HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

打ち上げ花火は要らない。

2016-03-30 08:27:32 | Weblog
 ファッションウィーク福岡も、主催者側も穿った見方とは対照的に、大した盛り上がりも見せずに先週末で終了した。的外れのポスター、むなしく旗めくフラッグ、賛同をでっち上げるための門外漢の参加店、ミーハー好みで中身がないイベント…。

 ファッション業界がますます疲弊していく中で、常套句の「服を買ってもらう」「活性化」を口実にしたところで、潤うのは利害関係者だけというのが、よくわかるイベント週間だった。

 行政はこの事業に多額の税金を投入しているが、行きつく先はメディア、芸能界、業者であって、地場業界が活性化する糸口すら全く見えない。参加した大手商業施設も所詮、主催者側の事業費を出してくれるスポンサーにでしかないことがよくわかる。

 ファッション業界が今、どんな状況なのか。ノー天気なイベント事業に隠れて実態はほとんど浮かび上がっていないのが、実情である。

 そんなことを考えながら、立ち寄った博多駅で、4月21日に開業する博多マルイが、「つながるプロジェクト」と題して、下取りキャンペーン&リユースマーケットを実施していた。オープンすれば、「競合」いや「共生」することになる博多阪急の目の前でである。

 博多駅前広場は所有するJR九州が「賑わい交流空間」として、観光PRや物産展、演奏会や発表会、行政や企業の社会貢献活動などに貸し出している。使用要領によると、朝の9時から夜の9時までのフル借用で、料金は全面使用が平日324,000円、土日祝が540,000円、2分の1使用が平日194,000円、土日祝32,4000円と、高額だ。

 マルイの場合は小規模なスペースだから、料金は平日、土日祝共通の54,000円の枠ではないかと思う。ただ、経費の問題ではない。マルイがオープン前から地元に密着しようという姿勢がとても感じられるのだ。

 下取り対象品は、衣料品、婦人靴(1回につき最大15点まで)。持ち込んだ下取り品1点につき、博多マルイで利用できる200円割引券と交換される。この割引券は同日1ショップの買い物合計税込2000円ごとに1枚使用できるようになっている。

 この開催にあたっては、地元の西南学院大学商学部の佐藤ゼミとタイアップしている。1人でも多くの人々に衣料品や靴を持ち込んでもらうために、ゼミの学生がリーフレットを作成し、さらに「マスクを使って、家内を掃除をして」との学生のアイデアで、大学と丸井のロゴが入った1000個のマスクも駅前で一緒に配布した。

 また、学生の声かけで50名以上の人々が賛同し、ゼミのツイッターではイベントを告知する動画を発信している。

 マルイにとっては、200円の割引券がそれほど販促、実売に結びつくとは思っていないだろう。むしろ、地元密着の中で資源保護やリサイクルといった社会的活動を先行させる一方、リユースを促進させることで市場の活性化につなげる狙いもみられる。マルイが経費をかけてそこまでやっている点は見習うべきだと思う。

 業界では下取りやリユースはどんどん広がっている。一時は紳士服量販店が実施していたが、ECの浸透で個人が新古や中古の商品を堂々と販売できるようになった。これまでリサイクルショップに買いたたかれていたが、時空を超えて「買いたい人」がいれば、相応の値段で取引される。それがプロパーの販売に影響を及ぼせば、好循環となるはずだ。

 リユースはまだまだヤング人気のブランドが主体だが、「大人向けの上質なブランド」も踏み出してもいいのではないか。中高年でも着ていない服はかなりあると聞く。それをタンス在庫にしておくのはもったいないし、リユース市場に乗せることが新たな販売機会を呼び起こせるかもしれない。

 大人向けブランドはヤングのように知名度はないが、専門店で販売しているような商品は高価格、ハイクオリティな商品が少なくない。であれば、リユース市場は十分にあると思う。それをどうして喚起していくかなのである。

 話をファッションウィーク福岡に戻そう。それこそ「服を買ってもらう」という大義があるのなら、チンケなイベントよりも購買環境の活性に踏み込むべきではないのか。服はどんどん売れなくなっている。これは紛れもない事実である。だからこそ、売るための施策が必要なのだ。リユースは間違いなくその一つになる。

