほど顧客化できるかにかかっていると思う。
2階には、ロンハーマンのコンセプトンショップ「RHC ロンハーマン(RHC RON HERMAN)」、カナダ発のアウトドアブランド「アークテリクス」が九州初進出。他にはインテリアショップの「アクタス」、書店の「ツタヤ ブックストア」。セレクトショップの「ジャーナルスタンダード レリューム」「ナノユニバーズ」「フリークスストア」。ライブホールの「ゼップ福岡」。物販47店、飲食3店、サービス2店が出店する。
RHCロンハーマンが初ものとは言っても、 福岡ではすでに中心部の警固にロンハーマンは出店済みだ。だから、こちらはアートやトイ、サーフィンなどホビーニーズを拡大。“今を感じられる空間”を楽しむストアを目指している。カナダ発のアウトドアブランド、アークテリクスは国内最大の店舗。九州でも代理店を通じた卸で手応えを掴んでおり、クライミングやトレッキングといったハイパフォーマンスから24のタウンユースまでの幅広い展開で、レアな商品を好む顧客の開拓を狙う。
アクタスは天神に近い渡辺通りに既存店があり、市内では2店舗目となる。最初の福岡進出から30年以上を経過しており、ある程度、高級家具市場を掴んだ手応えから、2店舗目の展開に踏み切ったと思う。家具からインテリア雑貨、調理器具、子ども向けグッズまでの品揃えで、湾岸地区の住民を顧客化できるかがカギになる。
ツタヤブックストアは、福岡の中心部では国体道路沿いにあった店舗がビルごとドンキホーテに変わり、こちらは移転というか、新規出店という形になる。九州における旗艦店、広告的ストアの位置づけかもしれないが、代官山やGINZA SIXの店舗のように気軽に立ち寄れないところが難点だ。セレクトショップの3業態は、天神もしくは博多駅に既存店があるので、目新しさは感じない。
ゼップ福岡は施設前のよかトピア通りに架かる歩道橋からペデストリアンデッキで入館が可能になっている。このデッキはヤフオクドームともつながる構造だ。ホークスタウンモールからの横滑りだが、収用人員は2000名から1500名に減っている。キャパを少なくしても小屋を確実に埋め、稼働率を上げる狙いだろう。だが、福岡の中心部には好調なライブホールはいくつもあるので、いかに観客の興味を惹ける出演者や題目を集められるか、運営側の力が試されるところである。
3階はGUやグローバルワークといった大型業態から個店、フードコートを含む飲食まで、49店舗が揃う。フロアはファミリー層を意識してか、小動物と触れ合える「モフアニマルカフェ」、20種類以上の遊具で遊べる「あそびパークプラス」が出店。今年3月、本家米国の本社が350億円もの負債を抱えて倒産した「トイザらス・ベビーザらス」はホークスタウンモール時代にも展開されていたので、再出店となる。
4階はエンタメと家電のフロアで、シネコンの「ユナイテッドシネマ」、「ナムコ」、家電量販店の「コジマ×ビッグカメラ」の他に、英会話や幼児教室、パーソナルジム、ヘアサロンなどがリーシングされている。ユナイテッドシネマもホークスタウン時代から継続出店となり、他のエンタメも既存店があるので特に珍しいというわけではない。
観光スポット化は難しい
テナントの顔ぶれを見ると、ほとんどが既存業態である。一応、新業態9店舗、九州・福岡初出店はジャック&マリー、カヒコなど42店舗はあるものの、そこに行かないと買えないレアな商品とか、受けられない特別なサービスではないから、テナントで差別化し高い集客力を発揮できるとは思えない。ホークスタウンモールから継続出店する店舗も、以前に苦戦を強いられた点では、施設全体の集客力に賭けるしかない不確かな立場だ。
交通アクセスが劣る点は以前から変わらない。路線バスが運行されているとは言え、便数が少なく、地下鉄利用でも唐人町駅から徒歩で10数分はかかる。マイカーでないと自由に行けない点は非常に不便だ。そのため、天神、博多駅を生活圏にしていれば、開業景気を過ぎた後にわざわざ行く必要はないと、多くのお客が思うのではないか。
