オンワードホールディングスは、2023年3月から顧客が着なくなった自社製の古着などを回収し、修繕後に再販売する「オンワード・グリーン・キャンペーン」をスタートさせた。(https://www.onward.co.jp/green_campaign/information/index.html)
「クローゼットに眠っているオンワード製品をお引き取りし、リサイクル・リユースに努めます」と銘打ち、百貨店やショッピングセンターに展開する同社の常設店で、356日常時受け付ける。引き取り対象品は同社のレディス、メンズ、子供、ゴルフのウエアのほか、バッグ、ネクタイ、ストールやマフラー、手袋、帽子で、引き取り点数は1回につき10点まで。
持ち込んだお客がオンワードメンバーズの会員であれば、衣料1点につき500ptのグリーンポイントが付与され、通常のメンバーズポイントとの併用(買い上げ金額2500円ごとに500pt利用)が可能になる。ただ、オンラインストアのオンワード・クローゼットでは利用できないので、実店舗における環境・社会貢献と販促という側面をもつ。
回収したものは、1オンワード・リユースパークで再販するリユース、2繊維製品の原料に再生するリサイクル、3ボタンなどリユース・リサイクルが不可能なものは廃棄処分、の三通りで処理される。2のリサイクルでは、RPF(固形燃料)に再生して大手製紙工場の代替エネルギーに利用するか、リサイクル糸に加工して毛布や軍手を生産することで、収益をリユースのものを含め環境・社会貢献活動に活用するという流れだ。
また、中小工場の協力を得ながら、服の形のままで生地を染め直したり、つなぎ合わせたりしたアップサイクル品も製造する。この秋にも第1弾が発表されるが、環境・社会貢献の一環ということから、ビジネスモデルにすることはないようだ。
海外ブランドでは「リペア再販」が動き出している。米バッグブランドの「コーチ」は、2023年1月、自社の中古品を回収して修繕し、オンラインストアで再販する「COACH (Re)Loved(コーチ リラブド)」を開始した。(https://japan.coach.com/shop/coach-reloved)
HPでは「“より良いものづくりが、より良い未来につながる” というブランドの信念にインスパイアされ、過去に愛用されていたコーチのバッグを新たに生まれ変わらせました。使い込まれたアイテムもリデザインすることで次のオーナーへ受け継がれていくこの循環型プログラムは、地球環境にも配慮した社会的意義をお客様と共有します」と、語られている。
リペア再販の仕組みは以下になる。過去にコーチの店舗で購入、情報登録した顧客が対象店舗に同ブランドの中古バッグを持ち込むと、店側がその状態と型番から金額査定して引き取り、修繕してオンラインで販売するというもの。対象店舗は札幌から金沢、関東、愛知、大阪、福岡、沖縄までの全国17店。持ち込んだ顧客は、上記の店舗でのみで利用可能な査定金額分のクーポンチケットを受け取れる。
リペア・再販のスタイルは、職人の熟練した技術を活かした1点物である「Upcrafted/アップクラフテッド」、丁寧なケアと修繕を施して本来の美しさを取り戻した「Restored/リストアド」、分解してパーツを再構築し別のデザインに作り替えた「Remade/リメイド」の3タイプ。再販価格は10数万円から1万円台と幅があるが、すでに在庫切れの商品が出るなど、元々のブランド人気がリペア商品の売れ行きにも直結している。
SDGsなどに関心がある世代に対し、地球環境にも配慮するブランド側の取り組みをアピールする一方、買い替え需要も喚起するダブル効果が狙いと見てとれる。
ブランドリペアは新たな価値を生む
スウェーデンのH&Mや中国のシーインといったファストファッションは、大量生産、大量販売の一方、大量の売れ残りも出しており、地球環境に負荷をかけるとの批判が絶えない。それは他のブランドにとっても他人事ではなく、環境を意識しながら売上げも維持していくサーキュラーエコノミー(循環型経済)へのシフトがカギになっている。
