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前々回、 ZOZOTOWNが商品購入代金を最大で2ヵ月遅らせる「ツケ払い」について書いた。 ツケ払いはビジネス系のネットメディアも注目しているようで、スタートトゥデイの前澤友作社長が決算発表で語ったコメントを取り上げている記事もある。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170428-00000102-zdn_mkt-bus_all
それらによると、今回のツケ払いについて前澤社長は、
「テレビCMはツケ払いを訴求した。その結果、認知度、利用率が上がった。この成果が、17年4月以降の業績にも好影響を与える」
「利用率についてはお答えできない。未払いがどれくらいなのかは把握していない」
「GMO(ペイメントサービス)とは共同でやっているサービスなので、不測の事態があればお互いに話し合って解決していく」
「建設的に取引をしているし、危惧するところはない。このまま継続サービスとしてやっていきたい」
と説明したと、なっている。
決算発表では、新規ユーザーがどれほど獲得できたかは語られていないが、PR効果は抜群で、売上げに上積みされたのは間違いないようだ。ただ、 ZOZOTOWNの既存客は、基本的にクレジットカードや代引きを選択すると思う。ツケ払いにしたところで、2ヵ月先には支払わないといけない。端から支払いを先延ばしするなら、ボーナス一括払いを選択するのではないか。
そう考えると、新規ユーザーの8割程度は、カードを持たない学生や未成年ではないかと思われる。そこで懸念されるのが、2ヵ月先の「未払い率」である。前澤社長は未払い率について把握していない、また不測の事態があれば、お互いに話し合って解決していくと説明した。
これは「あまりに未支払いが増えた時、ツケ払いへの与信審査にも影響が及ぶから、対策を講じなければならない」ということではないか。言い換えれば、スタートトゥデイにとっては、未払い率がGMOペイメントサービスのレッドラインに達しない限り、それほど心配することではないとも、受け取れる。
一般のクレジットカードでは、かつては「毎月の未払い率が10%程度ある」と言われた。今では非正規雇用や自己破産が増えているため、さらに増加しているのではないかと思うが、詳細のところはよくわからない。
決済はあくまで代行会社のGMOペイメントサービスの仕事だ。筆者が以前に書いたように「ZOZOTOWNはGMOペイメントサービスに決済を代行してもらい、同社がユーザーから代金を回収する」のだから、未支払いはスタートトゥデイに直接は関係ないのである。
前澤社長は本年度もサービスを継続するというから、ツケ払いという売上げ刺激策で、当面の業績アップに弾みをつける狙いと思われる。もっとも、利用率や未払い率が公表されてない点は、未成年者が支払いに窮することや金銭感覚を麻痺させる危険性に触れられたくないためとも考えられる。あまりにそこを突っ込まれたり、対応策に追われるようでは、せっかくの売上げ刺激策に水を差すからだ。
ただ、一方で収入が少ない若者が支払えないケースが生じることへの懸念が払拭されたわけではない。
ネットでの報告では、
「ツケ払いの支払い通知を放置していて、気が付いたら督促状が来ていた」
というから、認知度、利用率は上がったものの、「2ヵ月後に支払う」という「約定」は十分に浸透していないと解釈することもできる。というか、やはり購入時点でお金がなく、「2ヵ月経てばなんとかなるだろう」という意識のユーザーもいるのではないのか。実に驚くことだ。
ネット通販事業者は、今やツケ払いを導入し決済代行会社に手数料を支払ってまでしないと、売上げを確保せざるを得ないところまで行きついてしまったと言える。そう考えると今後、スタートトゥデイがこうした施策でどこまで売上げを伸ばせるか。はたまた、単なるファッション通販事業の枠に止まるだけなのか。ネット通販の行きつく将来はどう展望するかである。
ZOZOTOWNは単なるファッション通販で、ツケ払いで2ヵ月先に支払いを先延ばしする与信判断に乗り出した。これはある意味、金融に乗り出したと言えなくもない。ただ、銀行のような金融機関では、個人向けのカードローンまで行っている。前々回も書いたが、法律で規制されている「年収の3分の1」を超える貸し付けもあるようで、自己破産増加の原因にもなっていると言われる。
ただ、IT技術の進歩により、フィンテックという新しい金融のあり方が登場している点で、「カネの出し入れを把握する」ネット通販事業が金融に絡むのはあり得ることだ。カギを握るのはamazon.comと見て、間違いないだろう。
amazonは店舗も販売スタッフも抱えないことで、莫大な収益を上げることを実現した。当然、生活に必要なあるゆる商品の取扱い量からすれば、莫大な現金を持っていると考えられる。これを金融ビジネスに落とし込む仕組みとしては、サイトにアップされた商品が何日で売れ、現金化されていくか。この日数が短いほど、手にするキャッシュは早くなる。当然、在庫の回転率や商品の品揃えなども把握でき、データは蓄積されていく。