「コト消費」の時代だからと開発前にはボルダリングやスケートボード、マリンスポーツなどの施設誘致への期待があったが、リーシングには至っていない。また、人工海浜や福岡タワー、福岡博物館などがある西隣の「シーサイドももち」と連携して、東京のお台場のようにエンターテイメントやグルメ、ショッピングを楽しめる観光スポットにすればいいという意見もある。
しかし、お台場のようにモノレールがあるわけではなく、徒歩で回遊しづらいという課題は残ったままだ。第一、シーサイドももちと簡単に連携できるのなら、コト消費を重視したホークスタウンモールがあんなに苦戦していないはずだ。
今回、既存のSCとの差別化として、IT技術を駆使した新しいサービスが導入されている。AIコンシェルジュ「infobot®」は店舗や付帯施設の場所、サービス内容などを 人間の代わりに、音声(英・中・韓にも対応)、と画像で回答してくれるもので、日本初登場。光IDはスマートフォン専用アプリ内のカメラを館内のポスターや照明などにかざすとリンク先のURLを自動で認識するサービスで、こちらも商業施設では初となる。
MARK IS 福岡ももちが設定する足下商圏とは天神を軸に福岡市の西半分、主に早良区、西区、城南区を攻略するしかないと思われる。それにしても施設が立地し、筆者も生活圏にする福岡市中央区は、2015年の国勢調査では「全国女性比率の高い市区町村ランキング」で、 女性を100とした場合の男性比率が80.3%と、ダントツの1位にある。(https://diamond.jp/articles/-/137921?page=2)
同調査による2010年度比の人口増減率はプラス8.0%、平均年齢は42.8歳、65歳以上の比率が18%。つまり、「全国一若い女性が多い街」と言えるのだ。
そうした女性が住むのは、勤務地や学校へのアクセスが良い西鉄大牟田線や地下鉄空港線&七隈線沿線。独身女性はほとんどがマイカーを所有していないし、買い物は天神や博多駅で十分に足りる。必ずしもMARK IS 福岡ももちの足下商圏の人口が増えているわけではないのだ。なおさら市場特性を考えると、旧態依然としたファミリー狙いのSCにどこまでポテンシャルがあるかは不透明だ。識者の中には、「(全国一若い女性が住む市場特性から)三菱地所はSC開発のターゲット設定を見誤った」と言う方すらいる。
施設前の湾岸道路(通称:よかトピア通り)は片側2車線で、野球開催時には非常に渋滞する。来年3月下旬の開幕以降、週末のデーゲーム時には観戦客と買物客で、周辺道路の大混雑が予測される。それに対する緩和策として、歩行者デッキの整備や交差点改良やバス停カットの新設。イベント時には交通量に即した信号時間の調整や周辺道路の路上駐⾞対策の実施。イベント後には都市⾼利⽤者を⻄公園ランプ利⽤から百道ランプ利⽤へ誘導。臨時バスに連節バスの導⼊などがすでに実施されている。
運営管理にあたる三菱地所リテールマネジメントでも、「西鉄や福岡市営地下鉄と連携して最寄りのバス停、駅利用で買い物ポイントが付与されるような公共交通利用の施策も検討している」と、アクセスの難点や道路混雑の課題の克服に取り組んでいる。 だが、これらがマイカー客増加による道路混雑の抜本的な対策につながるとは思えない。
まあ、野球が開催される頃には開業景気も沈静化していると思うが、徒歩で行きづらい点がかえって交通渋滞を引き起こし、「週末は道が混むから、行くのを控えよう」と集客面でずっと尾を引くかもしれない。
現状で言えることは、ホークスタウンモールが集客でかなり苦戦したことから、施設の規模、テナントの数、多少の先進的サービスで何とか対応しようという努力は窺える。だからといって、施設自体はファミリー向けのテナント集積のため、福岡市全体から必ずしも強力に集客できるかは懐疑的だ。
以前から誘致の期待が高かった子どものお仕事体験テーマパーク「キッザニア」は、すでに三井不動産が博多区三筑の青果市場跡地に開発する「ららぽーと」にリーシングし、2022年に開業することが決まっている。三井不動産は同じ中央区の九州大学六本松キャンパス跡地の再開発「六本松421」でも、販売代理を務めるマンションMJR六本松を即日完売させるなど、福岡では営業的に先行する。
