私が創作料理の庵で修行をして1年が過ぎた頃、この包丁と出会いました。
有次は京都にある老舗の包丁鍛治屋で、京都の名料理人と呼ばれる方も愛用している名品です。モリブデンなどを使用していないの少々取り扱いには気を使いますが、やはり鋼独特の切れ味を感じさせる名品です。私がこの包丁を知ったのは、当時一緒に働いていた和田さん(大阪でモード和食 笹のオーナーとして大活躍されてます)に憧れて、和田さんが使っていた有次を教えてもらい使い出しました。
この包丁を実は私の誕生日に、私の妻と私の、とても大切な先輩がプレゼントしてくださったものです。今でもその時の嬉しい気持ちを憶えています。その後、自分で何本か買い足して、今では有次だけで6本ほど持っています。
京都・御幸町にある有次のお店は店内で実際に包丁研ぎも行っており、なかなか上手く包丁を研げない時にはこのお店まで何度も通って、職人さんに教えてもらったものです。
庵を退職後に、本格的に和食・割烹の修行を始めたので、牛刀はしばらく封印。菜切り包丁で作業をこなしていたのですが、今の勤め先がフレンチなので数年ぶりにこの牛刀を使うことにしました。とくに両刃は研ぐのが難しいのですが、職人さんに研ぎを教えてもらったおかげで切れ味抜群。
明日は久しぶりのおやすみなので、明後日からこの包丁を手に頑張りたいと思います。
この包丁は老舗の包丁という以上に、この包丁を贈っていただいた方の気持ちや期待に応えたいという気持ちにさせてくれる大切な私のパートナーです。
11月に日本産 原木しいたけをすすめる会主催の料理講習会の講師を務めることになりました。
この料理講習会は計4回行われて、私は初回と3回目の2回を担当することになりました。講演会の生徒さんは栄養士さんなど食育や地域の食の改善などに取り組まれている方が対象になっております。
現在使われているほとんどの干ししいたけは中国などの輸入品です。和食は甘辛く炊いたり、お出汁をとるのに使ったりと比較的身近な食材ですが、今回は上質の国内産の原木の椎茸を扱うことができるので今から楽しみです。参加費は無料ですので、上記の条件に合う方で参加希望の方が居られましたら、書き込みしてください。ちなみに会場は大阪駅から歩いて8分ほどのところにあります。
話は少しそれますが、原木椎茸の最大の特徴はその歯ごたえです。肉厚で身のしまった椎茸はほんとうに食べ応えあります。前にもかいた「里山レストラン ささゆりの里」でもこの原木椎茸を食べたり、買ったりできます。
国内でつくられる食材が見直されるように、私も少しでも貢献できればと思っております。こういう意味でも今回の料理の講習は今からとても楽しみです。
今回、リニューアルするセンターの料理監修をさせて頂きました。
地場の多彩の食材を使った里山料理の一汁三菜です。
場所はJR高槻駅から6号線を亀岡に向かって車で20分ほどのところにある高槻森林観光センター内にある里山おもてなしレストラン「ささゆりの里」というところです。
以前はバーべキューが売りだったのですが、最近はコンロやテントなども廉価で売られているのでわざわざこの施設に足を運んでまで、という感じになってきたそうです。そこで、何か新しい料理をメインに据えたいということになり、私に声が掛かりました。
そもそも私に声が掛かったきっかけの1つが、以前に作った浪速野菜の松花堂弁当で、その話をたまたま聞いた方が1度やってみませんかと話を私に持ってきてくださったのです。
契約前に1度施設を下見し、センターの方にいろいろとお話を聞き、引き受けることにしました。ただの料理アドバイザーならお断りすることも考えたのですが、このセンターには多くの素晴らしい食材が集まります。亀岡や能勢など、こだわりのある生産者さんが多くおられるところから近く、新鮮な野菜が入手できること。センターの関連から良質の山の幸(キノコやいのししなど)が集まるなど、都市では非常に難しいことが、ここでは実現してしまうのです。この里山レストランの料理や体験を通じて、少しでも大阪近郊で作られる野菜に関心をもってもらえたらと思っています。
料理の内容は、こだわりの食材を使った一汁三菜です。有機野菜や浪速伝統野菜を小鍋や炭火焼、田楽などで楽しんでもらえるようにしました。シンプルですが、自然に囲まれて野菜本来の味わいを楽しんでもらえるように心がけました。食材のほとんどが野菜で他にも寒天や胡麻など、体にやさしい料理になったんじゃないかなと思っています。
他のもこのセンター内には天然の温泉や木製の遊具、朝市もあります。朝市ではこのセンター近郊の選りすぐりの野菜が廉価で売られていますので、家に持ち帰って食べ比べも面白いかもしれませんね。
フォトアルバムに画像もアップしておりますので、一度ご覧になってください。
大阪府有機農業研究会代表の尾崎零さんを訪ねました。
