HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

リプロ、その前に。

2022-10-19 06:33:40 | Weblog
 今年の6月頃だったか、ある記事が目に止まった。「ソーシャルアクションカンパニー」なるアプリ運営会社が、「SDGs(持続可能な開発目標)に対する行動」についてインターネット調査を行ったところ、「回答者の7割がSDGsに取り組む企業に好印象を持ち、8割以上がそうした企業を応援したい」と、答えたという。

 回答者の属性や調査の信憑性はおいといても、この調査が何を意味するのか。全ての産業でムリ、ムラ、ムダを無くし、コスト削減のツケを製造事業者(企業、国、民族)に負わせない。環境負荷や気候変動への対策を取りながら、販売者や消費者もそれらの責任を負う。単にエコロジーを進めるだけでなく、いろんな角度で構造を変えようという意識が醸成されているということだろうか。

 アパレル業界でも、いろんな企業が事業と並行してSDGsの一歩として、不要になった衣料品の回収や再販、再生に取り組むようになっている。調査前の5月には、アーバンリサーチが「ミライバトン研究所」が国内の廃棄衣料問題の解決を目指して立ち上げたプロジェクト「古着バトン」に参加。古着の回収・販売をスタートさせた。

 古着バトンが指定した「回収キット」を使用し、家庭で不用になった衣類を集めるもので、依頼者は同キットを購入(税込2310円)し、着払いで郵送する。依頼者にも応分の回収負担を求めることで、リサイクルのコスト意識を浸透させる狙いだ。回収した古着は、同研究所の趣旨に賛同または賛助する会員企業と協力し、再販売または寄付する。再販売できないものはリサイクルに回すという。

 ワールドは8月、持続可能な社会の実現を目指す「ワールド・サスティナビリティプラン」を発表。温室効果ガスの削減では、2030年までに自社負荷で17年度比の50%削減を目指すという。また、過剰在庫については、25年までに「残在庫廃棄のゼロ化」に取り組むとした。同社における21年度の衣料品在庫廃棄は約51万点だが、在庫廃棄は仕入れ抑制や在庫コントロールで、年間生産総数比の1〜2%前後まで圧縮されている。

 ワールドは生産の国内回帰を唱えているが、それによりリードタイムを短縮させ、デジタルシフトと並行してプロパー販売率を高め、売れ残りを削減する政策も推進中だ。他にも百貨店の三越伊勢丹は「I’m green」と銘打ち、お客が使わなくなったものについて、専属スタイリストが最適な活用方法を提案したり、日本環境設計の「BRING」と提携して不要になったアイテムを回収し、リサイクルする取り組みを始めている。



 イオン、イオンスタイルは約280店舗の衣料品売場に不要になった衣料品の回収ボックスを設置。イオンモールもBRINGと連携し、不要な衣料品を回収する。BRINGは回収した衣料品をリサイクルとリユースに分類し、独自技術でポリエステル繊維を再生ポリエステル原料に変え、そこからまた新たな服を製造し販売する。ポリエステル以外の素材についても、パートナーと協力しリサイクルしている。

 無印良品は不要になった同社の衣料品(下着、靴下を除く)、タオル、シーツ・カバー類を回収して選別し、衣服は洗浄や染め直し、リメイクなどで新たな価値ある商品に再生している。それらは「ReMUJI」ブランドで一部の店舗で販売するほか、染め直しやリメイクできなかったものは、BRING等でエタノールなどのエネルギーに再生させる。

 古着店のスピンズを展開するヒューマンフォーラムは京都信用金庫と連携し、9月から来年2月までの半年で家庭で不要になった衣料品の回収する「RELEASE⇔CATCH」を実施する。京都市内100カ所に回収ボックスを設置し、再利用が可能な衣服を販売・寄付することで、京都市内で循環するプラットフォームを創出する考えだ。ざっと挙げただけでも、いろんな企業や団体が当たり前のように何らかの活動を行なっている。


まずは再利用できるものを探し出すことから

 ただ、こんな疑問も浮かんでくる。「アパレル業界、各企業にとってSDGsのゴールは一体どこなのだろうか」である。例えば、カーボンニュートラル政策で、10年先に温室効果ガスを今より50%削減できた時、その次はさらに高い目標を掲げるのか。また、それが果たして実現可能なのか。そんなことが頭をもたげてしまう。

 また、衣料品を回収し、繊維に再生して同じような商品を生産すれば、また余剰在庫を生み出すのではないか。あるSPAの店頭で見かけるフーディは、素材がポリエステル80%、残りはレーヨンとポリウレタンの混紡。「空気のような軽い着心地」を謳っているが、合繊オンリーで本当に人肌に優しいのか。汗をかいたときに綿のように吸収できるのか。

