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沖縄タイムス 2009年01月15日【夕刊】 社会
泡瀬干潟に土砂投入/差し止め判決後 初/国が浚渫開始【01月15日】
泡瀬の人工島に投入する土砂をさらう浚渫工事=15日午前、うるま市州崎
市・県、支持表明
【中部】沖縄市の泡瀬干潟埋め立て事業で、沖縄総合事務局は十五日午前、うるま市の中城湾港新港地区で、第一区域(約九十五ヘクタール)に投入する土砂の浚渫作業を始めた。浚渫地から第一区域まで船で運搬し、午後に土砂を投入する。昨年十一月に那覇地裁が同事業に対し、経済的合理性がないとして県知事と沖縄市長に新たな公金の支出差し止めを命じた後の本格的な埋め立て地造成工事となる。
十五日午前九時から、海上で浚渫作業が始まり、土砂が運搬船に積み込まれた。現場には賛成、反対両派の市民団体が集まり、それぞれの主張を訴えた。
予定では、三月末までに約十五万五千立方メートルの土砂を第一区域に投入する。
東門美津子市長は「第一区域の工事は進めると表明している。今日から土地造成工事を始めることは連絡を受けたが、通常通りの流れで、特にコメントすることはない」と述べた。
県の漢那政弘土木建築部長は「始まったのは国の事業だが、県としても粛々と進めていきたい」と話した。
同事業は、国が新港地区へ船が進入できるよう整備するため浚渫した土砂を、県、沖縄市が進めてきた人工島の土地造成のための投入土砂として活用しようと、一九九八年以降は三者合同で進められてきた。
二〇〇二年に工事が始まり、〇七年度末までに第一区域九十六ヘクタールのうち、約六十九ヘクタールが外周護岸で囲われており、土砂の投入で埋め立て地ができることになる。
工事止めるべき
五十嵐敬喜法政大教授(公共事業論)の話 判決が確定しない中、事業を進めるのは三権分立の一つである司法に対する挑戦だ。泡瀬干潟埋め立て事業訴訟の一審は極めて説得力があり、画期的な判決だ。国は被告でないとはいえ、工事を止めるべきだ。公共事業は、次年度以降の予算獲得のため、年度内の事業を何が何でもやろうという悪いシステムが出来上がっている。日本の公共事業は訂正するという概念がなく、一度着手した事業は、やり続ける。仮に事業がストップした場合、国への賠償や業者との契約撤回など、どこがどういう割合で負担するかというルールもない。国会でもっと問題にするべきだ。
◇
2009年01月15日【夕刊】 社会
工事開始 賛否で対立/泡瀬埋め立て/推進・反対派が集会/推進派・「美ら島の実現を」/反対派・「自然の埋め殺し」
【中部】「自然の埋め殺しはやめろ」「美ら島を実現し不況打破を」。沖縄市の泡瀬干潟埋め立て事業の土砂浚渫工事が十五日午前、始まった。経済的合理性が欠けるとして、埋め立て反対派が一部勝訴した那覇地裁の判決から二カ月。うるま市の工事現場では賛否両派が約十メートルの道路を挟み、中止、推進を求めて声を張り上げた。
泡瀬干潟を守る連絡会が呼びかけた抗議集会で、小橋川共男共同代表は「中部圏域の発展が工事の目的というが、司法は経済的合理性や展望がないと判断している。国や県、市は判決をしっかりと受け止めるべきだ」と工事中止を求め、怒りの声を上げた。
集会には市民ら約三十人が集まった。沖縄市の桑江直哉さんは「泡瀬から沖縄の自然を守ろう」、泡瀬干潟「自然の権利」訴訟を支援する会の亀山統一代表は「工事が進むほど自然破壊が進む。まだ生きている命を守ろう」とマイクを握りしめた。
約五十人が駆けつけた推進派の集会で、市東部地域の発展を考える会の當眞嗣蒲会長は「工事再開を心待ちにしていた」と第一声。判決について「土地利用計画をきちんと示せばいい。温暖な気候を利用したスポーツコンベンションを建設しよう」と気勢を上げた。
工事が始まった中城湾港新港地区に進出している企業の社長・桑江浩さんは「那覇に負けない港湾都市を造り、不景気で仕事がない現状を変えよう」と訴えた。