ブランドメーカーが中古品を引き取ることは、新品の売上げに影響する懸念からこれまでは多くが二の足を踏んできた。だが、前出のように環境問題への取り組みを先送りにすれば、かえって消費者の反発を招きかねない。だから、引き取りから修繕、再販までの仕組みを整備することで、ビジネス化に踏み出したと言える。
ウエアやバッグがファッションアイテムである以上、流行がありそれが終わると消費者には着用、使用しづらい心理が働く。それでも、上質なブランドなら中古品としてもまだまだ十分に流通する。これまでそうした単なるリユースは、質屋を母体とする買取業者や中古品のリサイクル業者が担ってきた。
そこで、ブランド自体がコストをかけた上質なものであれば、多少の劣化があっても修繕することで再販できるのではないか。それが環境負荷の低減と売り上げ維持の両立につながると、ブランドメーカーも考えるようになったということ。もちろん、修繕を施すには専門のノウハウや材料、付属品などが不可欠だから、メーカーとしての強みが発揮できる。
さらにブランドにとって買い取り・修繕し、再販することは、自社が真贋を証明することにもなり、模造品の流通や商標権の侵害を抑止する効果もある。お客にとっても、劣化で使用しなくなったブランドを少額でも買い取ってくれるなら、それを原資に別のアイテムを購入しようというきっかけになる。また、リペア・リイメイクされた1点ものを目にすれば、購買意欲をそそられる。新たな価値を生み、商機にも繋がるわけだ。
エルメスのバッグ「バーキン」のように、職人が一つ一つを手作りするため生産個数が限られ、途轍もないブランド価値を有するものは、修繕をしても使い続ける顧客は少なくない。(https://www.hermes.com/jp/ja/maintenance-repair/)ブランドメーカーにとって今後、こうしたアイテムに続くものを生み出していくこともカギになるだろう。
アパレルにおいても、まずは高級ブランドが先陣を切ってリペア再販に取り組むべきではないか。デザイナーズ系ではすでにリメイクに取り組むところがあるが、こちらは色・素材・柄合わせ、パターン調整といったクリエイティビティや技術力が発揮できる面で、参入するデザイナーがもっと増えてほしい。コレクションなどのイベント開催も期待される。
話が横道に逸れるが、新型コロナウイルスの感染者数は減少傾向にあり、行動制限が緩和されている。東京ガールズコレクション(TGC)や関西コレクションといったファッションイベントも一部では再開されており、北九州市も2022年秋にTGC KITAKYUSHU 2022を3年ぶりに開催した。
TGC北九州の再開は北橋健治前市長時代の決定事項だった。だが、この2月の市長選で新人で無所属、元厚生労働省室長の武内和久氏が初当選を果たし、新たに北九州市制の舵取りを担うことになった。過去、TGCの開催が決定すると、市長は福岡県知事とツーショットで記者発表に臨むのが恒例だったが、武内新市長が開催を継続するかが注目される。
北九州市は1960年代に大気汚染や水質汚濁などの公害をもたらした。そのため、市は70年代から公害対策に取り組み、2000年以降は環境・リサイクルにも注力し廃棄物をゼロにするゼロエミッション事業も推進している。22年のTGC北九州でも会場内で古着回収を実施。主催者側は「約98kgの古着を回収し、地域循環型のリサイクルを実現」と発表したが、他会場でもイオンクレジットサービス、帝人、繊維商社のチクマが衣料品回収を実施している。
ただ、TGCでタレント陣が纏うウエアは大半が大量生産、大量販売で、トレンドが過ぎれば廃棄されるのも事実だ。北九州市は廃棄物ゼロを目指す政策ともっと連動させるべきではなかったのか。SDGsを意識したブランドとのコラボやリメイクファッションの披露などに踏み込んでこそ、地球環境を守る市政にも合致し、環境への取り組みに敏感な若い世代にも訴求が可能だ。イベントに税金を投入する大義も生まれる。武内新市長の判断はどうだろうか。
せっかく気に入って購入し着こなしを楽しんだ服。それを着なくなったからと簡単に捨てるのはどうなのか。補修をしてみると、意外に違った魅力を発するかもしれない。自分以外の人には特に。ならば、売る意義もあるだろうし、それが多方面に及ぼす影響は大きいはず。新たな価値を創造するものとして、多くの人々が取り組むことに期待をしたい。