amazonビジネスの理想型は、売掛金の回収は早く、在庫は少なめで、買掛金は先延ばしして、いかに手元に現金をもっておくこと。まさに究極の小売りビジネスに突き進んでいるのである。ジャパネットたかたが「30回金利手数料を負担」にするのは、お客の与信情報を蓄積するのと同時に少しでも現金を回収することで、手元にできるだけ多くのキャッシュをもち、仕入れに有利にすると聞いたことがある。amazonはそれより扱う商品が多いことで、途轍もなく有利になるのだ。
しかも、商品の物流を押さえ、取引データを蓄積しているため、取引先にどこまで融資できるかの与信の判断にまでつなげられる。常に消費の動向に目を光らせることは経済の動きをつかんでいるのと同じで、それについて金融機関より一日の長があるamazonは、優位に立てるかもしれないのだ。
すでにamazonは「amazonレンディング」という金融サービスを始めている。(https://www.amazon.co.jp/gp/press/pr/20140220)これはマーケットプレイスの取引実績がある法人向けの短期運転資金ローンで、 出店する小売業者のビジネス成長を支援するために、必要な資金を必要とする時期に簡単に融資するものだ。amazonがネット通販と物流、データ蓄積で培った取引先事業者の与信はここまで来たということだ。
その点で、スタートトゥデイはどうだろうか。 業績はZOZOTOWNが683億円で、前年比42.4%増と絶好調だ。取引する店舗は1000近くに及ぶ。まだまだ資金的には潤沢でないかもしれないが、商品が確保できないとビジネスの先もないわけだから、将来的には取引先に対する、何らかの支援策が必要なのは言うまでもない。
amazonが東コレのスポンサーになっているのは、単に衣料品を品揃えを充実させるためというより、金融面でのアパレル支援も将来的にはあるかもしれないのだ。
スタートトゥデイは顧客サービスとしてのツケ払いを単に自社の売上げ確保のために利用するのではなく、手元の残るキャッシュとITインフラを最大限に活用して、アパレル業界やデザイナーのサポートにも踏み出してはどうだろうか。これからのアパレルビジネスはITや金融がカギを握ると言われるのはそういうことである。
でき上がったものをとにかく売ればいいだけでは、少子化で市場が縮小する中でやがて頭打ちになる。それより新たな芽を育てていくことも社会の公器、上場企業の役割であるように思う。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170428-00000102-zdn_mkt-bus_all
それらによると、今回のツケ払いについて前澤社長は、
「テレビCMはツケ払いを訴求した。その結果、認知度、利用率が上がった。この成果が、17年4月以降の業績にも好影響を与える」
「利用率についてはお答えできない。未払いがどれくらいなのかは把握していない」
「GMO(ペイメントサービス)とは共同でやっているサービスなので、不測の事態があればお互いに話し合って解決していく」
「建設的に取引をしているし、危惧するところはない。このまま継続サービスとしてやっていきたい」
と説明したと、なっている。
決算発表では、新規ユーザーがどれほど獲得できたかは語られていないが、PR効果は抜群で、売上げに上積みされたのは間違いないようだ。ただ、 ZOZOTOWNの既存客は、基本的にクレジットカードや代引きを選択すると思う。ツケ払いにしたところで、2ヵ月先には支払わないといけない。端から支払いを先延ばしするなら、ボーナス一括払いを選択するのではないか。
そう考えると、新規ユーザーの8割程度は、カードを持たない学生や未成年ではないかと思われる。そこで懸念されるのが、2ヵ月先の「未払い率」である。前澤社長は未払い率について把握していない、また不測の事態があれば、お互いに話し合って解決していくと説明した。
これは「あまりに未支払いが増えた時、ツケ払いへの与信審査にも影響が及ぶから、対策を講じなければならない」ということではないか。言い換えれば、スタートトゥデイにとっては、未払い率がGMOペイメントサービスのレッドラインに達しない限り、それほど心配することではないとも、受け取れる。
一般のクレジットカードでは、かつては「毎月の未払い率が10%程度ある」と言われた。今では非正規雇用や自己破産が増えているため、さらに増加しているのではないかと思うが、詳細のところはよくわからない。
決済はあくまで代行会社のGMOペイメントサービスの仕事だ。筆者が以前に書いたように「ZOZOTOWNはGMOペイメントサービスに決済を代行してもらい、同社がユーザーから代金を回収する」のだから、未支払いはスタートトゥデイに直接は関係ないのである。
