HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

イベントに来店促進力があるのか。

2015-03-25 05:49:03 | Weblog
 ファッションウィーク福岡2015が3月22日の「福岡アジアコレクション(FACo)」をトリに終了した。

 今年は主催者の福岡アジアファッション拠点推進会議に対し、福岡商工会議所、福岡県、福岡市が事業予算を削減したと言われる。ただ、昨年同様に中心部への集客、来店促進、販促という「大義」で開催されたイベントも、?がつくものばかりだった。

 過去、事業企画を丸投げされた広告代理店が、商業施設をスポンサーにして子飼いの制作会社に作らせたパンフレットは無し。代わって、SP会社に発注したであろう「ルーバービラ」がメーン会場である岩田屋本館北側の壁面で頼りなく旗めいた。

 パンフレットを制作するのであれば、販促ツールとしての切り口を変えなければ、レベルの高いものはできない。しかし、代理店や制作会社レベルのファッションリテラシー、ノウハウでは土台無理と言うものだ。

 結局、今年のファッションウィークでは、情報発信ツールはサイトやFacebookのみに落ち着いている。集客対策も天神を中心に仮設のステージが設けられ、パフォーマーやミュージシャンのライブイベントなどで、お茶を濁したに過ぎない。

 純粋なファッション事業では、地元で活動するクリエーター数名のポップアップショップが岩田屋、キャナルティ博多、博多阪急の3カ所で開催された。

 ただ、施設側がほとんどショップ情報を発信していないため、お客は身内による来店に留まったと思われる。まして、商業施設側に売上げ貢献したなんてことは考えにくい。

 また、一部の専門学校によるファッションショーもあるにはあったが、福岡アジアコレクション(FACo)がトリに控えている関係で、大々的なものは行われていない。

 つまり、「ファッションウィーク福岡」と言いながら、主催者側の穿った解釈で「糸へん」「ウエアや雑貨」「ショップ」をクローズアップする純然たるファッションからは外れ、単なるブツ切れイベントの集合体に成り下がってしまったのである。

 この程度の企画内容なら、RKB毎日放送が高島宗一郎福岡市長を抱き込んで催した「クリエイティブラボ」、毎秋に開催されている「ミュージックシティ天神」と、どこが違うのか全くわからない。

 一方、筆者がこのコラムで第1回目のファッションウィークから提唱してきた「販促ためのポイント付与」。いわゆるプレミア商品券のスマホ版的な企画は、今回ようやく「ショプリエ」という形で実現された。

 ただ、「期間中に参加店舗から、総額1000万円のボーナス」がもらえるというギミックにどれほどの人間が登録し、いかなる額が実際に商品の購入に利用されたかが公表されるかどうかはわからない。

 例年、夏に開催される「福岡ファッションフォーラム」で、イベント効果らしきデータが公表されている。だが、今回のように店舗側が売上げに触れるものになると、オープンにされることは非常に難しいだろう。

 そもそも、ファッションウィーク福岡は福岡への来店促進、商業者への販促に繋げる目的でスタートし、実施されてきたはず。そのためのショプリエなのだから、当然、税や組合費の再配分ということでは、まず地元の商業者に還元されなければならない。

 つまり、総額1000万円のボーナス分が実際に購入に利用されたポイント応分の額を補助することを最優先されるべきなのである。それが来店促進や販促にとってはいちばん有効な手段だからだ。これは全国津々浦々のイベントでも実証されている。

 しかし、実際にはパフォーマーやミュージシャン、あるいはストリートからメジャーデビューしたが、最近すっかり名前を聞かなかった「ケイタク」を呼んだわけだから、事業資金の多くがそのギャラにも消えたことになる。

 それでも、企画に携わる代理店がこうした「タレント」を客寄せイベントに起用するのは、ギャラの上前がはねられ、自社の利益にしやすいからだ。

 事業の企画運営委員長が「専門学校のファッション部長」であることから、企画を自校の学生や入学予備軍の目線でしか考えていないこともある。「ピンク一色」のイベントカラーが何よりそうだ。

 また、露天のイベントは、有料コンサートのチケットのように具体的な数字が表に出ず、動員やレスポンスの指標がハッキリしない。だから、商工会議所や県、市への報告書を出す際、非常にごまかしやすいということになる。

 言い換えれば、それらが福岡への来店促進、店舗の販促に繋がったかどうかは、検証しなくて済むという逃げ道を企画の段階から作っているのだ。これは完全な確信犯で、事業の恩恵を受けるべき多くの「ファッション事業者」「商業者」への裏切りである。
 
 一方で、代理店の企画力なんて、その程度だと言うこともできる。だいたい、気候が良くなった春先、どこの街でも大小いろんなイベントが開催されている。スポーツなどの参加型イベントの方がはるかに人気が高く、これは集客にも貢献する。

 マーケティング効果も高いことから、スポンサーの確保もしやすくなっている。

 なのに若者相手のチンケなイベントの集合体であるファッションウィーク福岡が、爆発的な集客力、高い次元での情報発信力を持つとは考えにくい。なおさら、販促効果に寄与することなど、ほとんどないだろう。

 第1回目から企画は大した効果も発揮できず、ほとんどが失敗と言えるシロ物。企画運営委員長は「試行錯誤」的な言い訳で乗り切ってきたが、地元ファッション業界が諸手を上げて「評価」していないところが、この御仁の凡庸さ、無能さを表す。