「クローゼットに眠っているオンワード製品をお引き取りし、リサイクル・リユースに努めます」と銘打ち、百貨店やショッピングセンターに展開する同社の常設店で、356日常時受け付ける。引き取り対象品は同社のレディス、メンズ、子供、ゴルフのウエアのほか、バッグ、ネクタイ、ストールやマフラー、手袋、帽子で、引き取り点数は1回につき10点まで。
持ち込んだお客がオンワードメンバーズの会員であれば、衣料1点につき500ptのグリーンポイントが付与され、通常のメンバーズポイントとの併用(買い上げ金額2500円ごとに500pt利用)が可能になる。ただ、オンラインストアのオンワード・クローゼットでは利用できないので、実店舗における環境・社会貢献と販促という側面をもつ。
回収したものは、1オンワード・リユースパークで再販するリユース、2繊維製品の原料に再生するリサイクル、3ボタンなどリユース・リサイクルが不可能なものは廃棄処分、の三通りで処理される。2のリサイクルでは、RPF(固形燃料)に再生して大手製紙工場の代替エネルギーに利用するか、リサイクル糸に加工して毛布や軍手を生産することで、収益をリユースのものを含め環境・社会貢献活動に活用するという流れだ。
また、中小工場の協力を得ながら、服の形のままで生地を染め直したり、つなぎ合わせたりしたアップサイクル品も製造する。この秋にも第1弾が発表されるが、環境・社会貢献の一環ということから、ビジネスモデルにすることはないようだ。
海外ブランドでは「リペア再販」が動き出している。米バッグブランドの「コーチ」は、2023年1月、自社の中古品を回収して修繕し、オンラインストアで再販する「COACH (Re)Loved(コーチ リラブド)」を開始した。(https://japan.coach.com/shop/coach-reloved)
HPでは「“より良いものづくりが、より良い未来につながる” というブランドの信念にインスパイアされ、過去に愛用されていたコーチのバッグを新たに生まれ変わらせました。使い込まれたアイテムもリデザインすることで次のオーナーへ受け継がれていくこの循環型プログラムは、地球環境にも配慮した社会的意義をお客様と共有します」と、語られている。
リペア再販の仕組みは以下になる。過去にコーチの店舗で購入、情報登録した顧客が対象店舗に同ブランドの中古バッグを持ち込むと、店側がその状態と型番から金額査定して引き取り、修繕してオンラインで販売するというもの。対象店舗は札幌から金沢、関東、愛知、大阪、福岡、沖縄までの全国17店。持ち込んだ顧客は、上記の店舗でのみで利用可能な査定金額分のクーポンチケットを受け取れる。
リペア・再販のスタイルは、職人の熟練した技術を活かした1点物である「Upcrafted/アップクラフテッド」、丁寧なケアと修繕を施して本来の美しさを取り戻した「Restored/リストアド」、分解してパーツを再構築し別のデザインに作り替えた「Remade/リメイド」の3タイプ。再販価格は10数万円から1万円台と幅があるが、すでに在庫切れの商品が出るなど、元々のブランド人気がリペア商品の売れ行きにも直結している。
SDGsなどに関心がある世代に対し、地球環境にも配慮するブランド側の取り組みをアピールする一方、買い替え需要も喚起するダブル効果が狙いと見てとれる。
ブランドリペアは新たな価値を生む
スウェーデンのH&Mや中国のシーインといったファストファッションは、大量生産、大量販売の一方、大量の売れ残りも出しており、地球環境に負荷をかけるとの批判が絶えない。それは他のブランドにとっても他人事ではなく、環境を意識しながら売上げも維持していくサーキュラーエコノミー(循環型経済)へのシフトがカギになっている。
ブランドメーカーが中古品を引き取ることは、新品の売上げに影響する懸念からこれまでは多くが二の足を踏んできた。だが、前出のように環境問題への取り組みを先送りにすれば、かえって消費者の反発を招きかねない。だから、引き取りから修繕、再販までの仕組みを整備することで、ビジネス化に踏み出したと言える。