 例えば、春先にイベントを実施するなら、冬物のセール中から1~2ヵ月程度リユースキャンペーンを張っても良いと思う。福岡中のショップ、専門店に呼びかけ、顧客から着ない服を集めてもらう、それを揃えてファッションウィークの間に大々的なリユースマーケットを開催するのだ。

 着ない服を持ち込んでくれた顧客には、福岡中の全店共通の買い物割引のチケットを渡せばいい。(将来的には電子ポイントになると思うが)ポスターやビラよりもはるかに経費はかからないで、効果が期待できる。なおさら、全店参加型のキャンペーンとなれば、エリア的な不公平感もない。

 マーケットの場所は、市役所前の広場か、岩田屋前、博多駅前が良いだろう。2年前のファッションマートでは、「クリエーションの発信」「バザールではありません」なんて大上段に宣言していたが、所詮、出店者の程度は知れた。そんなことは端からわかっていたはずだ。ノー無しの企画運営委員長が自分の権威づけに宣っただけで、本人も大方想像はついたはずである。現に自分の学校の学生には古着を売らせたのだから。だったら、最初からリユースマーケットにすれば良かったのである。

 リユース品を回収して、イベント期日までの商品管理は、市役所や商工会議所の空き室を利用すればいい。商品展開に必要な什器は地元メーカーや店舗業者から貸し出し提供してもらう。もちろん、提供スポンサー名は必ず告知し、マーケット開催中はエンドレスで名前を告知する。

 スタッフは大学生や専門学校生にボランティアで協力を願う。同時にリユースマーケットの派手なロゴマークをデザインしてもらい、採用する。もちろん、ロゴはウィンドブレーカーの背中にレイアウトしてユニフォームを作れば良い。

 同時にお客さんにリユース商品を持ち帰ってもらうためにリサイクルバッグも作り有料で販売する。もちろん、派手なロゴ入りだから街中に溢れるとキャンペーン効果は抜群だろう。経費がかかるのでSP衣料やパッケージのメーカーをスポンサーにするという手段もある。

 取引は1人何点までと点数を決めて無料で渡しても良い。おそらく、ストリートパーティなんかの俄イベントよりも、はるかに集客効果はあると思う。どんなリユース品が人気があるか、簡単なデータをとっても良い。それを学生にリポートさせることもできるだろう。そうすれば、福岡のファッションを売るためには何が必要かをショップ、お客さんの両方にアピールすることができるはずである。

 有料の場合は売上げを東日本被災者に支援して良いと思う。処分できない在庫は、リサイクルに回すか、アジアの発展途上国に寄附するという手段もある。とにかく誰かが喜んで着てくれれば服は甦るし、活性化の糸口にもつながる。

 リユース商品の回収にも学生のマンパワーを借りれば良い。地元の大学生がゼミを通じていろんな地域活動をしているのは、筆者もパンフレットを制作したことがあるので、よく承知している。

 むしろ、ファッションを学ぶ専門学校生ほど参加すべきではないのか。イベントショーのために服をデザインしたところで、企画、デザイナーの道が開けるなんて未だに考えているとすれば、業界知らずも甚だしいところだ。

 服離れでファッション業界は売上げ不振、アパレルメーカーはどんどん疲弊している。簡単にデザイナーへの就職があるはずもない。クリエーションや技術教育を否定はしないが、服が売れなければ、そもそもの展望が開けない。だからこそ、服を売るためには、買う側の視点で考えることも必要なのである。

 リユースに持ち込まれた服の回収に当たることで、「なぜ、着なくなったのか」「タンス在庫の理由は何か」「着るとすればどうすればいいか」等々。企画やデザインに当たりたい人間にとって、大事なことが学べるはずなのだ。

 福岡は商業の街である。ファッション業界は小売りが活気づくことで潤うのだ。そんなことさえ考えず、単なる活性化を口実にノー天気なイベントを行い、販促にもつながらない「物」の制作にカネをかけたところで、業界が活気づくはずはない。

 所詮、ファッション業界は、メディアや業者にとって行政から事業費を捻出させる打ち出の小槌にされているのがよくわかる。

 派手な打ち上げ花火を上げることほど無意味なことはない。売れる環境を創造するための地道な取り組みが不可欠なのである。博多マルイの愚直なまでの活動を見て、福岡に何が必要なのかをわかるような気がする。

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