 であるからこそ、地元ファッション業界にとって「成功」といえる事業にするには、ファッション業界での経験に乏しい企画運営委員長、ファッション音痴の代理店、その取り巻きの利害関係者に退場していただくことが、いちばんの早道かもしれない。

 ところで、地元メディアの反応はどうか。例年、RKB毎日放送は、翌月曜日の早朝ニュースでFACoの模様を報道していた。だが、イベント内容に目新しさがないため、放送していない。昨年、そのお鉢が回ったNHKも、今年は報道を控えていた。

 代わって、ファッションウォーク福岡については、主催者側から地場メディアに報道依頼があったようで、FBS福岡放送が夕方のニュースで放送していたのを発見した。

 内容はファッション専門学校の学生(企画運営委員長の学校ではない)や男性スタイリスト、主催者側の担当者へのインタビューをもとに構成した「提灯レポート」だった。

 学生は、当日のファッションショーに向けての作品づくりや打ち合わせの模様が事前に取材されており、「将来は福岡に自分のお店がもちたい」とコメント。まあ、デザインを勉強しているのだから、「ブランドショップ」の出店ということだろう。

 スタイリストは、「東京で6年仕事をした後、今は福岡で活躍している」とのこと。だが、ファッション雑誌が売れず、CM制作費も削られているのがメディア界の現状。仕事の奪い合いに破れ、「都落ち」したと見られなくもない。

 問題は主催者のコメントである。当日、FBSの取材に対し、地元ファッションのポテンシャルについて、「福岡はファッションを勉強している学生、そしてアパレルメーカーが多い」と答えていた。推進会議発足時の趣意書に書かれたものと全く同じ内容である。 


 イベント主催した福岡商工会議所にはアパレル部会があり、そこには地場メーカーが所属している。これも意識したのだろうが、「メーカーが多い」というのは、何を基準に言っているのか。また、それがどれほどのポテンシャルをもつというのか。

 はっきり言って、こうした報道は視聴者に全くの誤解を与える。まずアパレルメーカーとは、トヨタやソニーのような自社で工場を抱え、製造まで行うものではない。メーカーとは言うが、実体は「卸」だ。

 昨今はアジアのアパレル工場に生産を委託をするところが大半で、福岡も例外ではない。だから、地域雇用の受け皿や経済発展に結びつくものではない。

 営業のやり方はサンプル商品を作り、展示会で小売りのバイヤーに仕入れてもらい、ロットをまとめて工場で生産して小売店に卸し、納期ごとに店頭に並ぶ。

 ユニクロなどSPA(製造小売り業)の台頭で、このシステムも時代遅れになりつつあるが、業界では厳然と残っている。

 ただ、現実的には福岡のアパレルメーカーは、衰退していると言う方が正しいだろう。もともとは博多区の店屋街がその名の通り、問屋街だった。そこで産声を上げたアパレルもあるが、流通センターや福岡ファッションビルの誕生で分散していった。

 卸や問屋では福岡リブ、岩久、ベルソンジャパンなど倒産し清算されたところは、枚挙にいとまがない。ファッションビルとて空き室が多く、九州外のメーカーの出張展示会で食いつないでいるのが実情だろう。

 筆者の知人である関西のメーカーも、今月末にファションビルで展示会を開催する。資本力が弱く、SPA化が難しい中小零細アパレルは、そうでもして市場を拓かないと非常に厳しいのだ。

 当然、関東や関西のアパレルに攻められると、地場メーカーがあおりを食うのは言うまでもない。しかも、地場メーカーは取引先の小売店を意識するため、表に出ることはほとんどない。

 つまり、福岡に多いのはアパレルではなく、「小売り」なのである。それは博多が商業都市として機能してきた中世から、少しも変わっていない。雇用の受け皿としても、そちらの方が圧倒的に大きい。

 だが、小売店が多いから、アパレルに有利かというとそんなことはない。バッティングの問題から、卸先は限られてくる。だからこそ、逆に関西や関東に販路を拡げなければならない。当然、支店を出せばコストもかかるし、市場が大きい分、競争も激しくなる。

 小売店で力をもつところは、地場アパレルではなく、地場以外や海外のメーカーから直接仕入れている。だから、競争に勝てないところは、閉店し退店していく。

 生き残るのはブランドショップを含め一部の専門店か、ナショナルチェーンか、グローバルSPAだ。それが福岡の実態なのである。

 一方で、 若者には販売職は敬遠され、小売店はスタッフ不足に悩んでいる。福岡も同じで、優秀な販売員の育成は進んでいない。FBSでさえスタイリストの方を取り上げるのだから、若者が販売職なんかに興味を持たないのはわかっているはずだ。

 それをアパレルのポテンシャルなんぞという言葉で、大げさに語るのはあまりに無責任極まりない。

 本当にアパレルメーカーが多いのなら、なぜFACoはじめとする事業に参加するところが限られるのか。なぜ、ファッションウィーク福岡にアパレルではなく、パフォーマーやミュージシャンを呼ばなければいけないのか。ここに事業の大きな矛盾がある。

 メディア側も担当者のコメントを流すだけで、何の裏も取っていない。これでFBSもRKBや代理店同様にファッション音痴であることがこれでハッキリした。それが筆者が「提灯レポート」と断じた理由である。

 こんなファッション事業を続ける限り、福岡のファッション業界は、ポテンシャルをもつことなどあり得ない。また、チンケなイベントなんかやったところで、小売りの街、福岡の来店促進力が高まるはずもないのである。
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