今年2月、中国紙の新京報が「中国スポーツメーカーの 李寧(リーニン)や 匹克体育(ピークスポーツ)がハーバード大出身で中国系米国人のNBA選手ジェレミー・リンとイメージキャラクター契約を結ぼうと、食指を伸ばしている」と報じた。
中国メーカーは以前からNBA選手との契約には積極的で、ピークスポーツはマイアミ・ヒートのシェーン・バティエ、オーランド・マジックのジェイソン・リチャードソン、アンタスポーツ(安踏体育用品)はボストン・セルティックスのケビン・ガーネットや ヒューストン・ロケッツのルイス・スコラと契約している。
その狙いは海外進出への布石だが、まずはブランドイメージのアップによる国内市場でのシェア獲得がある。中国におけるバスケットボール人口は推計3億人とも言われ、その人気はダントツだ。中国系のリンならナイキがマイケル・ジョーダンで行なったような人間投資、いわゆる選手の成長とブランド力の向上をリンクさせるような戦略が可能になるからだ。
実際、「ピークがリンとの契約が間近」との噂が流れたときは、株価が高騰するなど中華系マーケットの関心度も高い。
ところが、市場の期待とは裏腹に各社の11年度決算を見ると、軒並み成長が鈍化している。リーニンは売上高約1176億円で前年比5.8%減、純利益約50億8000万円で前年比65.19%減と、創業以来初の減収減益となった。アンタスポーツは売上高約1132億円で同20.2%増、純利益約219億円で同11.5%を維持したが、伸び率は売上高で5.8ポイント、純利益で12.5ポイントも低下。 ピークスポーツは売上高約611億円で同9.3%増ははたしたものの、純利益約103億円で同5.4%減と、利益はマイナスに転じている。
中国国内ではリーニンとアンタスポーツだけで6000~8000店を展開するが、成長鈍化は明らかに大量生産で在庫がダブついた、また大量出店で店舗間の競争が激化し、販売効率が低下したことに起因する。
期末時点での在庫はリーニンが前年比40.6%増、アンタスポーツが36.2%増、ピークスポーツが25.7%増。平均の在庫回転率もリーニンが21日増の73日、アンタスポーツが2日増の38日、ピークが11日増の49日と、各社とも在庫過多と商品の動きの悪さを露呈している。
中国メーカーの在庫圧縮は急務のようで、リーニンは商品フォローの制限や店舗数が少ない代理商(中国ではメーカーは直営店展開せず、代理商に任せる)の整理統合を行なう一方、在庫処分用のディスカウントストアを300店以上増やして627店まで拡大した。
ピークは代理商を活用して地方におけるきめ細かな出店政策や店舗網の整備を急ぎ、トップブランドが進出していない地方での市場開拓にも照準を当てる。
しかし、これで中国メーカーが再び浮上のきっかけをつかむかと言えば、筆者は懐疑的だ。なぜなら、中国メーカーはブランド力では世界のトップ御三家には遠く及ばず、 日本メーカーに比べても技術力や商品開発力で大きく引き離されているからだ。
現にナイキやアディダスは中国国内でのシェア獲得をどんどん進めており、ミズノやデサントも大都市を中心に旗艦店を出店して、知名度のアップと商品プロモーションに力を入れている。
経済成長で中国国民が豊かになればなるほど、よりよいブランドや商品を求めるわけで、それらで優位に立つ外資系が伸びるのは当然である。
一方、中国経済が海外からの投資で支えられていることを考えると、中国政府も国内企業だけを保護することはできない。日本を含めて外資系メーカーが中国人を雇用して中国国内で製品を生産し、中国人がその管理職となってマネジメントする以上、 中国政府には国内企業と同等の配慮が求められる。
言い換えれば、中国メーカーにとって中国国内でビジネスを展開することは少しも有利なことではなくなってきているのだ。逆に外資系メーカーはコストが同じで、商品ジャンルも同じなら価格競争力が付くわけで、中国メーカーが外資系の後塵を拝するのは当たり前だろう。
ファッション業界には、ある中国ブランドの商品開発担当者がユニクロの商品を見て、「品質、価格ともとても勝てない」と漏らしたという有名なエピソードがある。
スポーツ用品業界では、代理商の整理統合による地方への素早い進出など、当面は中国メーカーが有利に立てるかもしれない。しかし、素資材の調達から生産流通、店頭の売れゆきまでを一元管理するサプライチェーンのシステムをもつ日本メーカーが本気を出せば、大量生産、大量消費のノウハウしかもたない中国メーカーが勝てるはずがないのだ。
ダブつく在庫の圧縮とバーチカルな消化システムくらいのビジネスでは、淘汰されるのは目に見えている。ただ、中国ではこれまで人気のバスケットボールを中心にスポーツ用品市場が拡大されてきたわけで、 その成長にブレーキがかかったということは、別の用品にとってのビジネスチャンスと見るべきだろう。