 むしろ、コットンが円安によるコスト増で使用しにくく、リサイクルで綿繊維を破砕すれば糸には再生しづらい。合繊オンリーなら在庫が残ってもコットンのようにウエスにならないが、綿よりも再生糸、再生繊維にはリサイクルしやすい。だから、このようなアイテムを企画したのではないのか。企業側の論理でSDGsが口実としてうまく利用されているのではと、疑いたくなる。

 まずは繊維のリプロダクトを謳うより、余剰在庫を出さないことを最優先に考えるべきではないか。そのためには新品の製造をこれ以上増やさないこと。それに伴い、卸や生産現場はどうするか。何に活路を見出すか。生産=収益=成長という構図にもメスを入れる必要があるのかもしれない。



 欧米がすることが何でも正しいとは思わないが、収入が低く可処分所得が少ない若者は、古着をうまく着こなし、それがファッション文化の一翼をに担ってきた。日本でも1990年代から若者の間では古着が定着し、今ではネットオークションやメルカリなどの個人売買が浸透したことで、年齢に関係なく中古衣料をうまく利用する傾向が強まっている。

 ただ、中古衣料を流通させて在庫消化に結びつけるのは容易ではない。中古品の販売サイトでお目当てのアイテムを探す場合、検索ワードを入力しても、それがブランドなら簡単にヒットするが、テイストや程度は現物を見ないとわからない。個人売買になると、詳細の情報は記されていないケースが多く、事業者のサイトでも情報公開の程度には差がある。

 中古衣料を処分したい側とお目当ての中古衣料を探しているお客のニーズは、ネット上では合致しにくいのである。不要な衣料品を流通させて、できる限り在庫消化に結びつけていくにはマッチングの仕組みを構築する必要もあるのではないか。

 中古衣料でも消費者の届く間に専門家が介在し、収集・選別してグルーピン編集し店頭展開した方が商品価値は確実に上がる。買い手がついて売れやすくなるのだ。欧米のセコハンストアがセレクトショップ化してきているのは、ラグジュアリーブランドの中古衣料やヴィンテージの上質なアイテムなどを集めて編集した方が引き合いが多くなってきたからだ。



 日本でも大々的なリユースのイベントが動き出している。ワールドは2019年からはGOOD FOR FUTUREをコンセプトに「246st.MARKET」を開催しているが、今年はグループ傘下のユーズドセレクトショップ「RAGTAG」の特集という位置付けで、中古衣料の販売イベントを企画した。

 RAGTAGでは、商品センターに常時約30万点の中古衣料を在庫している。今回のイベントに向け、業界で活躍するクリエイターがセンターに足を運んで商品を探し、彼らの感性にフィットしたものを選別。それらをワールド北青山ビル1階に集めて246st.MARKETのコンセプトで編集し、サステナブルファッションマーケットという形で販売する。

 倉庫に在庫のまま眠っている商品にクリエーターの感性が光をあて、再び表舞台で出してお客さんの目にとまるようにする。基本的にRAGTAGが中古衣料として買い取るのは、何らかの価値を持つものであるはず。だが、全ての買取在庫を選別し、再編集するには手間がかかる。倉庫に眠ったままでは、お客のお目に叶う商品が埋もれてしまっている可能性が高い。



 だからこそ、クリエーターに「逸品」を発掘してもらい、中古衣料に再び息吹をもたらす。お客の側もそちらの方がお目当てのアイテムを探すには効率がいい。246st.MARKETはそうした場にもなるということだ。国道246号、青山通り沿いなら、立地的に情報発信、集客は申し分ない。開催期間は11月2日(水)~6日(日)の5日間。偶然だが、筆者はこの期間に3年ぶりの東京出張を予定している。仕事の合間に時間を作り、ぜひ覗いてみようと思う。

 もちろん、デザイナーが眠ったまま中古衣料を見ると、自分ならこうリメイクするというインスピレーションが湧くのではないか。イベントはリメイクを行なっている方々にとっても格好の商材発掘の場となる。今後はそうした商品を集めて新たな展開やプラットフォーム化ができるかもしれない。

 奇を衒ったようなリサイクル、糸や繊維への再生より、まずは原点に帰って作り過ぎず、廃棄もしない地道なことに取り組む。その一つが眠っている中古衣料を循環させること。再生やリサイクルとは別の次元。発想の転換がSDGsの次なるフェーズになるような気がする。


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