地元デベロッパーからは「行き場を失った東京マネーが福岡のマンション投資に向かっている」との話も聞かれる。三菱地所がヤフオクドーム横に開発するタワーマンションのザ・パークハウス福岡タワーズも、資産運用の対象としては完売するかもしれない。だが、最多販売価格は一戸当たり5000万〜6000万円だから、年収ランキングで全国Cクラスの福岡では簡単に購入できる額ではない。東京マネーが資産運用を狙うと言っても家賃が高ければ、借り手はつかない。それはSC業績の懸念材料でもあるのだ。
MARK IS 福岡ももちは広域集客ならぬ狭域集客で、はたしてペイすることができるか。来場客の動向を見ながら、大胆なテナントの入れ替えなどを行わない限り、天神、博多駅に次ぐ福岡第三の商業拠点となることは、相当に難しいと言わざるを得ない。
同地にはもともと「ホークスタウンモール」(2000年の開業)があったが、HKT劇場やフットサルスタジアム、ライブハウスのゼップ福岡など、「コト消費」を重視しすぎて集客では苦戦しテナントが次々と撤退。2010年くらいからは野球がない日やオフシーズンには閑古鳥が鳴く有り様だった。
2015年、三菱地所はそんなホークスタウンモールの再生に名乗りをあげ、土地の所有権をもつシンガポール政府系投資ファンド「GICリアルエステート」から、信託受益権を取得。開発方針についてファンド側と検討を重ねた末、完全に更地して建て替えることを決定した。
三菱地所は再生計画をショッピングセンターとタワーマンション2棟(ザ・パークハウス福岡タワーズ)からなる複合再開発とし、昨年6月から商業施設棟の建設に着工していた。SCは物販115店舗、飲食25店舗、サービス23店舗を集積(うち新業態9店舗、 九州初出店は32店舗)し、福岡の天神以西のSCでは市内最大級。運営管理は天神でイムズを手がける三菱地所リテールマネジメントが行っている。
ポイントはホークスタウンモールの反省、特に集客で苦戦した点をいかに克服できたかである。延床面積はホークスタウンモールの7万6000㎡に対し、MARK IS 福岡ももちは12万5000㎡と1.64倍に拡大。開発規模で勝る分、テナントは物販からサービスまで合計163店舗と充実している。
1階に配置されたのは地場スーパー「ハローデイ」。ホークスタウンモール時代にはスーパーがなかったため、リーシングの決め手になったと思う。SC自体が足下商圏の攻略を旗印に掲げるので、ハローデイもデイリーニーズに即応し、ファミリー向けの惣菜や食品を充実。高齢者ウケしている産直鮮魚の調理加工などを抱き合わせれば、足下商圏の地行や福浜地区の住民を集客できる可能は高い。
ただ、基本路線は売却問題で揺れる西友傘下のサニーにような安売り店ではない。また、隣の百道(ももち)地区にはハローデイ系列の高級スーパー「ボン・ラパス」があり、周辺の住宅密集地には他店も並ぶ。ハローデイは品揃えの充実度や販売企画では他のスーパーより抜きん出ているので、周辺からの車利用客をいかに集客できるか。そして、成否という点ではタワーマンションの完成以降、足下商圏になるマンション住民をどれほど顧客化できるかにかかっていると思う。
2階には、ロンハーマンのコンセプトンショップ「RHC ロンハーマン(RHC RON HERMAN)」、カナダ発のアウトドアブランド「アークテリクス」が九州初進出。他にはインテリアショップの「アクタス」、書店の「ツタヤ ブックストア」。セレクトショップの「ジャーナルスタンダード レリューム」「ナノユニバーズ」「フリークスストア」。ライブホールの「ゼップ福岡」。物販47店、飲食3店、サービス2店が出店する。
RHCロンハーマンが初ものとは言っても、 福岡ではすでに中心部の警固にロンハーマンは出店済みだ。だから、こちらはアートやトイ、サーフィンなどホビーニーズを拡大。“今を感じられる空間”を楽しむストアを目指している。カナダ発のアウトドアブランド、アークテリクスは国内最大の店舗。九州でも代理店を通じた卸で手応えを掴んでおり、クライミングやトレッキングといったハイパフォーマンスから24のタウンユースまでの幅広い展開で、レアな商品を好む顧客の開拓を狙う。