中国メーカーが今後、どんな戦略を構築できるかは未知数だから、日本が得意とする野球用品などでは、中国での早急な戦略構築が求められると思う。
中国メーカーは以前からNBA選手との契約には積極的で、ピークスポーツはマイアミ・ヒートのシェーン・バティエ、オーランド・マジックのジェイソン・リチャードソン、アンタスポーツ(安踏体育用品)はボストン・セルティックスのケビン・ガーネットや ヒューストン・ロケッツのルイス・スコラと契約している。
その狙いは海外進出への布石だが、まずはブランドイメージのアップによる国内市場でのシェア獲得がある。中国におけるバスケットボール人口は推計3億人とも言われ、その人気はダントツだ。中国系のリンならナイキがマイケル・ジョーダンで行なったような人間投資、いわゆる選手の成長とブランド力の向上をリンクさせるような戦略が可能になるからだ。
実際、「ピークがリンとの契約が間近」との噂が流れたときは、株価が高騰するなど中華系マーケットの関心度も高い。
ところが、市場の期待とは裏腹に各社の11年度決算を見ると、軒並み成長が鈍化している。リーニンは売上高約1176億円で前年比5.8%減、純利益約50億8000万円で前年比65.19%減と、創業以来初の減収減益となった。アンタスポーツは売上高約1132億円で同20.2%増、純利益約219億円で同11.5%を維持したが、伸び率は売上高で5.8ポイント、純利益で12.5ポイントも低下。 ピークスポーツは売上高約611億円で同9.3%増ははたしたものの、純利益約103億円で同5.4%減と、利益はマイナスに転じている。
中国国内ではリーニンとアンタスポーツだけで6000~8000店を展開するが、成長鈍化は明らかに大量生産で在庫がダブついた、また大量出店で店舗間の競争が激化し、販売効率が低下したことに起因する。
期末時点での在庫はリーニンが前年比40.6%増、アンタスポーツが36.2%増、ピークスポーツが25.7%増。平均の在庫回転率もリーニンが21日増の73日、アンタスポーツが2日増の38日、ピークが11日増の49日と、各社とも在庫過多と商品の動きの悪さを露呈している。
中国メーカーの在庫圧縮は急務のようで、リーニンは商品フォローの制限や店舗数が少ない代理商(中国ではメーカーは直営店展開せず、代理商に任せる)の整理統合を行なう一方、在庫処分用のディスカウントストアを300店以上増やして627店まで拡大した。
ピークは代理商を活用して地方におけるきめ細かな出店政策や店舗網の整備を急ぎ、トップブランドが進出していない地方での市場開拓にも照準を当てる。
しかし、これで中国メーカーが再び浮上のきっかけをつかむかと言えば、筆者は懐疑的だ。なぜなら、中国メーカーはブランド力では世界のトップ御三家には遠く及ばず、 日本メーカーに比べても技術力や商品開発力で大きく引き離されているからだ。
現にナイキやアディダスは中国国内でのシェア獲得をどんどん進めており、ミズノやデサントも大都市を中心に旗艦店を出店して、知名度のアップと商品プロモーションに力を入れている。
経済成長で中国国民が豊かになればなるほど、よりよいブランドや商品を求めるわけで、それらで優位に立つ外資系が伸びるのは当然である。
一方、中国経済が海外からの投資で支えられていることを考えると、中国政府も国内企業だけを保護することはできない。日本を含めて外資系メーカーが中国人を雇用して中国国内で製品を生産し、中国人がその管理職となってマネジメントする以上、 中国政府には国内企業と同等の配慮が求められる。
言い換えれば、中国メーカーにとって中国国内でビジネスを展開することは少しも有利なことではなくなってきているのだ。逆に外資系メーカーはコストが同じで、商品ジャンルも同じなら価格競争力が付くわけで、中国メーカーが外資系の後塵を拝するのは当たり前だろう。
ファッション業界には、ある中国ブランドの商品開発担当者がユニクロの商品を見て、「品質、価格ともとても勝てない」と漏らしたという有名なエピソードがある。
スポーツ用品業界では、代理商の整理統合による地方への素早い進出など、当面は中国メーカーが有利に立てるかもしれない。しかし、素資材の調達から生産流通、店頭の売れゆきまでを一元管理するサプライチェーンのシステムをもつ日本メーカーが本気を出せば、大量生産、大量消費のノウハウしかもたない中国メーカーが勝てるはずがないのだ。
ダブつく在庫の圧縮とバーチカルな消化システムくらいのビジネスでは、淘汰されるのは目に見えている。ただ、中国ではこれまで人気のバスケットボールを中心にスポーツ用品市場が拡大されてきたわけで、 その成長にブレーキがかかったということは、別の用品にとってのビジネスチャンスと見るべきだろう。
中国メーカーが今後、どんな戦略を構築できるかは未知数だから、日本が得意とする野球用品などでは、中国での早急な戦略構築が求められると思う。