前澤社長は本年度もサービスを継続するというから、ツケ払いという売上げ刺激策で、当面の業績アップに弾みをつける狙いと思われる。もっとも、利用率や未払い率が公表されてない点は、未成年者が支払いに窮することや金銭感覚を麻痺させる危険性に触れられたくないためとも考えられる。あまりにそこを突っ込まれたり、対応策に追われるようでは、せっかくの売上げ刺激策に水を差すからだ。
ただ、一方で収入が少ない若者が支払えないケースが生じることへの懸念が払拭されたわけではない。
ネットでの報告では、
「ツケ払いの支払い通知を放置していて、気が付いたら督促状が来ていた」
というから、認知度、利用率は上がったものの、「2ヵ月後に支払う」という「約定」は十分に浸透していないと解釈することもできる。というか、やはり購入時点でお金がなく、「2ヵ月経てばなんとかなるだろう」という意識のユーザーもいるのではないのか。実に驚くことだ。
ネット通販事業者は、今やツケ払いを導入し決済代行会社に手数料を支払ってまでしないと、売上げを確保せざるを得ないところまで行きついてしまったと言える。そう考えると今後、スタートトゥデイがこうした施策でどこまで売上げを伸ばせるか。はたまた、単なるファッション通販事業の枠に止まるだけなのか。ネット通販の行きつく将来はどう展望するかである。
ZOZOTOWNは単なるファッション通販で、ツケ払いで2ヵ月先に支払いを先延ばしする与信判断に乗り出した。これはある意味、金融に乗り出したと言えなくもない。ただ、銀行のような金融機関では、個人向けのカードローンまで行っている。前々回も書いたが、法律で規制されている「年収の3分の1」を超える貸し付けもあるようで、自己破産増加の原因にもなっていると言われる。
ただ、IT技術の進歩により、フィンテックという新しい金融のあり方が登場している点で、「カネの出し入れを把握する」ネット通販事業が金融に絡むのはあり得ることだ。カギを握るのはamazon.comと見て、間違いないだろう。
amazonは店舗も販売スタッフも抱えないことで、莫大な収益を上げることを実現した。当然、生活に必要なあるゆる商品の取扱い量からすれば、莫大な現金を持っていると考えられる。これを金融ビジネスに落とし込む仕組みとしては、サイトにアップされた商品が何日で売れ、現金化されていくか。この日数が短いほど、手にするキャッシュは早くなる。当然、在庫の回転率や商品の品揃えなども把握でき、データは蓄積されていく。
amazonビジネスの理想型は、売掛金の回収は早く、在庫は少なめで、買掛金は先延ばしして、いかに手元に現金をもっておくこと。まさに究極の小売りビジネスに突き進んでいるのである。ジャパネットたかたが「30回金利手数料を負担」にするのは、お客の与信情報を蓄積するのと同時に少しでも現金を回収することで、手元にできるだけ多くのキャッシュをもち、仕入れに有利にすると聞いたことがある。amazonはそれより扱う商品が多いことで、途轍もなく有利になるのだ。
しかも、商品の物流を押さえ、取引データを蓄積しているため、取引先にどこまで融資できるかの与信の判断にまでつなげられる。常に消費の動向に目を光らせることは経済の動きをつかんでいるのと同じで、それについて金融機関より一日の長があるamazonは、優位に立てるかもしれないのだ。
すでにamazonは「amazonレンディング」という金融サービスを始めている。(https://www.amazon.co.jp/gp/press/pr/20140220)これはマーケットプレイスの取引実績がある法人向けの短期運転資金ローンで、 出店する小売業者のビジネス成長を支援するために、必要な資金を必要とする時期に簡単に融資するものだ。amazonがネット通販と物流、データ蓄積で培った取引先事業者の与信はここまで来たということだ。
その点で、スタートトゥデイはどうだろうか。 業績はZOZOTOWNが683億円で、前年比42.4%増と絶好調だ。取引する店舗は1000近くに及ぶ。まだまだ資金的には潤沢でないかもしれないが、商品が確保できないとビジネスの先もないわけだから、将来的には取引先に対する、何らかの支援策が必要なのは言うまでもない。
amazonが東コレのスポンサーになっているのは、単に衣料品を品揃えを充実させるためというより、金融面でのアパレル支援も将来的にはあるかもしれないのだ。
スタートトゥデイは顧客サービスとしてのツケ払いを単に自社の売上げ確保のために利用するのではなく、手元の残るキャッシュとITインフラを最大限に活用して、アパレル業界やデザイナーのサポートにも踏み出してはどうだろうか。これからのアパレルビジネスはITや金融がカギを握ると言われるのはそういうことである。
でき上がったものをとにかく売ればいいだけでは、少子化で市場が縮小する中でやがて頭打ちになる。それより新たな芽を育てていくことも社会の公器、上場企業の役割であるように思う。