アクタスは天神に近い渡辺通りに既存店があり、市内では2店舗目となる。最初の福岡進出から30年以上を経過しており、ある程度、高級家具市場を掴んだ手応えから、2店舗目の展開に踏み切ったと思う。家具からインテリア雑貨、調理器具、子ども向けグッズまでの品揃えで、湾岸地区の住民を顧客化できるかがカギになる。
ツタヤブックストアは、福岡の中心部では国体道路沿いにあった店舗がビルごとドンキホーテに変わり、こちらは移転というか、新規出店という形になる。九州における旗艦店、広告的ストアの位置づけかもしれないが、代官山やGINZA SIXの店舗のように気軽に立ち寄れないところが難点だ。セレクトショップの3業態は、天神もしくは博多駅に既存店があるので、目新しさは感じない。
ゼップ福岡は施設前のよかトピア通りに架かる歩道橋からペデストリアンデッキで入館が可能になっている。このデッキはヤフオクドームともつながる構造だ。ホークスタウンモールからの横滑りだが、収用人員は2000名から1500名に減っている。キャパを少なくしても小屋を確実に埋め、稼働率を上げる狙いだろう。だが、福岡の中心部には好調なライブホールはいくつもあるので、いかに観客の興味を惹ける出演者や題目を集められるか、運営側の力が試されるところである。
3階はGUやグローバルワークといった大型業態から個店、フードコートを含む飲食まで、49店舗が揃う。フロアはファミリー層を意識してか、小動物と触れ合える「モフアニマルカフェ」、20種類以上の遊具で遊べる「あそびパークプラス」が出店。今年3月、本家米国の本社が350億円もの負債を抱えて倒産した「トイザらス・ベビーザらス」はホークスタウンモール時代にも展開されていたので、再出店となる。
4階はエンタメと家電のフロアで、シネコンの「ユナイテッドシネマ」、「ナムコ」、家電量販店の「コジマ×ビッグカメラ」の他に、英会話や幼児教室、パーソナルジム、ヘアサロンなどがリーシングされている。ユナイテッドシネマもホークスタウン時代から継続出店となり、他のエンタメも既存店があるので特に珍しいというわけではない。
観光スポット化は難しい
テナントの顔ぶれを見ると、ほとんどが既存業態である。一応、新業態9店舗、九州・福岡初出店はジャック&マリー、カヒコなど42店舗はあるものの、そこに行かないと買えないレアな商品とか、受けられない特別なサービスではないから、テナントで差別化し高い集客力を発揮できるとは思えない。ホークスタウンモールから継続出店する店舗も、以前に苦戦を強いられた点では、施設全体の集客力に賭けるしかない不確かな立場だ。
交通アクセスが劣る点は以前から変わらない。路線バスが運行されているとは言え、便数が少なく、地下鉄利用でも唐人町駅から徒歩で10数分はかかる。マイカーでないと自由に行けない点は非常に不便だ。そのため、天神、博多駅を生活圏にしていれば、開業景気を過ぎた後にわざわざ行く必要はないと、多くのお客が思うのではないか。
「コト消費」の時代だからと開発前にはボルダリングやスケートボード、マリンスポーツなどの施設誘致への期待があったが、リーシングには至っていない。また、人工海浜や福岡タワー、福岡博物館などがある西隣の「シーサイドももち」と連携して、東京のお台場のようにエンターテイメントやグルメ、ショッピングを楽しめる観光スポットにすればいいという意見もある。
しかし、お台場のようにモノレールがあるわけではなく、徒歩で回遊しづらいという課題は残ったままだ。第一、シーサイドももちと簡単に連携できるのなら、コト消費を重視したホークスタウンモールがあんなに苦戦していないはずだ。
今回、既存のSCとの差別化として、IT技術を駆使した新しいサービスが導入されている。AIコンシェルジュ「infobot®」は店舗や付帯施設の場所、サービス内容などを 人間の代わりに、音声(英・中・韓にも対応)、と画像で回答してくれるもので、日本初登場。光IDはスマートフォン専用アプリ内のカメラを館内のポスターや照明などにかざすとリンク先のURLを自動で認識するサービスで、こちらも商業施設では初となる。
