桜の開花や花見のシーズンもあっという間に過ぎ去った。福岡天神は気温20℃超えの日もあり、昨年末に創った「春レザー」もワードローブ入りとなった。
カジュアルは年中、ほぼコットンとレザーで過ごせる筆者にとって、辛いのはむしろこれからのシーズン。寒ければ着込めばいいが、熱いからと脱ぐわけにはいかない。しかも、汗が服に染みるだけでなく、肌がベタついて気持ち悪い。仕事柄、室内業務だけでなく、屋外での徒歩移動やロケの時はたいへんで、10月くらいまで我慢の日々が続く。
もちろん制汗対策の衣料もあるが、合繊素材が肌に合わないし、あのペタッとした素材感が好きになれないので、着用することはない。だからといって、綿や麻を着ても汗で肌がベトベトになるから、事務所に着替えを用意して対応している。出張の時も同じで多め着替えを持っていき、多スケジュールのケースではホテルで一旦着替えて、次をこなすようにしている。
そんな中で、2年ほど前から夏場の素材として試しているのが、和紙糸を撚り込んだ「和紙繊維」だ。これは1000年以上の保存に耐え得るという和紙の特性を生かし、水分を含ませたり、乾燥した状態で撚った糸を使って織ったり編み立てしたもの。綿とも麻とも違う独特な風合いで、汗をかいてもベトつかないところが気に入っている。
最初に購入したのはニット帽。気に入ったのはその質感だ。和紙そのものはこうぞやみつまたなどの植物が原料で、長い繊維が絡み合い、粗くざらっとしている。顕微鏡で見るまでもなく、繊維間の隙間が多い=多孔性があるので、風通しが良く、乾きがいいことから、肌のベトつきも抑えられる。
夏場のニット帽は頭が蒸れそうだが、筆者は額から吹き出る汗で眼鏡が曇ったり、汚れたりするので、汗留めの役割で使っている。汗の量はフェイスタオルで拭える分をはるかに超えるので、余分は帽子で塞き止めるしかない。移動やロケの時に被っていられるし、打ち合わせがあっても帽子を脱げば、ベタついた顔で相手を不快させることもない。
一昨年に購入したものは生成りのリブワッチで、綿57%、和紙43%の日本製。ほぼ同じサイズのリブワッチ(某SPA製、綿45%麻55%)は一度手洗いしただけで、伸びて型ぐずれしてしまった。だが、和紙繊維が混紡されたものは、一応ドライクリーニング表示であるもののネット洗濯でも伸びはなく、2年目以降も頭にフィットしている。今年は洗い替えようにもう一つ欲しいので、目下探しているところである。
和紙素材を利用したアイテムはいろいろと企画されているようで先日、繊研PLUSで「淡路島生まれの和紙ソックス」が紹介されていた。記事には「淡路メリヤスという靴下メーカーが梅の種を炭化して紙に練り込み、それをスリットヤーンにした梅炭抄繊糸を使った靴下に力を入れている」とあった。梅炭は湿度を調節できて消臭効果にも期待できるそうで、和紙糸の軽さやシャリ感を生かし、淡路島生まれの国産ソックスを広げていく考えとか。ニット帽が作れるのだから、靴下だってできなくはないということだ。
この和紙ソックスの登場は、筆者にとっては朗報である。汗かき、脂手はそのまま足にも共通で、夏場に素足のまま部屋を歩くだけで、家族から「床や畳がベタベタする」とクレームが付く。事務所の床はフローリングなのでスリッパで過ごせるが、それも夏場は素足だから汗染みや汚れが酷く、1シーズンで買い替えになければならない。こちらはただでさえ、熱いから素足のままでいたいのだが、家族には「靴下を履け」と強要される始末だ。まさにそんな筆者に理想的な靴下と思う。
そもそも、靴下は遠赤効果による保温性、ビジネスシューズ向けの消臭や抗菌、乾燥・アレルギーの防止、疲れやむくみ取りなどを謳ったものはあるが、夏場向けではトレンドも影響してかくるぶしまでか、フットカバーのようなものしかない。綿100%素材もないことないが、水虫予防などビジネスマン向けになる。足という特異な形状の部位に被せるには伸縮性のあるニット系繊維が使うことになり、指先や踵にある程度の強度を求めれば、どうしても合繊の混紡が増えてしまう。
だから、靴下を選ぶ時、特に夏用は綿の混紡率が多いものにする。普段は事務所近くのタビオや無印良品、ドンキホーテで購入しているが、別のブランドを買うのは繊維や混紡率で新しいものが発売される時だと思っていた。「淡路島生まれの和紙ソックス」は、まさにその契機となりそうだ。