2009年01月15日【夕刊】 社会
浚渫土砂の投入開始は、埋め立てという物理的な意味だけでなく、国、県、市の三者が、司法が待ったをかけた事業を、立ち止まらずに進める姿勢を示したと言える。
見直しを迫られた土地利用計画は、早くて二〇〇九年度末に沖縄市案としてまとまる予定で、当初計画に従い進める工事と、本来前提となるべき土地利用計画の策定が同時に進行する形となる。
控訴中の工事進行について「県と市は控訴しているが(国は)被告ではない」として工事を進める国側の考えは、新港地区の整備という国策事業を推進したいとする思いが垣間見える。
判決を不服としてそれぞれ控訴した県と市も、一度走りだした事業を止めるわけにはいかないとの思惑があったのではないか。「第一区域は推進、第二区域は推進困難」を繰り返す東門美津子市長の方針も「消極的推進」の印象は否めず、真に事業の必要性や将来性を踏まえての判断だったのか疑問が残る。
結審していないため、一審判決に工事を中断させる拘束力はないとはいえ、経済的合理性を欠く公共事業への司法の指摘は、立ち止まっての再考を求めたとも言えるはずだ。
控訴審を控え、新たな土地利用の青写真も描けていないまま工事を進めるリスクは、市民が負うことになる。埋めてしまえば元には戻らない。二十年以上前に構想が打ち出された同事業が現在の県や沖縄市にぜひ必要なのか、今すぐ土地として埋めなければならないのか、三者が真剣に議論する必要があるのではないだろうか。(中部支社・比屋根麻里乃)
◇
同じ反対運動でも報道が派手な点では、昨日の宜野湾市の「巨大娯楽施設反対運動」と比べて大きな違いだ。
だが、タイムス記事は一面と社会面、両面のトップを飾る大きな報道の割には分かり難い記事だ。
「識者」の話を聞いても「解説記事」を読んでもピンとこない。
「解発か、自然保護か」という単純な見方でいえば、東門市長が開発派なのも分かりにくい原因。
それに、沖縄問題では通常は対立するはずの国、県、市が揃って開発賛成派なのも分かり難いが、
沖縄地裁が「経済の合理性が認められない」と判決を下しているのもよく分からない。
裁判官が法律の専門家だとは認めても、果たして「経済の合理性」の当否判断を下せる素養を持っているのか。
「お前は経済評論家か!」と、突っ込みを入れたくもなる判決だ。
そもそも、タイムス記事が分かり難いのは記事中に問題の発端である沖縄特別自由貿易地域の文字が見当たらないことにある。
特別自由貿易地域(FTZ)制度の創設は、十数年前のことで懐かしい故山中貞則氏の」名前も出てくる。
特別自由貿易地域、来年度から実施
<1997年12月13日
【東京】沖縄経済の起爆剤として期待される特別自由貿易地域(FTZ)制度の創設は、12日の自民党税調沖縄対策小委員会(山中貞則委員長)で、進出企業の法人所得課税を35%軽減することを柱とする優遇税制の導入を決定したことから大枠が固まり、来年度からの実施が確実となった。>
特別自由貿易地域がスタートすると、外国の大型船舶も出入りするが、特別自由貿易地域に面した新港地区は航路の水深が浅く、大型船舶の入港が難しい。
そこで、国は09年度以降もしゅんせつ工事を続け、12年度までに現在3―4メートルの水深を11メートルまで掘り下げて貿易港としてのインフラ整備を図る予定。
通常は、しゅんせつした土砂の廃棄にコストが掛かるところを、隣接する人口島の埋め立てに使えば、一挙両得、一石二鳥で「経済的合理性」は十分あると思われるのだが。
先ず、沖縄地裁の判決が意味するのは、特別自由貿易地域(FTZ)制度に「経済的合理性がない」のか、それとも人工島の埋め立て工事に「経済的合理性がない」のか、記事ではよく分からない。
「人工島の埋め立て」に経済的合理性がないというのなら、やはり裁判官は法律バカだと言わざるを得ない。