尾崎さんの畑は大阪能勢の奥山内にあります。勿論、無農薬、無化学肥料で野菜を育てていらっしゃっいますが、有機作物のJAS認定はとっておりません。それは今の有機JASを申請するのには多くの時間と労力、費用を必要とするためです。またJASの認定といっても野菜ごとに特定種の農薬の散布も許可させているので、無農薬で作る尾崎さんには特に取る必要が感じられられないそうです。
そんな尾崎さんにとって農業とは第2の自然(決して純粋の自然ではなく)で、自然と人間界のバランス(種を植えたままでもダメだし、農薬など人間の楽・エゴのために自然を傷つけるのもダメ)が大切だそうです。また、農業というのは1年ごとにリセットされ、今年が台風で不作だから来年もダメという訳でもないし、今年豊作だからといって来年もそうなるとは限らない。仮にうまく作物が育てれない状況の場合、その作物を諦めることの大切さもおっしゃってました。
畑には初めて栽培しているところを見た、ブロッコリーやアスパラ、サニーレタスなどが育てられており、毎年場所を変えながら育てられます。(同じ場所に同じ野菜を植え続けると、土の中の栄養分のバランスが偏てしまうため)また、有機で良い野菜を育てるためには芽の出来始めが特に大切で、農薬を使わないために丁寧に葉の1枚1枚虫取りを行い、雑草もむしります。この作業ができるかどうかが有機で野菜を育てられるかどうかの岐路になるのでしょうね。以前、尾崎さんがおっしゃっていた「より狭いスペースで、いかに生産性を落とさず農業するかが私のこれからの目標」という言葉の意味がほんの少し理解できたように思います。料理でもそうですが規模が大きくなるスケールメリットがある反面、なかなかこだわりを実現するのが難しくなってきます。そのバランスを如何にとり、どういうスタイルをとるかでその人の個性や考え方が反映させるのでしょうね。
尾崎さんから教えてもらったこと
■プロは絶えず進化を求められるからこそ、学びの姿勢・謙虚さがひつようとなる。
■野菜をそのまま手を加えずに栽培していると先祖帰りを起こす。(改良前のもとの本来の姿に戻ろうとする) そのような野菜では、現代の人にはおいしく食べてもらえない。だから、手を加える。ただ、必要以上に干渉しない。
■その地域の土地を活かす。土を見た目だけでは何もわからない。その上にできているの物がどのようにできているかを見定めることが大切。
尾崎さんの畑を見学後、畑のすぐ脇にある奥様のお店で定休日にも関わらずランチを食べさせて頂きました。もちろん、食材はあの畑の野菜たちです。確かに尾崎さんは何を植えるかどのようにして決めてるんですか?の問いに、「自分が食べたいと思ったもの、育ててみたいと思ったもの」とお答えになられてましたね。 いやはや納得です。
そんなに長い時間でしたが、とても充実した一日でした。
尾崎さん、ほんとにありがとうございました。また、これからも勉強させてくださいね。
(フォトアルバムに画像をアップしてますのでご覧ください。)
今週の月曜日に第23回 浪速魚菜の会 「行食に見る伝統野菜の旬」 に参加しました。
昔はその土地柄・季節・行事に合わせた料理が多く存在したが、現在に至ってはあまり日常の中に組み込まれていない。浪速野菜も昔はこの季節感ある年中行事には欠かせないものもあり、今回は年中行事から見た浪速野菜について考え、また旬の浪速野菜を試食することがテーマになりました。
年中行事のことなどは、浪速魚菜のHPで後日、詳しく説明されると思います。ので、このブログでは上野先生(天神坂上野のご主人)のお話を伝えたいと思っています。
上野先生は料理屋の料理は「ハレ」の日の料理で、勉強になる・夢を与える料理で【芝居】に例えられます。なので、本来の旬を少し外した「走り」の食材を使ったり、色や見た目の美しさのために十二分にその食材を活かしきれない料理法を用いたりしないといけない、矛盾した料理を行うことがあるのも料理屋の料理だとおっしゃいます。
一方、家庭の食事は「ケ」の日の料理で、毎日を支えるための料理である。また、見た目も大切だが、それよりも存分にその食材の良いところを活かし切れる料理でもある。例えば、豆御飯などが良い例で、料理屋では色落ちしないために御飯が炊き上がったところに入れるのだが、本来は色は飛んでしまうが御飯と一緒に炊いた方が米に味ものるし、豆の味を感じることができるのは間違いないことです。ただ、家庭の食事は栄養を取るだけの時間ではなくて、その家族の伝承の時間であることも忘れない欲しいと言っておりました。家族が揃って過ごす食事の時間をただ料理を食べるだけではなくて、会話や行儀作法・その他いろいろなことを伝える場であって欲しいとおっしゃってました。
食事の時間は、会話・伝承の時間でもある。考えてみれば当然のことなのだが、食べること・食べさすことだけに偏っていたような気がしました。
今回の料理の写真は、後日フォトアルバムにて発表させて頂きます。