MARK IS 福岡ももちが設定する足下商圏とは天神を軸に福岡市の西半分、主に早良区、西区、城南区を攻略するしかないと思われる。それにしても施設が立地し、筆者も生活圏にする福岡市中央区は、2015年の国勢調査では「全国女性比率の高い市区町村ランキング」で、 女性を100とした場合の男性比率が80.3%と、ダントツの1位にある。(https://diamond.jp/articles/-/137921?page=2)
同調査による2010年度比の人口増減率はプラス8.0%、平均年齢は42.8歳、65歳以上の比率が18%。つまり、「全国一若い女性が多い街」と言えるのだ。
そうした女性が住むのは、勤務地や学校へのアクセスが良い西鉄大牟田線や地下鉄空港線&七隈線沿線。独身女性はほとんどがマイカーを所有していないし、買い物は天神や博多駅で十分に足りる。必ずしもMARK IS 福岡ももちの足下商圏の人口が増えているわけではないのだ。なおさら市場特性を考えると、旧態依然としたファミリー狙いのSCにどこまでポテンシャルがあるかは不透明だ。識者の中には、「(全国一若い女性が住む市場特性から)三菱地所はSC開発のターゲット設定を見誤った」と言う方すらいる。
施設前の湾岸道路(通称:よかトピア通り)は片側2車線で、野球開催時には非常に渋滞する。来年3月下旬の開幕以降、週末のデーゲーム時には観戦客と買物客で、周辺道路の大混雑が予測される。それに対する緩和策として、歩行者デッキの整備や交差点改良やバス停カットの新設。イベント時には交通量に即した信号時間の調整や周辺道路の路上駐⾞対策の実施。イベント後には都市⾼利⽤者を⻄公園ランプ利⽤から百道ランプ利⽤へ誘導。臨時バスに連節バスの導⼊などがすでに実施されている。
運営管理にあたる三菱地所リテールマネジメントでも、「西鉄や福岡市営地下鉄と連携して最寄りのバス停、駅利用で買い物ポイントが付与されるような公共交通利用の施策も検討している」と、アクセスの難点や道路混雑の課題の克服に取り組んでいる。 だが、これらがマイカー客増加による道路混雑の抜本的な対策につながるとは思えない。
まあ、野球が開催される頃には開業景気も沈静化していると思うが、徒歩で行きづらい点がかえって交通渋滞を引き起こし、「週末は道が混むから、行くのを控えよう」と集客面でずっと尾を引くかもしれない。
現状で言えることは、ホークスタウンモールが集客でかなり苦戦したことから、施設の規模、テナントの数、多少の先進的サービスで何とか対応しようという努力は窺える。だからといって、施設自体はファミリー向けのテナント集積のため、福岡市全体から必ずしも強力に集客できるかは懐疑的だ。
以前から誘致の期待が高かった子どものお仕事体験テーマパーク「キッザニア」は、すでに三井不動産が博多区三筑の青果市場跡地に開発する「ららぽーと」にリーシングし、2022年に開業することが決まっている。三井不動産は同じ中央区の九州大学六本松キャンパス跡地の再開発「六本松421」でも、販売代理を務めるマンションMJR六本松を即日完売させるなど、福岡では営業的に先行する。
地元デベロッパーからは「行き場を失った東京マネーが福岡のマンション投資に向かっている」との話も聞かれる。三菱地所がヤフオクドーム横に開発するタワーマンションのザ・パークハウス福岡タワーズも、資産運用の対象としては完売するかもしれない。だが、最多販売価格は一戸当たり5000万〜6000万円だから、年収ランキングで全国Cクラスの福岡では簡単に購入できる額ではない。東京マネーが資産運用を狙うと言っても家賃が高ければ、借り手はつかない。それはSC業績の懸念材料でもあるのだ。
MARK IS 福岡ももちは広域集客ならぬ狭域集客で、はたしてペイすることができるか。来場客の動向を見ながら、大胆なテナントの入れ替えなどを行わない限り、天神、博多駅に次ぐ福岡第三の商業拠点となることは、相当に難しいと言わざるを得ない。