目下、販路は化粧品関連の通販、スポーツメーカーのOEMが中心で、少しずつ生産を拡大している途上のようだ。まだまだメジャーな商品ではないことから、店頭で気軽に買える状況ではない。ネットで検索すると、別のブランドとして「イトイテックス」というのがあった。こちらはスポーツ&アウトドア系のアイテムとして、専門店が扱っている。そうしたマーケットが先行しているのかと、改めて実感した。
自衛隊員の靴下にも採用されているというから、訓練で何日もブーツの下に履き続けても足にはいいということ。調湿性をもつ糸で編んでいるから、登山などにも共通するベクトルの商品だというのも頷ける。ミリタリー系の靴下を「軍足」と呼べば、また左翼から軍靴の音を思い起こさせるなんて言われそうだ。しかし、亜熱帯、高温多湿の戦地で兵士の足を守るために、日本が持てる資源と知恵を最大限に生かして編み出したものがかつてもあったと言うことである。
今日では、いろんな新素材も開発されている。靴下も合繊主体の方が生産効率はいいし、技術的にいろいろアイテムにも応用できると思う。消耗品だから、ローコストの製品の方が合理的かもしれない。別に天然繊維を礼賛するわけでもないし、天然=善、合繊=悪というつもりもない。ただ、筆者の肌には合うし、好きだから、選ぶだけである。
今日まで継承してきた和紙の機能を生かし、繊維に組み合わせるアイデアで、新しいアイテムを作り出すのも、いかにもメイドインジャパンらしい。初期の頃の無印良品も天然素材を利用したアイテムが揃い、確か軍足の作りを応用したものがあったように記憶する。無印が打ち出した天然繊維を使った商品企画だ。最近は価格訴求でほとんど見かけなくなったが、別の切り口で和紙を利用した商品は作れるのではないかと思う。
淡路島の和紙ソックスは、販路が限定されているので、一般にはまだ手に入りにくい。価格も1足1300円と高価だから、淡路島のウエスティンホテル淡路、淡路ハイウェイオアシスなどで販売されるお土産的なグッズに止まっている。
淡路島に限らず、和紙ソックスは素材、機能とも素晴らしいのだが、価格の面で高額だから、まだまだ市場はアウトドア系専門アイテムの域を出ていない。もし、タビオや無印がPBにしてくれれば量産化され、価格も1000円以下に収まり、メジャーになると思うのだが、まずま1足履いて試してみたい。
靴下がOKなら、衣服への採用もできなくはないだろう。まずはストレッチ系のジャケットなんかで試作をしてもいいかと勝手に思っている。
カジュアルは年中、ほぼコットンとレザーで過ごせる筆者にとって、辛いのはむしろこれからのシーズン。寒ければ着込めばいいが、熱いからと脱ぐわけにはいかない。しかも、汗が服に染みるだけでなく、肌がベタついて気持ち悪い。仕事柄、室内業務だけでなく、屋外での徒歩移動やロケの時はたいへんで、10月くらいまで我慢の日々が続く。
もちろん制汗対策の衣料もあるが、合繊素材が肌に合わないし、あのペタッとした素材感が好きになれないので、着用することはない。だからといって、綿や麻を着ても汗で肌がベトベトになるから、事務所に着替えを用意して対応している。出張の時も同じで多め着替えを持っていき、多スケジュールのケースではホテルで一旦着替えて、次をこなすようにしている。
そんな中で、2年ほど前から夏場の素材として試しているのが、和紙糸を撚り込んだ「和紙繊維」だ。これは1000年以上の保存に耐え得るという和紙の特性を生かし、水分を含ませたり、乾燥した状態で撚った糸を使って織ったり編み立てしたもの。綿とも麻とも違う独特な風合いで、汗をかいてもベトつかないところが気に入っている。
最初に購入したのはニット帽。気に入ったのはその質感だ。和紙そのものはこうぞやみつまたなどの植物が原料で、長い繊維が絡み合い、粗くざらっとしている。顕微鏡で見るまでもなく、繊維間の隙間が多い=多孔性があるので、風通しが良く、乾きがいいことから、肌のベトつきも抑えられる。
夏場のニット帽は頭が蒸れそうだが、筆者は額から吹き出る汗で眼鏡が曇ったり、汚れたりするので、汗留めの役割で使っている。汗の量はフェイスタオルで拭える分をはるかに超えるので、余分は帽子で塞き止めるしかない。移動やロケの時に被っていられるし、打ち合わせがあっても帽子を脱げば、ベタついた顔で相手を不快させることもない。
一昨年に購入したものは生成りのリブワッチで、綿57%、和紙43%の日本製。ほぼ同じサイズのリブワッチ(某SPA製、綿45%麻55%)は一度手洗いしただけで、伸びて型ぐずれしてしまった。だが、和紙繊維が混紡されたものは、一応ドライクリーニング表示であるもののネット洗濯でも伸びはなく、2年目以降も頭にフィットしている。今年は洗い替えようにもう一つ欲しいので、目下探しているところである。
