辺野古移設をめぐる国と県の対決は、係争処理委の予想外の「判断」以来、県の対応にも予想外の動きがあった。
国側は「辺野古移設が唯一の解決法」と終始一貫主張してきた。
これに対し、県は係争委の判断に不満はないので、国と協議したい、というのだ。
国側の「県は和解条項にしたがって作況に提訴すべき」という催促に対し、文書で協議の意向を伝えたという。
沖縄県、国へ辺野古協議促す文書送付 提訴せぬ意向伝達
2016年6月25日 05:04
名護市辺野古の新基地建設を巡り、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」(係争委)が国と県に協議を促す結論を出したことを受け、沖縄県は24日、国へ協議を求める文書を送付した。係争委の判断に「不服はない」とし、県から違法確認訴訟を提起しないことを明記している。
» 適法か違法か判断せず 辺野古埋め立て承認取り消し是正指示
県幹部によると、県は文書で係争委の判断に関し「違法とも適法とも判断していない」と指摘。係争委の結論に従い、協議を国へ促している。
代執行訴訟で合意した和解条項では係争委の結論に不服があれば県は1週間以内に提訴できるとしている。28日がその期限で、県は国側に県の意思を明確に示す必要があるとして文書を送った。
菅義偉官房長官は会見で、埋め立て承認取り消しに対する国の是正措置の適否を判断しなかった係争委の判断を受け、「国の是正措置は違法と判断していない」と主張。県は係争委の判断を不服として1週間以内に提訴すべきとの考えを示している。
文書は、安倍晋三首相と官房長官、外務、防衛の両大臣宛て。
一方、県と政府は和解を受けて設けた「政府・沖縄県協議会」の作業部会を13、14日のいずれかに県内で開く方向で調整している。
☆
そもそも、県と国は昨年4月の初協議以来何度も協議を繰り返し、いつまで経っても妥協点が見出せず平行線のままだった。
やむなく法廷対決に持ち込まれたことは周知の通り。
ただ国が迅速な決着を焦って地方自治法に則って行うべき代執行訴訟大45条の7項を省略しいきなり8項で提訴に踏み切ったため「あらゆる手段で辺野古阻止」を主張する翁長知事が「強権的な国」という口実を与えてしまった。
国の拙速な提訴手続きが、国が勝訴確定した場合県の「強権的国」との口実を封じるため、裁判長が「確定判決には従がう」という言質を取った上で、和解案を勧告し一旦すべての提訴を取り下げ、仕切りなおしした経緯は周知のとおりだ。
確かに係争処理委の判断は想定外だったが、それでも県は「判断」を不服として高裁に提訴するのも和解条項に含まれていたはずだ。
それを「判断に不服はない」として提訴せず、国と協議するとはどういう魂胆なのだ。
ここでこれまでの経緯復習する意味で、翁長知事と菅官房長官の初協議について触れた過去ブログを覗いてみよう。
菅・翁会談、原点からすれ違い!2015-04-05
愈々本日、菅氏と翁長氏との運命の初会談が行われる。
ところが会談前の前哨戦で既に2人の主張には大きな食い違いを見せている。
菅官房長官は、「そもそも辺野古移設の原点というのは、普天間飛行場の危険除去だ。一日も早く危険除去と、固定化を避けるべきという考え方がある・・・」としている。
一方、翁長知事は、「・・・問題の原点は普天間基地が、県民自ら差し出した基地ではないということだ」と述べ、移設問題の原点は基地が強制的に作られたことにあるとして、同じ県内に移設する計画への反対を直接伝える考えを示した。
住宅密集地に隣接する普天間基地の危険性の軽減、というのが19年前の日米合意による、「普天間移設」の目的であることを考えれば、問題の原点は菅氏の主張が正しい。
翁長氏は最初から問題のすり替えを行っており、これでは会談がうまくいくはずはない。
翁長氏は県外移設を主張しながら代替地を示さず、それを問われると「政府が決めるべき」などと、無責任な態度を決め込んでいた。
実は翁長氏は、知事選へ向けた政策でも同様のことを述べていた。
「普天間基地の移設先を沖縄県が探すというのは発想が違うと思います。沖縄の基地は、戦争が終わって収容所にいっている間に、土地が囲われて、そこに帰ってきたら基地ができているわけです。今まで、一度たりとも基地を望んだわけでもない沖縄に70年も放置して、これを一つ動かすときに、県外はだめだから沖縄に置くしかないという発想そのものが間違いです」(2014年10月21日の政策発表記者会見での一問一答。同22日付しんぶん「赤旗」)
問題の原点の捉え方が大きく違うのでは、いずれ翁長知事は「建白書」の原点にまで立ち返らざるを得ないだろう。
「建白書」の原点とは何か。
共産党、社民党ら革新勢力の支持を受けた「建白書」には、普天間飛行場の閉鎖・撤去の文言だけがあり県外移設の文言はない。
つまり翁長知事の主張する県外移設は、「建白書」の原点ではなく、共産党ら極左勢力の原点である米軍基地の閉鎖・撤去が原点ということになる。
米軍基地の閉鎖撤去が日米安保体制の破棄に繋がるのは言うまでもない。
「根っからの保守」と言いながら共産党ら極左政党の支持で知事になった翁長氏。
その矛盾がここに来て露呈されることになるとは・・・・
お釈迦様でも・・・気が付くまいに。
いや、気が付いていたね。
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「オール沖縄会議」内の翁長知事の力はかつてのカリスマ的影響力は消えたものの、翁長知事は共産党ら極左勢力が主張する「海兵隊撤去」には踏み込まず「海兵隊削減」に踏みとどまっているという。
翁長知事は、共産党ら極左勢力の強力な圧力によく耐えながら、「海兵隊削減」に踏みとどまっている。
ということは、国との協議の場で何かサプライズが用意されているのではないか。
上記引用ブログにもあるように両者の協議は当初から「原点」の捉え方に差異が有り、ボタンの掛け違いのような協議の繰り返しをしても合意どころか妥協点さえ見いだせなかった。
だとしたら、ここにきて県が提訴を避け、協議を求めたことに対しては何か手土産を期待するのが理屈だ。
さもなくな、和解条項にある提訴をを蹴って、翁長知事が協議を求めるなど解せない話だ。
いやいや、翁長知事に手土産などない、参院選終了までの時間稼ぎに過ぎない、という見方もある。
政府の対応に目が放せない。