ウエアやバッグがファッションアイテムである以上、流行がありそれが終わると消費者には着用、使用しづらい心理が働く。それでも、上質なブランドなら中古品としてもまだまだ十分に流通する。これまでそうした単なるリユースは、質屋を母体とする買取業者や中古品のリサイクル業者が担ってきた。
そこで、ブランド自体がコストをかけた上質なものであれば、多少の劣化があっても修繕することで再販できるのではないか。それが環境負荷の低減と売り上げ維持の両立につながると、ブランドメーカーも考えるようになったということ。もちろん、修繕を施すには専門のノウハウや材料、付属品などが不可欠だから、メーカーとしての強みが発揮できる。
さらにブランドにとって買い取り・修繕し、再販することは、自社が真贋を証明することにもなり、模造品の流通や商標権の侵害を抑止する効果もある。お客にとっても、劣化で使用しなくなったブランドを少額でも買い取ってくれるなら、それを原資に別のアイテムを購入しようというきっかけになる。また、リペア・リイメイクされた1点ものを目にすれば、購買意欲をそそられる。新たな価値を生み、商機にも繋がるわけだ。
エルメスのバッグ「バーキン」のように、職人が一つ一つを手作りするため生産個数が限られ、途轍もないブランド価値を有するものは、修繕をしても使い続ける顧客は少なくない。(https://www.hermes.com/jp/ja/maintenance-repair/)ブランドメーカーにとって今後、こうしたアイテムに続くものを生み出していくこともカギになるだろう。
アパレルにおいても、まずは高級ブランドが先陣を切ってリペア再販に取り組むべきではないか。デザイナーズ系ではすでにリメイクに取り組むところがあるが、こちらは色・素材・柄合わせ、パターン調整といったクリエイティビティや技術力が発揮できる面で、参入するデザイナーがもっと増えてほしい。コレクションなどのイベント開催も期待される。
話が横道に逸れるが、新型コロナウイルスの感染者数は減少傾向にあり、行動制限が緩和されている。東京ガールズコレクション(TGC)や関西コレクションといったファッションイベントも一部では再開されており、北九州市も2022年秋にTGC KITAKYUSHU 2022を3年ぶりに開催した。
TGC北九州の再開は北橋健治前市長時代の決定事項だった。だが、この2月の市長選で新人で無所属、元厚生労働省室長の武内和久氏が初当選を果たし、新たに北九州市制の舵取りを担うことになった。過去、TGCの開催が決定すると、市長は福岡県知事とツーショットで記者発表に臨むのが恒例だったが、武内新市長が開催を継続するかが注目される。
北九州市は1960年代に大気汚染や水質汚濁などの公害をもたらした。そのため、市は70年代から公害対策に取り組み、2000年以降は環境・リサイクルにも注力し廃棄物をゼロにするゼロエミッション事業も推進している。22年のTGC北九州でも会場内で古着回収を実施。主催者側は「約98kgの古着を回収し、地域循環型のリサイクルを実現」と発表したが、他会場でもイオンクレジットサービス、帝人、繊維商社のチクマが衣料品回収を実施している。
ただ、TGCでタレント陣が纏うウエアは大半が大量生産、大量販売で、トレンドが過ぎれば廃棄されるのも事実だ。北九州市は廃棄物ゼロを目指す政策ともっと連動させるべきではなかったのか。SDGsを意識したブランドとのコラボやリメイクファッションの披露などに踏み込んでこそ、地球環境を守る市政にも合致し、環境への取り組みに敏感な若い世代にも訴求が可能だ。イベントに税金を投入する大義も生まれる。武内新市長の判断はどうだろうか。
せっかく気に入って購入し着こなしを楽しんだ服。それを着なくなったからと簡単に捨てるのはどうなのか。補修をしてみると、意外に違った魅力を発するかもしれない。自分以外の人には特に。ならば、売る意義もあるだろうし、それが多方面に及ぼす影響は大きいはず。新たな価値を創造するものとして、多くの人々が取り組むことに期待をしたい。