「自然保護」とか「干潟を守れ」といった「プロ市民活動」とは一線を画して「経済的判断」をすれば、人工島埋め立ては廃物を利用したこれほど「経済的合理性」に富んだ工事は他に見当たらないだろう。
「人口島埋め立て」と「泡瀬干潟埋め立て」では、同じ工事でも読者の受ける印象は違う。
埋め立て推進派は「干潟をすべて埋め立てるわけではない」と主張しているが、その声はあまり報じられない。
タイムス記事によると、当日反対派の集会に集まったのは30名だったのに対し、推進派の集会には50名と、推進派の方が多いではないか。
◇
沖縄タイムス記事はリンク切れが早いので、資料保管の意味で全文引用した。
沖縄タイムスは今朝(6日)の朝刊・社説でも「経済的合理性がない」と繰り返しているが、琉球新報記事の方が特別自由貿易地域にも触れて、工事の「合理性」をよく説明しているようにも思える。
⇒ しゅんせつ工事開始 泡瀬埋め立て(2009.1.15)
沖縄タイムス記事は大きき扱ったスペースの割には問題の焦点がぼかされ、掛かり難い構成になっている。
【追記】10:55
沖縄タイムス社説をリンクとコピペしておきます。
[泡瀬埋め立て]
今は事業再検証の時だ
中城湾港新港地区で、泡瀬干潟埋め立て事業の第一区域に投入する土砂のしゅんせつ工事が始まった。
新港地区の港湾整備によって発生する土砂の処理・有効利用を図りたい国と、人工島建設によって地域活性化を図りたい沖縄市の思惑が合致し、国、県、市の三者が役割を分担しながら進めてきた公共事業である。
だが、この計画に裁判所から疑問符がついた。
「経済的合理性が認められない」―那覇地裁が泡瀬干潟埋め立て事業の費用対効果を疑問視し、県と沖縄市に対して新たな公金支出の差し止めを命じる判決を言い渡したのは昨年十一月のことである。
判決は、経済的合理性が認められないにもかかわらず、工事が進んでいることだけを理由に工事が継続されるようなことがあってはならない、との考え方を明確に打ち出した。
公共事業は、いったん工事がスタートすると、計画を中断したり取りやめることが難しい。実際、沖縄市の東門美津子市長も第一区域については「工事の進ちょく状況から考えて推進せざるを得ない」と語っていた。
そのような公共事業のあり方に司法が正面から疑問符を突きつけたのである。
地裁判決を受けて市と市民が一緒になって埋め立て事業を再検証していくことが重要だ。
工事再開によって後戻りのできない状態がますます進むと、「結論ありき」になってしまい、冷静な議論が閉ざされかねない。
沖縄市が「経済活性化の起爆剤」と位置づけてきた東部海浜開発事業は、二つの大きな問題を抱えている。
泡瀬干潟に生息する貴重な生き物をどのように保護していくかという問題と、埋め立て後の土地利用計画の問題である。
泡瀬干潟を埋め立て、約百八十七ヘクタールの人工島(第一区域約九十六ヘクタール、第二区域約九十一ヘクタール)を築き、大型ホテルなどを誘致してマリンリゾートを形成する、というのが当初の計画だ。
だが、土地利用計画はバブル期に策定されたもので、現状にあわない。
干潟を埋め立てての人工島づくりがほんとうに今、必要な施策なのか。「工事が進んでいる」という現状追認の理由だけで工事を進めると、将来に禍根を残すことにならないか。
市はよくよく当初計画の中身を吟味してほしい。
沖縄市では、保守革新を問わず、市と市議会の大多数が、こぞってこの事業を推進してきた。確かにその通りだ。
だが、当初計画の策定当時と比べ経済環境が激変し、市民意識が変化しつつあることも事実である。ことは沖縄県の将来像や振興のあり方にもかかわる。
工事再開によって推進派と反対派の対立が先鋭化し、「のぞましい地域づくり」のための議論が押しやられるのは好ましくない。強引な埋め立ては地域の対立を深めマイナスの結果しか生まないだろう。
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