
リチャード・ウェッテル著、文藝春秋刊
ウクライナ戦争でも活躍が報道されているドーローンの先駆けとなった「プレデター」の誕生に至る、困難で長い道のりを描いた著作です。
その技術的源流は、イスラエル出身の天才的な技術者と、アメリカの兄弟です。
ベトナム戦争で誘導爆弾が実戦投入され、その後、様々な無人機が開発されましたが、殆どが失敗し、アメリカ軍内部でも政治家達にも、無人機は役に立たない代物との認識が定着したそうです。
また、軍用機パイロットや軍用機の運用を前提とした軍は、そのシステムへの執着と保守性故に、無人機の可能性を限定的に考えていたようです。
本書の主人公であるプレデターは、速度が極めて遅く、最高速度が217km/h、巡航速度は130–165km/h、実用上昇限度は7,620mで、高性能を求めがちな軍人には、用途が想像できなかったようです。
しかし、この地味な性能の機体は、航続距離が3,704kmで40時間以上の航続時間が可能で、低速の小さい機体であることから、危険な地域でも目視されることなく、レーダーで発見することが極めて困難であるとのことです。
そうした特性を生かしてボスニア紛争で偵察任務に投入され、一定の成果を上げました。
そして、アメリカの9.11後に、アフガンの偵察任務で圧倒的な成果を上げるに至ります。
本書は、プレデターの開発と実戦投入の過程で関与した様々な人々が登場します。
それぞれに個性的で多様な関わり方をしていますが、本書は、膨大な取材を通じて得た情報を駆使し、人間模様を織り交ぜて、臨場感豊かにプレデターが辿った道のりを描いています。
同著者の「ドリーム・マシーン 悪名高きV-22オスプレイの知られざる歴史」を以前読みましたが、同じように、苦難の開発過程を描いていて読み応えがありました。
素晴らしい力量と翻訳者のこなれた翻訳に敬意を表したいと思います。
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○プレデター ○リーパー
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評価は4です。
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