和紙素材を利用したアイテムはいろいろと企画されているようで先日、繊研PLUSで「淡路島生まれの和紙ソックス」が紹介されていた。記事には「淡路メリヤスという靴下メーカーが梅の種を炭化して紙に練り込み、それをスリットヤーンにした梅炭抄繊糸を使った靴下に力を入れている」とあった。梅炭は湿度を調節できて消臭効果にも期待できるそうで、和紙糸の軽さやシャリ感を生かし、淡路島生まれの国産ソックスを広げていく考えとか。ニット帽が作れるのだから、靴下だってできなくはないということだ。
この和紙ソックスの登場は、筆者にとっては朗報である。汗かき、脂手はそのまま足にも共通で、夏場に素足のまま部屋を歩くだけで、家族から「床や畳がベタベタする」とクレームが付く。事務所の床はフローリングなのでスリッパで過ごせるが、それも夏場は素足だから汗染みや汚れが酷く、1シーズンで買い替えになければならない。こちらはただでさえ、熱いから素足のままでいたいのだが、家族には「靴下を履け」と強要される始末だ。まさにそんな筆者に理想的な靴下と思う。
そもそも、靴下は遠赤効果による保温性、ビジネスシューズ向けの消臭や抗菌、乾燥・アレルギーの防止、疲れやむくみ取りなどを謳ったものはあるが、夏場向けではトレンドも影響してかくるぶしまでか、フットカバーのようなものしかない。綿100%素材もないことないが、水虫予防などビジネスマン向けになる。足という特異な形状の部位に被せるには伸縮性のあるニット系繊維が使うことになり、指先や踵にある程度の強度を求めれば、どうしても合繊の混紡が増えてしまう。
だから、靴下を選ぶ時、特に夏用は綿の混紡率が多いものにする。普段は事務所近くのタビオや無印良品、ドンキホーテで購入しているが、別のブランドを買うのは繊維や混紡率で新しいものが発売される時だと思っていた。「淡路島生まれの和紙ソックス」は、まさにその契機となりそうだ。
目下、販路は化粧品関連の通販、スポーツメーカーのOEMが中心で、少しずつ生産を拡大している途上のようだ。まだまだメジャーな商品ではないことから、店頭で気軽に買える状況ではない。ネットで検索すると、別のブランドとして「イトイテックス」というのがあった。こちらはスポーツ&アウトドア系のアイテムとして、専門店が扱っている。そうしたマーケットが先行しているのかと、改めて実感した。
自衛隊員の靴下にも採用されているというから、訓練で何日もブーツの下に履き続けても足にはいいということ。調湿性をもつ糸で編んでいるから、登山などにも共通するベクトルの商品だというのも頷ける。ミリタリー系の靴下を「軍足」と呼べば、また左翼から軍靴の音を思い起こさせるなんて言われそうだ。しかし、亜熱帯、高温多湿の戦地で兵士の足を守るために、日本が持てる資源と知恵を最大限に生かして編み出したものがかつてもあったと言うことである。
今日では、いろんな新素材も開発されている。靴下も合繊主体の方が生産効率はいいし、技術的にいろいろアイテムにも応用できると思う。消耗品だから、ローコストの製品の方が合理的かもしれない。別に天然繊維を礼賛するわけでもないし、天然=善、合繊=悪というつもりもない。ただ、筆者の肌には合うし、好きだから、選ぶだけである。
今日まで継承してきた和紙の機能を生かし、繊維に組み合わせるアイデアで、新しいアイテムを作り出すのも、いかにもメイドインジャパンらしい。初期の頃の無印良品も天然素材を利用したアイテムが揃い、確か軍足の作りを応用したものがあったように記憶する。無印が打ち出した天然繊維を使った商品企画だ。最近は価格訴求でほとんど見かけなくなったが、別の切り口で和紙を利用した商品は作れるのではないかと思う。
淡路島の和紙ソックスは、販路が限定されているので、一般にはまだ手に入りにくい。価格も1足1300円と高価だから、淡路島のウエスティンホテル淡路、淡路ハイウェイオアシスなどで販売されるお土産的なグッズに止まっている。
淡路島に限らず、和紙ソックスは素材、機能とも素晴らしいのだが、価格の面で高額だから、まだまだ市場はアウトドア系専門アイテムの域を出ていない。もし、タビオや無印がPBにしてくれれば量産化され、価格も1000円以下に収まり、メジャーになると思うのだが、まずま1足履いて試してみたい。
靴下がOKなら、衣服への採用もできなくはないだろう。まずはストレッチ系のジャケットなんかで試作をしてもいいかと勝手に思っている。